「コレステロールを下げるためにどんな運動をしたら良いんだろう」
「コレステロールを下げるためにはどれくらいの頻度で運動すべきかな?」
このようにお困りの方もいらっしゃるかもしれません。
コレステロール値が基準値から外れた状態を放置していると、動脈硬化の原因となり私たちの体に悪影響を及ぼす恐れがあります。
基準値から外れたコレステロール値を改善するためには、食事や運動などの生活習慣の見直しをすることが重要です。
そこで、今回の記事では運動をテーマとして、コレステロール値を下げる運動と運動する際のポイントを紹介します。
1.コレステロールとは
「そもそもコレステロールってどんなものなんだろう」
「コレステロール値が増加するとなぜ健康に良くないのかな?」
よく見聞きする「コレステロール」という語ですが、どのようなものなのかは意外と詳しく知らないものですよね。
コレステロールは、ヒトの体内に存在する脂質の一種です。
健康に良くないイメージをお持ちの方も多くいらっしゃるかもしれませんが、細胞膜やホルモンなどの材料となるため、私たちの体には欠かせません。
生活習慣病の要因となるのは、たんぱく質などと結合して「リポたんぱく質」と呼ばれる成分となり、血液中に溶け込んでいるコレステロールです。
血中のコレステロール値が基準値から外れると「脂質異常症」と呼ばれる状態になり、動脈硬化やそれによる病気の原因となってしまいます。
血液中に溶け込んでいるコレステロールは、「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」と「HDLコレステロール(善玉コレステロール)」に分けられます。
ここからは、LDLコレステロールとHDLコレステロールについて詳しくご説明しましょう。
1-1.LDLコレステロール
LDLコレステロールは、通称「悪玉コレステロール」と呼ばれるコレステロールです。
肝臓でつくられたコレステロールを体の全体へ運ぶはたらきがあります。
しかし、血中に増え過ぎてしまうと血管壁にたまることで動脈硬化につながる恐れがあるため、基準値を超えないように注意することが必要です。
血中のLDLコレステロールの正常範囲は140mg/dl未満であり、この基準以上になると「高LDLコレステロール血症」と診断されます[1]。
基準値を超えないよう、定期検査などで確認すると良いでしょう。
1-2.HDLコレステロール
HDLコレステロールは、体内の余分なコレステロールを回収したり、血管壁にたまったコレステロールを取り除いたりするはたらきがあります。
LDLコレステロールが増え過ぎると動脈硬化につながるのとは反対に、HDLコレステロールには動脈硬化を抑制するはたらきがあるため、「善玉コレステロール」といわれています。
HDLコレステロールが不足すると余分なLDLコレステロールが体内にたまりやすくなることで動脈硬化のリスクが高まるため注意が必要です。
脂質異常症の診断基準においては、HDLコレステロールが40mg/dl未満となると「低HDLコレステロール血症となります[2]。
できるだけ基準値よりも下回らないように注意しましょう。
2.コレステロール値を下げる運動とは
「コレステロール値を下げるために、どんな運動をしたら良いんだろう?」
「効果的な運動をしてコレステロール値を下げたいな」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれません。
コレステロール値を下げるためには生活習慣の改善が必要です。
特に中強度以上(ややきついと感じられる程度)の有酸素運動を中心とした定期的な運動の実施は、血中のコレステロール値の改善につながるといわれています。
有酸素運動は酸素を使って体内の糖質や脂質をエネルギー源として筋肉を動かす運動です。
ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳、エアロビクスダンスなどが該当します。
負荷が比較的少ないため、長時間にわたり継続して行うことができるのが特徴です。
また有酸素運動は1日合計30分以上で少なくとも週3日、できれば毎日続けることが理想的です[3]。
1日に30分の運動といわれると難しく感じられるかもしれませんが、例えば10分間ずつ3回行うといったように分けて行っても構いません。
次の章でコレステロール値を下げるおすすめの有酸素運動を紹介していきます。
3.コレステロール値を下げる有酸素運動
「コレステロール値を下げるためには、具体的にどんな運動をしたら良いんだろう?」
というのが気になるところですよね。
有酸素運動にはさまざまなものがありますが、脂質異常症の改善には、大きな筋肉をダイナミックに動かす運動が勧められています。
また運動によるコレステロール値の改善効果はすぐに表れるものではなく、数カ月以上長期的に行うことが必要です。
この後ご紹介する有酸素運動のなかから、ご自分が続けやすいものを選ぶと良いでしょう。
3-1.ウォーキング
