「無酸素運動ってどんな運動のことをいうの?」
「無酸素運動と有酸素運動って何が違うのか分からない……」
日頃から運動する習慣のない方のなかには無酸素運動がどんな運動で、どんな効果があるのか分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
無酸素運動とは短距離走や筋トレなど短時間で高い負荷がかかる運動のことです。
無酸素運動を行うことで筋肉量や筋力がアップしたり、生活習慣病の予防になったりとさまざまなメリットがあります。
この記事では無酸素運動の効果やメリット、有酸素運動との違いなどについて解説します。
おすすめの無酸素運動についても紹介するので、ぜひ参考になさってくださいね。
1.無酸素運動とは
「そもそも無酸素運動ってどんな運動なの?」
無酸素運動とは筋トレや短距離走など短時間で大きな力を発揮する運動のことです。
「無酸素」と聞くと呼吸をせずに行う運動なのかと勘違いする方がいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。
筋を収縮させるためのエネルギー源を生成するのに酸素を必要としないことから無酸素運動と呼ばれています。
ここからは無酸素運動の代表的な種類や期待できる効果を詳しく解説します。
1-1.無酸素運動の種類
無酸素運動には筋力トレーニングや短距離走、中距離走などが該当します。
その他にも砲丸投げや重量挙げ、さらには相撲なども短時間に大きな力を発揮する種目であるため、無酸素運動に分類されます。
無酸素運動という言葉が聞きなじみのない言葉のため、どんな種類の運動があるのかイメージしにくいかもしれませんが、さまざまな種類の運動があることがわかったのではないでしょうか。
1-2.無酸素運動の効果
無酸素運動は短時間で大きな力や速い運動を行うため、筋繊維のなかでも特に速筋が鍛えられます。
実は筋肉は筋繊維の特徴によって「速筋」と「遅筋」という二つの種類に分けることができます。
速筋とは筋肉の収縮が素早く、発揮する力も大きい半面、長時間にわたり力を発揮できないという特徴を持つ筋肉です。
速筋には瞬発力やパワーに優れている半面、持久力があまりないという特徴があります。
陸上短距離や跳躍、砲丸投げなどのスポーツで活躍する選手は速筋の割合が高いといわれています。
また速筋の方がトレーニングによる効果もでやすいため、引き締まった体を手に入れられる上、基礎代謝の向上なども期待できます。
速筋は年齢に関係なく鍛えることができるので、体力や健康を維持するためにも無酸素運動をして速筋を鍛えましょう。
2.無酸素運動と有酸素運動の違い
「有酸素運動と無酸素運動って何が違うの?」
このように有酸素運動と無酸素運動の違いがよく分からない方もいらっしゃるかもしれませんね。
有酸素運動は運動強度が比較的低く、長時間継続して行える運動のことをいいます。
例えば水泳やジョギング、ウォーキング、サイクリングなどが代表的な運動です。
また有酸素運動は脂肪を燃料とするため、中性脂肪や体脂肪の減少が期待できます。
一方、無酸素運動は長時間続けることはできませんが、短時間で大きな力を発揮できたり、速い運動ができたりするという特徴があります。
なお、有酸素運動と無酸素運動のメカニズム的な違いは筋肉を動かすエネルギーを生成するのに酸素を必要とするか否かです。
人間が体を動かす際に使うエネルギーには「アデノシン三リン酸(ATP)」と呼ばれるものがあります。
厳密には、このATPをつくり出すのに体内の脂肪や糖、酸素を使う運動を有酸素運動と呼び、反対に酸素を使わずにATPをつくり出す運動を無酸素運動と呼びます。
このように有酸素運動と無酸素運動にはエネルギー生成で酸素を必要とするかしないか、そして運動時間の長さなどに違いがあることが分かりましたね。
3.無酸素運動をするメリット
「無酸素運動をするとどんなメリットがあるんだろう?」
無酸素運動を始めるにあたってどんなメリットがあるのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
無酸素運動をすると太りにくい体質になるだけでなく、生活習慣病を予防することもできます。
ここからは無酸素運動をすることでどんなメリットがあるのかについて紹介します。
メリット1 筋肉量が増え太りにくい体質になる
無酸素運動をするメリットの一つ目は筋肉量が増え太りにくい体質になることです。
無酸素運動のなかでも筋トレをすることで、体内の筋肉量は増加します。
