「睡眠不足だと太りやすいっていわれているけど、本当なのかな?」
このような疑問を抱いている方も多いと思います。
結論からいうと睡眠不足は肥満を助長する可能性があります。
また慢性的な寝不足状態になると、糖尿病をはじめとする生活習慣病にかかりやすくなることも分かっています。
この記事では睡眠不足が肥満をもたらす理由と睡眠不足の健康への悪影響を解説します。
ダイエットを成功させるためのポイントもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
1.睡眠不足だと太るといわれる理由
睡眠不足だと太るとは昔からよくいわれてきた話です。
しかし、きちんとした理由をご存じない方も多いのではないでしょうか。
この章では睡眠不足によって太ってしまう理由を解説します。
【関連情報】 「簡単ダイエット!日々の生活で実践できる7つの工夫」についての記事はこちら
1-1.自律神経に悪影響が及ぶ
睡眠不足による「自律神経」の乱れは肥満につながります。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」という二つの神経があります。
交感神経は活動時に優位にはたらき、心拍数や血圧を上昇させます。
副交感神経は休息時に優位にはたらき、心拍数や血圧を低下させます。
この二つの神経が適切にはたらくことでヒトの生命活動が維持されるのですね。
通常、日中は活動的になるため交感神経が優位になり、夜間は休息に備えて副交感神経が優位になります。
しかし睡眠不足が続くとこの切り替えがうまくいかなくなり、日中でも交感神経が十分に機能しなくなってしまいます。
体が休息モードになっているため、「代謝」が悪くなり、消費エネルギーも低下します。
結果として太りやすくなってしまうのです。
1-2.食欲をつかさどるホルモンの分泌が乱れる
睡眠不足だと食欲をつかさどるホルモンの分泌が乱れます。
食欲をコントロールしている代表的なホルモンに「レプチン」と「グレリン」があります。
レプチンは食欲を抑制し、グレリンは食欲を増進します。
健康な方でも寝不足(4時間睡眠)を2日間続けるとレプチンの分泌が減少し、グレリンの分泌が増加することが分かっています[1]。
そのため寝不足だと通常より食欲が湧き、空腹感が増すので食事量が増えてしまうのです。
たった数日の寝不足がホルモン分泌に異常を来すことからも、睡眠の重要性が分かりますね。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」
1-3.甘いものや脂っこいものが食べたくなる
睡眠不足になると「ショ糖」や脂質など、体重増加につながる可能性のある食べ物の摂取量が増えるという研究報告があります[2]。
これには脳のはたらきが関係しています。
この研究によると、「レム睡眠」が不足したマウスの食事ではショ糖と脂質の摂取量がそれぞれ増加しました。
しっかり睡眠をとれていないと甘いものや脂っこいものを食べたくなり、結果として太りやすくなってしまう可能性があるといえるでしょう。
[2] 筑波大学「寝不足はダイエットの敵 睡眠時間が足りないと甘いものがほしくなる理由」
2.睡眠不足による健康への悪影響
睡眠不足が続くと生活習慣病にかかりやすくなります。
慢性的な睡眠不足はホルモンの分泌を乱し、血圧や血糖値にも悪影響を及ぼします。
結果として高血圧や脳卒中などの生活習慣病の発症リスクが上がってしまうのです。
また極端に寝付きが悪かったり、中途覚醒してしまったりすることが多い人は、そうでない人と比べて糖尿病にかかるリスクが1.5〜2倍にもなるといわれています[3]。
体重増加の他にも、睡眠不足はさまざまなかたちで健康に悪影響を及ぼすのですね。
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」
3.ダイエットを成功させるための食事のポイント
「太ったのは睡眠不足のせいかも?」
「しっかり眠れなくて体重が増えてしまったかな……」
このように気になり、ダイエットを始める方もいらっしゃるでしょう。
ダイエットを行う際には、消費カロリーよりも摂取カロリーを少なくすることが重要です。
そのためには食事からの摂取カロリーを減らすことと、運動で消費カロリーを増やすことがポイントです。
しかし単に食事量を減らしたり、がむしゃらに体を動かしたりするだけではうまくいくとは限りません。
この章ではまずダイエットを成功させるための食事のポイントを四つご紹介します。
ポイント1 摂取カロリーを適切に抑える
食事においては、まず摂取カロリーを適切に抑えることが重要です。