ウォーキングは日常生活の歩きとは異なり、健康を目的として動き方や強度を考慮して歩くエクササイズです。
運動を始める際のハードルが低く、長時間継続しやすい特徴があります。
効果を高めるためにはフォームを意識しながら歩くことが重要です。
そこで、正しいウォーキングフォームを知っておきましょう。
まず、ウォーキングする際は頭をブレさせないように心掛けます。
顎を軽く引き背筋を伸ばして胸を張り、真っすぐに前を見ている状態にしましょう。
足先は進行方向に対して真っすぐにし、自然に振り出すように意識します。
親指で踏み込むようにして一歩を踏み出し、膝を伸ばしてかかとから着地しましょう。
足を進める際は歩幅をやや大きめにすることがポイントです。
また、肩や腕の力を抜いて腕をリズミカルに振ります。
慣れるまではスピードは意識せず、正しいフォームを保つようにしてくださいね。
ウォーキングは有酸素運動としてコレステロール値を下げるだけではなく、肥満や血圧、血糖値の改善などにも効果があります。
健康維持のためにも日常で歩く際にウォーキングのポイントを意識して歩いたり、歩く距離を長くしたりして工夫すると良いですね。
ウォーキングに関しては以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
3-2.ジョギング
ジョギングは、ウォーキングとランニングの中間程度の強度であるエクササイズです。
人によって実際の運動強度は異なりますが、一般的に会話しながらでも走れるくらいのゆっくりと快適なペースがジョギングの強度といわれています。
ジョギングはウォーキングよりも強度が高くより効果が期待できますが、膝や腰に負担がかかるため注意が必要です。
そのため、膝や腰に負担をかけないクッション性の高いシューズを履いたり、適切なジョギングフォームを身に付けたりすると良いでしょう。
そこで以下にジョギングの正しいフォームをご紹介します。
頭は真っすぐにして、目線は前に向けます。
腕は体の横で後ろに引くように曲げ、肘は後ろに引き上げるようにして前後に振りましょう。
手は軽く握り、力を入れないでリラックスした状態を保つことがコツです。
おなかに力を入れた状態で背中を真っすぐにして肩を後ろに引き、骨盤を少し前に倒した状態をキープできるように意識しましょう。
足が体の真下にくるように土踏まずの辺り(足の裏の中央に近い部分)から着地し、親指の付け根や足の裏の前方部で地面を蹴ります。
歩幅は大きくし過ぎないことがポイントです。
安全で快適にジョギングを続けていくために、正しいフォームを意識してくださいね。
3-3.水中ウォーキング
水中ウォーキングは、スイミングプールなどで行う水の中で歩くエクササイズです。
陸上のウォーキングとは異なった利点があります。
【水中ウォーキングのメリット】
- 浮力により腰や膝などの関節への負担が減る
- 水圧により血液の循環が良くなる
- 水の抵抗に逆らって歩くため、ゆっくり歩いても強度の高いトレーニングができる
このような特徴があるため、体力に自信のない方や運動習慣のない方でも無理なく取り組めるでしょう。
さらに、水中ウォーキングは全身の筋肉が鍛えられる、睡眠の質が良くなるなどさまざまな健康効果もあります。
コレステロール値を下げるだけではなく、身体機能の向上にもつながるということですね。
3-4.サイクリング
サイクリングは、自転車を使ったエクササイズです。
自転車のサドルに腰掛けることで楽に感じやすいため、比較的長時間・長距離をこぎ続けることができます。
有酸素運動として効果を高めるためには正しく自転車に乗ることがポイントです。
バランスを崩して転倒するリスクがあるため、車や人にぶつからないように走りやすい道を選ぶと良いでしょう。
外で自転車に乗る機会がないという方は、ジムなどに通ってフィットネスバイクで運動することもおすすめです。
フィットネスバイクは室内で行うため、天候や時間に関係なく自分のペースで運動できます。
また、サイクリングは有酸素運動としての効果だけではなく、全身の多くの筋肉を使うことで多くのエネルギーを消費できるため体脂肪の燃焼にも効果があります。
ダイエットにも効果が期待できるということですね。
3-5.エアロビクスダンス
エアロビクスダンスは、ダンス形式の有酸素運動です。
リズムに合わせてさまざまなステップを組み合わせて行います。
一定時間続ける全身運動であるため、筋力や持久力、柔軟性の向上にも期待できるでしょう。
しかし、飛んだり跳ねたりするステップもあるため、関節に負担がかかりやすくなりけがにつながる恐れがあります。
リズムの速さやステップの種類によって強度が変わるので、無理のない強度から始めると良いでしょう。
きちんと教えてもらいたい方は、フィットネスクラブや自治体で開催している教室に参加することがおすすめです。
3-6.ステップエクササイズ
ステップエクササイズは、ステップ台を使用して昇降運動を行うエクササイズです。
ウォーキングの動きにステップ台への昇降運動が追加されるため、ウォーキングよりも強度が高くなります。