筋肉量が増加すれば基礎代謝も筋肉量に比例して向上するといわれています。
筋肉1kgあたりの基礎代謝量は1日約13kcalほどといわれていますが、筋トレすることで成長ホルモンのはたらきを促し、エネルギー代謝を高める効果もあります。[2]
またある研究では「除脂肪量」1kg増加につき、基礎代謝は50kcal増加したという結果もでています。[2]
除脂肪量中の筋肉の割合は一般的には約50%程度といわれています*2。
しかし、成長期を過ぎた後は骨や内臓、体液の重さは大きく変化することがないため、除脂肪量の増減は筋肉量の増減と考えられるでしょう。
1日50kcalと聞くとそれほど消費カロリーが高くないように感じるかもしれませんが、除脂肪量をキープすれば1カ月で約1,500kcalものカロリー消費になるのです。[2]
このように無酸素運動をして筋肉量を増やせば基礎代謝が向上するため、脂肪がたまりにくい体質になるといえるでしょう。
[2] 公益財団法人 横浜市スポーツ協会 横浜市スポーツ医科学センター「肥満と減量(理論編) 知っておきたい肥満と減量の基礎知識【理論3】減量に筋力トレーニングが必要な理由」
メリット2 トレーニング時間を確保しやすい
無酸素運動は有酸素運動のように長時間継続して行う運動ではないため、運動をする時間を確保しやすいというメリットがあります。
そもそも無酸素運動は強度が高い運動のため1~3分程の短時間しか継続できません。[3]
無酸素運動のなかでも強度が高いといわれているトレーニングには、マシンを使った筋トレや、バーベルを使ったフリーウェイトトレーニングなどが挙げられます。
またジョギングやサイクリングのように外出しなくても、スクワットや腕立て伏せなど自宅でできる種目が多数あるため、家事や仕事の合間に取り組めるのも一つの魅力でしょう。
メリット3 生活習慣病の予防になる
無酸素運動は生活習慣病の予防にも効果があります。
生活習慣病を予防するにはある程度体力を維持する必要があります。
体力を維持するには筋力、基礎代謝、循環器機能が求められますが、中~高強度の無酸素運動を週に3日以上継続することで、体脂肪燃焼、循環器機能の向上効果が期待できるといいます。[4]
習慣的に行えば生活習慣病の予防に十分な効果が得られるというのはうれしいポイントですね。
4.無酸素運動のおすすめトレーニングメニュー
「無酸素運動でおすすめのトレーニングって何があるの?」
これから無酸素運動を始めようと思っている方のなかには、どんなトレーニングがおすすめなのか知りたいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでここからは無酸素運動のおすすめトレーニングメニューを八つ紹介します。
無理のない範囲で継続できるように実践してみてくださいね。
4-1.スクワット
スクワットはお尻の筋肉である大臀筋や太ももの前側についている大腿四頭筋など下半身を中心に鍛えられる無酸素運動です。
またスクワットは下半身だけでなく、背骨に沿ってついている脊柱起立筋にも効果があるといわれています。
スクワットに取り組むことでお尻を引き締めることもできますので、ぜひメニューに取り入れてみてくださいね。
それではさっそくスクワットの基本的なやり方を見ていきましょう。
まずは足を肩幅程度に開き、爪先はやや外向きに、膝と同じ向きにそろえます。
次に椅子に座るようなイメージで、お尻を後ろに引きながらゆっくりと膝を曲げ、腰を落としていきます。
おなかに力を入れ、背中を丸めないよう気を付けましょう。
膝が直角になるくらいまで上体を沈めたら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
また息を止めないように注意してくださいね。
4-2.プランク
プランクは腹筋の中心に位置する腹直筋や横腹にある腹斜筋など、主に腹筋が鍛えられる無酸素運動です。
プランクはシックスパックや引き締まったくびれを手に入れたい方にとって効果的なトレーニングといえるでしょう。
プランクによって体幹部の筋肉を鍛えれば正しい姿勢が維持できるようになり、スポーツなどにおけるパフォーマンスの向上や腰痛の対処法としての効果が期待できます。
プランクではまずうつぶせになり、両腕と両足の爪先で体を支えるようにして構えます。
このとき両手は握らず、力を込めないようにしてください。
また腰を真っすぐにして、体を反らしたり曲げたりしないように注意しましょう。