この章では身長に対する理想的な体重とされている「標準体重」をもとに、1日当たりの適切な摂取カロリーを計算します。
標準体重を求めることができたら、それに体重1kg当たりの推定エネルギー必要量をかけます。
体重1kg当たりの推定エネルギー必要量は1日の活動量によって変わります。
まずは下記の表でご自身の身体活動レベルをチェックしてください。
身体活動レベル | 日々の活動量 |
---|---|
低い | 日常生活のほとんどの時間を座って過ごし、あまり体を動かさない |
普通 | 座って過ごすことが多いものの、通勤や買い物、職場内での移動、家事、軽い運動などを行うことがある |
高い | 移動したり、立ったりすることの多い仕事に就いているか、普段から活発に運動をしている |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
さらに下記の表でご自身の年齢と身体活動レベルを確かめ、その値に標準体重をかけると1日当たりの摂取カロリーの目安が分かります。
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | |||
30〜49歳 | |||
50〜64歳 | |||
65〜74歳 | |||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | |||
30〜49歳 | |||
50〜64歳 | |||
65〜74歳 | |||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
このときの式は[標準体重(kg)×体重1kg当たりの推定エネルギー必要量]となります[5]。
極端なダイエットは健康にさまざまな悪影響を及ぼすため、肥満の改善は標準体重を目標とすると良いでしょう。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント2 たんぱく質を十分に摂る
ダイエットを成功させるにはたんぱく質を十分に摂ることが重要です。
たんぱく質は筋肉や臓器、皮膚や髪の毛などの材料になる体にとって重要な栄養素です。
たんぱく質の多くは筋肉に蓄えられています。
そのためたんぱく質が不足すると筋肉に蓄えていた分を消費しなくてはならず、結果として筋肉量が低下します。
体の他の組織と比べてエネルギー代謝が高い筋肉の量が減ると、その分だけ安静時のエネルギー消費量も少なくなってしまいます。
食事から十分な量のたんぱく質を摂取できていないと、より痩せにくい体になってしまうのですね。
たんぱく質は豆類、魚類、肉類、卵などの食品に多く含まれます。
ダイエットを成功させるために、たんぱく質を十分に摂るようにしましょう。
たんぱく質とダイエットについてさらに詳しいことが知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ダイエット中にたんぱく質を摂るべき理由とは?健康的に痩せるポイントを解説!
ポイント3 食物繊維を十分に摂る
ダイエットをする際には食物繊維をしっかり摂ることも重要です。
食物繊維には食べ物に含まれる脂質や糖を体外に排出するはたらきがあるため、摂取することで体脂肪の減少が見込めます。
また食物繊維は1g当たり0〜2kcalと低カロリーであるため、ダイエット中の方でも比較的気軽に摂取できることもポイントです[6]。
食物繊維は豆類、野菜類、きのこ類、海藻類などに含まれます。
食品としてはさつまいも、かぼちゃ、ごぼう、たけのこ、しいたけ、ブロッコリー、糸引き納豆、おから、ひじきなどに多く含まれています。
主食ではそばやライ麦パンなどが挙げられます。
ダイエット中こそ、意識的に食物繊維を摂ると良いでしょう。
食物繊維とダイエットについてさらに詳しいことが知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食物繊維はダイエットの味方!健康的に痩せる食事のポイントを解説
[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント4 バランスの取れた食生活を送る
ダイエットに取り組む際はバランスの取れた食生活を心掛けるようにしましょう。
偏った食事は栄養不足を招く可能性があります。
例えば炭水化物が不足するとエネルギーをつくり出すことができず、集中力の低下や疲労感の原因になることがあります。
またたんぱく質が足りないと体力や免疫機能の低下が起こります。
ビタミンには糖質や脂質をエネルギーに変えるはたらきがあります。
せっかくエネルギー源になるものを摂取しても、ビタミンが足りないとそれをエネルギーに変えることができないのです。