通常のステップ台は長方形の台を使用しますが、ステップ台がない場合は家の中の階段や玄関などの段差も利用できるため、屋内外で行えます。
ステップ台の高さやテンポの速さなどで強度を調節することができるため、自分に合った強度を選んで行うことがポイントです。
ステップエクササイズは筋力と持久力向上にも効果が期待できるため、日頃の体力づくりを目的として行うことも良いでしょう。
また、ステップエクササイズは個人で行うだけではなく、グループで行う形式もあります。
グループで行う形式はフィットネスクラブなどで開催されていますので、グループで楽しみたい方はレッスンに参加するのもおすすめです。
4.コレステロール値を下げるために運動する際のポイント
「効果的に運動するためのポイントを知りたいな」
運動を始めようと思っても、このように気になる方もいらっしゃるかもしれません。
せっかく運動するなら、効果を高めるためのポイントを知っておきたいですね。
そこで、運動する際に気を付けておきたいポイントをお伝えします。
ポイント1 自分にできることから始める
「これまで運動する習慣がなかったから、急に毎日運動をするのは無理かも……」
このように不安に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、脂質異常症改善のためには通常速度でのウォーキングなど、中強度(ややきついと感じられる程度)以上に該当する有酸素運動が推奨されています。
しかし体力のない方や持病のある方にとっては、急な運動も体の負担となることが考えられます。
これまでほとんど体を動かす機会がなかったという方は掃除や洗車をしたり、自転車で買い物に行ったり、子どもと遊んだりといった活動を通じ、生活のなかで身体活動量を増やすことから始めるのが良いでしょう。
ポイント2 ストレッチを行う
運動の前後にはストレッチを行うことがおすすめです。
ストレッチは筋肉や関節を伸ばす運動であり、けがの予防をしたり疲労回復のサポートをしたりする効果が期待できるので、運動とセットで行うようにしましょう。
また、ストレッチは場面によって「動的ストレッチ」と「静的ストレッチ」に分けられます。
動的ストレッチは関節を動かしながら筋肉を伸ばしたり縮めたりすることを繰り返すストレッチで、運動前に適しています。
静的ストレッチはゆっくりと一定方向に筋肉を伸ばした状態のまましばらく静止するストレッチで、運動後に適しています。
以下のポイントを意識しながら、場面に合わせたストレッチを行うと良いでしょう。
【ストレッチのポイント】
- 20秒以上かけて伸ばす[4]
- 伸ばす部位を意識する
- 痛くなく気持ち良い程度に伸ばす
- 呼吸を止めない
- 主に動かす部位を選択する
ポイント3 食生活を改善する
脂質異常症改善のためには、食生活の改善も重要だといえるでしょう。
摂取カロリーを適正にし、肉の脂身などに多く含まれる飽和脂肪酸の摂取量を減らしたり、食物繊維を摂ったりといった工夫が必要です。
飽和脂肪酸や、バターなどに含まれる「トランス脂肪酸」の摂取はLDLコレステロールを増やすため、避けることが勧められます。
一方、脂質のなかでも青魚などに含まれる「n-3系多価不飽和脂肪酸」はHDLコレステロールを増やす効果があるといわれています。
肉を食べがちだという方は脂身を除いたり、主菜に魚を食べる機会を増やしたりするのが良いでしょう。
また卵や内臓類など、コレステロールを含む食品をなるべく避けることも有効である可能性があります。
コレステロール値を改善する食事については、以下の記事で詳しくご説明しています。
コレステロール値を下げるための食べ物の選び方と調理のポイント
ポイント4 持病がないかの確認をする
運動を始める前に持病がないかの確認をするようにしましょう。
狭心症や心筋梗塞などの疾患があると、運動によって体にかかる負担が大きくなる可能性があります。
そのため、事前にかかりつけ医に相談したりメディカルチェックを受けたりすることがおすすめです。
自分の体の状態を把握した上で、内容や量を決めると良いでしょう。
5.コレステロール値を下げる運動についてのまとめ
コレステロールは脂質の一種です。
本来は体に必要な物質ですが、血中に溶け込んでいるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)が基準値から外れた状態は脂質異常症といい、放置していると動脈硬化につながる恐れがあります。
コレステロール値を改善するためには、有酸素運動を中心とした種目を継続的に行うことが大切です。
どうしても運動が難しい場合は、歩く距離を長くすることや掃除などの家事を積極的に行うことなど生活の中で活動量を増やすことから始めると良いでしょう。
また、コレステロール値の改善には運動だけではなく食事も重要であるため、食事の見直しも併せて行うことがおすすめです。
自分に合った運動を取り入れて、コレステロール値をコントロールしていきましょう。