上を向かないよう、顎を引いておくのもポイントです。
そのまま呼吸を止めず、リラックスした状態で姿勢をキープしてください。
プランクは正しい姿勢でトレーニングを行わなければ、体幹部にうまく効かせられません。
慣れないうちは鏡を見たり写真を撮ったりして正しいフォームを意識するようにしましょう。
4-3.プッシュ・アップ
プッシュアップとはいわゆる腕立て伏せのことで、二の腕にあたる上腕三頭筋をはじめ胸の筋肉が鍛えられる無酸素運動です。
プッシュアップは筋トレのなかでもポピュラーなトレーニングですが、改めて正しいフォームでトレーニングする方法を紹介しますね。
四つんばいの姿勢で脚を伸ばし、手は肩幅よりもやや広く、肘が手の真上にくるよう伸ばしておきます。
両手と爪先で体重を支えましょう。
ここから胸を床に近づけるようなイメージで肘を曲げ、体を下ろしていきます。
頭から脚まで、体が一直線になるように意識しておきましょう。
体を床につくギリギリのところまで下ろしたら、床を押すように元の姿勢にゆっくりと戻ります。
基本のフォームは以上のとおりですが、きついと感じる方は膝を下ろすことで強度を下げられますよ。
4-4.シット・アップ
シット・アップは腹斜筋と腹直筋が鍛えられる無酸素運動です。
それではシット・アップをしっかり効かせるための正しいフォームを紹介します。
まずはあおむけに寝た状態で膝を曲げます。
両手を頭の後ろで組み、頭からおなかの方へ順に上げるイメージで上体を起こしましょう。
上体が床に対して垂直になるまで起こしたら、逆の動作を行い、元の姿勢に戻ります。
上体を起こすのが難しい場合は、バーベルや椅子を使い足先を固定したり、両手を胸の前で組んだりすることで負荷を弱められます。
4-5.レッグ・ランジ
レッグ・ランジは太もも全体の引き締めに効果のある無酸素運動です。
スクワットよりもお尻の筋肉が多く使われるトレーニングメニューなので、ヒップアップ効果も期待できます。
それではレッグ・ランジのやり方を見ていきましょう。
まずは両足の間を拳一つ分ほどにし、爪先と両膝は正面に向けて立ちます。
このとき手は胸の前で軽く組んでおきましょう。
その姿勢から片足を前に大きく出し、お尻を下ろすようにして膝を曲げます。
膝が直角になるまでしっかり曲がったら、少しずつ両脚を伸ばし元の姿勢に戻りましょう。
4-6.バック・エクステンション
バック・エクステンションは脊柱起立筋など背筋を中心に鍛えられる無酸素運動です。
バック・エクステンションのやり方を紹介します。
床にうつぶせになり、両手は横または前に伸ばしておきましょう。
この姿勢から、反動を使わないようゆっくりと上体を起こしていきます。
上体を起こしたら顎を上げ、背中の筋肉をしっかり収縮させるのがポイントです。
ゆっくりと負荷を感じながら元の姿勢に戻りましょう。
4-7.ダッシュ
ダッシュとはいわゆる短距離走のことで、細マッチョになりたい方におすすめの無酸素運動です。
ダッシュを筋トレと一緒に組み合わせることで、より短期間で細マッチョになることができるでしょう。
マラソンなどの長距離走とダッシュなどの短距離走とではフォームが異なります。
ダッシュのスタート時は深い前傾姿勢で重力を利用して加速することを意識します。
これにより前傾した体と蹴り出した足が一直線になり、力が無駄なく伝達されます。
腕は大きく素早く振り、上体を安定させましょう。
身長と同じ歩幅を意識し、速いピッチを心掛けることもポイントです。
背筋は伸ばしておくことで歩幅は自然と大きくなりますよ。
また膝は後ろに蹴ったときの反作用を利用して前に振ると、高く上げることができます。
ダッシュを始める際に知っておきたい基礎知識も確認しておきましょう。
【ダッシュの基礎知識】
- 場所:川沿いのランニングコース、ダッシュできる公園、凸凹のないフラットな場所
- シューズ:ソールが薄く軽いマラソンシューズ
- ウェア:体幹の姿勢を正すコンプレッションウェアや、動作が制限されないウェア
- スピード:いきなり全力疾走はせず、慣れてきたら徐々にスピードを上げる。
ダッシュは大きな力を発揮できる半面、体に大きな負担がかかる可能性が高い種目でもあります。
安全かつ効果的なトレーニングをするためにも初めから全力疾走せず、徐々にスピードを上げるようにしましょう。
5.無酸素運動をより効果的に行うためのポイント
「無酸素運動を効果的に行うにはどんなことに注意すれば良いの?」
無酸素運動をより効果的に行うポイントを三つ紹介します。