慢性的な栄養不足は低血圧や不整脈などを引き起こし、女性の場合は無月経の原因になることもあります。
4.ダイエットを成功させるための運動のポイント
ダイエットを成功させるためには適度な運動も重要です。
この章ではダイエットを成功させるための運動のポイントを三つご紹介します。
ポイント1 有酸素運動を行う
「有酸素運動」には脂肪燃焼作用が期待できます。
具体的には週に10メッツ・時以上の有酸素運動を行うと脂肪を燃焼できるとされています[7]。
主な有酸素運動のメッツは以下のとおりです。
有酸素運動 | メッツ |
---|---|
散歩 | |
ジョギング | |
自転車に乗る(時速16.1km未満) | |
水中歩行 | |
水泳・自由形(ゆっくり) | |
エアロビクスダンス(低い強度) |
独立行政法人 国立健康・栄養研究所「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」をもとに執筆者作成
週に10メッツ・時以上の有酸素運動を行うには、ウォーキング(3.5メッツ)であれば3時間強、ジョギング(7.0メッツ)であれば1時間半程度が必要となります[9]。
また1日に30分の有酸素運動をしても、10分の有酸素運動を3回しても、種目が同じであれば脂肪の燃焼作用に差はありません[7]。
メッツを意識して、自分にとって無理のない範囲での運動を心掛けると良いでしょう。
[7] 厚生労働省 e-ヘルスネット「内臓脂肪減少のための運動」
[8] 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」
[9] 独立行政法人 国立健康・栄養研究所「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」
ポイント2 筋トレを行う
筋トレをして筋肉量が増えると「基礎代謝」が上がるため、脂肪が付きにくくなります。
脂肪よりも筋肉の方がエネルギー代謝が高いため、筋肉量が増すと安静時の消費エネルギーも増えます。
ヒトのエネルギー消費は大きく基礎代謝量、身体活動量、「食事誘発性熱産生」の三つに分けられます。
1日の総エネルギー消費量のうち、基礎代謝量は約60%、身体活動量は約30%、食事誘発性熱産生は約10%を占めます[10]。
筋肉を増やして基礎代謝量を上げることが、脂肪が付きにくい体をつくる上でいかに重要かが分かりますね。
[10] 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」
ポイント3 筋トレは有酸素運動より先に行う
ダイエット目的で運動をする場合、筋トレは有酸素運動より先に行うと良いでしょう。
筋トレの前に有酸素運動を行うと「成長ホルモン」の分泌が抑えられてしまいます。
そのため脂肪を効率良く燃焼するには、筋トレをしてから有酸素運動をするという流れが理想です。
ただし準備運動をせずにいきなり運動を始めるとけがの原因になりかねないので、まずはストレッチや軽めの有酸素運動を短時間行うと良いでしょう。
5.睡眠不足だと太る理由についてのまとめ
睡眠不足は自律神経のはたらきや食欲をつかさどるホルモンの分泌を乱します。
結果として日中の消費エネルギーが減少し、食欲が増すので太りやすくなります。
また睡眠不足だと脳が甘いものや油っぽいものを欲するようになるため、体重増加に拍車がかかるといえるでしょう。
睡眠不足は血圧や血糖値にも悪影響を及ぼし、高血圧や脳卒中などの発症リスクが上がります。
寝付きが悪い方や睡眠が途切れやすい方はそうでない方と比べて糖尿病にかかるリスクが1.5〜2倍になることも分かっています[11]。
睡眠不足による体重増加を改善するには食事面、運動面に気を配る必要があります。
ダイエットを成功させるには摂取カロリーを適切に抑えること、たんぱく質や食物繊維を十分に摂取することが重要です。
痩せたいあまり偏った食事を続けていると栄養不足に陥る危険があるので注意してください[12]。
有酸素運動には脂肪を燃焼する作用があり、筋トレをして筋肉を付けると脂肪が付きにくくなるため、適度な運動が推奨されます。
筋トレをした後に有酸素運動をすると効率的に脂肪を減らすことができるのでおすすめですよ。
この記事を睡眠不足による体重増加を食い止めるために役立ててくださいね。
[11] 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」
[12] 厚生労働省 e-ヘルスネット「若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題」