これから無酸素運動を始めようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
ポイント1 長時間にわたってトレーニングしない
無酸素運動をより効果的に行うためのポイントの一つ目は長時間にわたってトレーニングしないことです。
無酸素運動は短時間で負荷の高い運動をすることが特徴で、速筋が使われます。
しかし、長時間にわたってトレーニングをすると、遅筋がよく使われ有酸素運動に近くなってしまいます。
また遅筋よりも速筋の方が筋肥大しやすいので、筋肥大させたいのであれば長時間のトレーニングは逆効果といえるでしょう。
無酸素運動で重要なのはかける時間ではなく強度なので、しっかりと負荷がかかるようにフォームを意識して短時間でトレーニングを済ませましょう。
ポイント2 適度な休息をとる
無酸素運動は毎日行った方が良いのではと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は同じ部位の筋トレは毎日行わず、適度な休息を設けた方が良いと考えられます。
筋トレを行うと、筋繊維の一部が傷つけられ、回復の過程で元の筋繊維よりも少し太くなります。
この「超回復」が筋肉の育つ仕組みです。
超回復のためには筋肉の回復期間が必要だといわれています。
同じ部位へのトレーニングは毎日行うのではなく、2〜3日に1回程度、週当たりでは2〜3回にとどめておきましょう。[5]
筋肉が回復しないうちのトレーニングを続けていると、「オーバートレーニング」に陥ってしまう可能性があります。
オーバートレーニングに陥っているなかで筋トレを続けてしまうと、逆に筋力低下を招く危険もあります。
筋肉を効率良く鍛えるためにも、48~72時間の間隔をしっかり開けて、無理のないトレーニング頻度を心掛けましょう。
ポイント3 筋力アップにつながる栄養素を摂取する
無酸素運動をして筋力をつけるにはトレーニングだけでなく、食事面でも注意したいポイントがあります。
筋肉をつけるには筋肉や骨のもととなるたんぱく質が多く含まれる食品を摂ることを心掛けましょう。
たんぱく質の多い食品には鶏ささみや豚・牛ヒレ肉、かつお、たこ、卵、大豆などがあります。
肉類にはたんぱく質を豊富に含むと同時に脂質も多く、カロリーが高いものもあるので脂質の含有量や調理法にも注意しましょう。
日本人の食事摂取基準によるとたんぱく質の摂取量は男性なら18~64歳までが1日65g、65歳以上は1日60g、女性の場合は18歳以上なら1日50gが推奨量といわれています。[6]
さらにたんぱく質の摂取タイミングも重要です。
トレーニング後には早めにたんぱく質を摂取するようにしましょう。
トレーニング直後は特に筋肉をつくる体たんぱく質の合成が増大しているため、たんぱく質の摂取タイミングとしては絶好のタイミングでもあります。
プロテインやサプリメントなどからも必要な栄養素を摂取できますが、食事から摂取するときと同じように過剰摂取には気を付けましょう。
また空腹時の筋トレも注意が必要です。
空腹で血中のアミノ酸濃度が低下している状態では、筋肉の合成よりも分解が上回っており、筋肉が落ちやすいだけでなく、エネルギー不足に陥ってしまいます。
食前に筋トレをする場合には、おにぎりなど軽食を摂り空腹状態を避けるようにしましょう。
筋トレ中の食事については以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
筋トレの効果を高める食事とは?おすすめのタイミングや必要な栄養素
6.無酸素運動ついて まとめ
無酸素運動は有酸素運動のように長時間継続して行う運動ではなく、短時間の内に強い力を発揮する筋トレや短距離走などの運動のことです。
無酸素運動と有酸素運動との大きな違いは活動するためのエネルギーであるアデノシン三リン酸をつくるのに、酸素を使わないという点にあります。
無酸素運動は短時間で大きな力を発揮する運動のため、筋肉のなかでも速筋を鍛えることができます。
またトレーニング自体は短時間でも行うことができるため、普段なかなかトレーニングに時間が割けない方にもおすすめです。
無酸素運動で筋肉をつけることができれば、基礎代謝が向上するため脂肪が付きにくい体質になるというメリットもあります。
無酸素運動に取り組む際は長時間のトレーニングにならないように注意し、無理せず適度な休息をとるようにしましょう。
この記事で紹介したトレーニングメニューを日々の運動に取り入れてみてくださいね。