「レバーって体に良いのかな?」
「レバーにはどんな栄養素が含まれているんだろう……。」
レバーを食べる機会はあっても、どのような栄養素が含まれているのか詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
レバーは動物の肝臓で、たんぱく質、ビタミン、鉄分に代表されるミネラルなど体に必要な栄養素を多く含んでいます。
よく食用されるレバーには牛、豚、鶏のものがあり、それぞれ特徴や含有栄養素が異なります。
この記事ではそれぞれのレバーの特徴やカロリー、含有栄養素とそのはたらきについて解説します。
またレバーをおいしく食べるポイントについても併せてご紹介するので参考にしてくださいね。
1.レバーの特徴
レバーにはどのような特徴があるかご存じない方もいらっしゃるかもしれませんね。
レバーは肝臓のことで、食肉としては牛や豚、鶏のものが主に流通しています。
一般的な肉類と比べて脂質が少なく、カロリーが低いという特徴があります。
レバーは種類によってそれぞれ味わいや食感が異なります。
牛レバーには肉質がやわらかく、加熱すると身が締まるという特徴があります。
豚や鶏のレバーに比べ臭みが強い場合もありますが、半面うまみも強く、下処理を丁寧にすれば濃厚な味わいと独特の食感を楽しむことができます。
豚レバーは牛レバーよりも弾力があるといわれています。
鶏レバーは牛や豚のレバーに比べてふわっとした食感が特徴です。
またその味わいはまろやかで癖が少ないといわれています。
これらの特徴を踏まえ、自分の好みに合ったレバーを選びましょう。
2.レバーのカロリー
レバーのカロリーは他の肉類と比べて低い傾向にあります。
「それじゃあ、レバーや他の肉類のカロリーってどれくらいなの?」
という点が気になりますよね。
100g当たりのカロリーは牛レバーが119kcal、豚レバーが114kcal、鶏レバーが100kcalです[1]。
牛ばら肉は100g当たり338kcal、牛かたロース肉は100g当たり221kcal、豚ばら肉は100g当たり366kcal、豚ロース肉は100g当たり248kcal、皮つきの鶏もも肉は100g当たり190kcal、皮つきの鶏むね肉は100g当たり133kcalです[1]。
【各種レバーと肉類のカロリー(100g当たり)】
食品名 | カロリー |
---|---|
牛レバー | 119kcal |
豚レバー | 114kcal |
鶏レバー | 100kcal |
牛ばら肉(輸入牛、脂身つき) | 338kcal |
牛かたロース肉(輸入牛、脂身つき) | 221kcal |
豚ばら肉(脂身つき) | 366kcal |
豚ロース肉(脂身つき) | 248kcal |
鶏もも肉(皮つき) | 190kcal |
鶏むね肉(皮つき) | 133kcal |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
日頃食べる機会の多い肉類と比較するとレバーのカロリーが低いことが分かりますね。
3.レバーに豊富に含まれる栄養素
「レバーにはどんな栄養素が多く含まれているんだろう?」
このように気になる方もいらっしゃるでしょう。
牛・豚・鶏のレバーに共通して豊富に含まれている栄養素にはたんぱく質、ビタミンA、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、鉄、亜鉛、銅があります。
牛レバーに豊富に含まれている栄養素はビタミンCです。
また、鶏レバーにはビタミンB1が豊富に含まれています。
【レバーに豊富に含まれる栄養素とその含有量(100g当たり)】
栄養素 | 含有量 | ||
---|---|---|---|
牛レバー | 豚レバー | 鶏レバー | |
たんぱく質 | 19.6g | 20.4g | 18.9g |
ビタミンA | 1,100μg | 13,000μg | 14,000μg |
ビタミンB1 | 0.22mg | 0.34mg | 0.38mg |
ビタミンB2 | 3.0mg | 3.6mg | 1.8mg |
ナイアシン当量 | 18.0mg | 19.0mg | 9.0mg |
ビタミンB6 | 0.89mg | 0.57mg | 0.65mg |
ビタミンB12 | 53.0μg | 25.0μg | 44.0μg |
葉酸 | 1,000μg | 810μg | 1,300μg |
パントテン酸 | 6.4mg | 7.19mg | 10.0mg |
ビオチン | 76μg | 80μg | 230μg |
ビタミンC | 30mg | 20mg | 20mg |
鉄 | 4.0mg | 13.0mg | 9.0mg |
亜鉛 | 3.8mg | 6.9mg | 3.3mg |
銅 | 5.3mg | 0.99mg | 0.32mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
この章ではレバーに豊富に含まれる栄養素とそのはたらきについて解説していきます。
3-1.たんぱく質(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには19.6g、豚レバーには20.4g、鶏レバーには18.9gのたんぱく質が含まれています[2]。
たんぱく質はヒトの体のエネルギー源となる栄養素の一種です。
また、たんぱく質は筋肉や臓器、皮膚、毛髪などを構成したり、ホルモンや酵素、抗体など体のはたらきを調整する物質になったりします。
レバーのたんぱく質は体内での利用効率の高い「良質なたんぱく質」であるといえます。
たんぱく質は20種類の「アミノ酸」と呼ばれる物質で構成されています[3]。
アミノ酸は食事から摂取しなければならない9種類の「必須アミノ酸」と体内で合成できる11種類の「非必須アミノ酸」に分けられます[4]。
食品中のたんぱく質に必須アミノ酸がヒトの体にとって望ましい量に対しどれだけの割合で含まれているかを表す数値を「アミノ酸スコア」といいます。
アミノ酸スコアは100を上限とし、その数値が高いほどたんぱく質の体内での利用効率が高いことを意味します[5]。
レバーのアミノ酸スコアは最大値の100です[2][6]。
【身近な食品のアミノ酸スコア(100g当たり)】
食品名 | 加工状態 | アミノ酸スコア |
---|---|---|
牛レバー | 生 | 100 |
豚レバー | 生 | 100 |
鶏レバー | 生 | 100 |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition : report of a joint FAO/WHO/UNU expert consultation」をもとに執筆者作成
つまり無駄なく利用されるたんぱく質が多く含まれている食品であるといえるのですね。
たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量は18歳~64歳以上の男性が65g、65 歳以上の男性が60gです[3]。
また、女性は50gです[3]。
たんぱく質が不足すると免疫機能の低下、筋力低下などの原因になります。
良質なたんぱく質を含むレバーを使用した料理を日々の食事に取り入れてみてはいかがでしょう。
たんぱく質についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
たんぱく質は1日どれくらい必要?効率良く摂取できるおすすめの食品
3-2.ビタミンA(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには1,100μg、豚レバーには13,000μg、鶏レバーには14,000μgのビタミンAが含まれています [7]。
ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種です。
体内では「レチノール」「レチナール」「レチノイン酸」の3種類の形で存在しています。
食品から摂取できるビタミンAにはレチノールの他、体内でビタミンAとしてはたらく「プロビタミンA」があります。
このためビタミンAの含有量や食事摂取基準はレチノールにプロビタミンAから変換されるビタミンAを合わせた「レチノール活性当量(μgRAE)」で表されます。
なお、レバーに含まれるビタミンAはほとんどがレチノールです。
ビタミンAは皮膚や粘膜の健康を保ったり、目の機能を正常に維持したりするはたらきをしています
また、ビタミンAは「抗酸化作用」を持つ抗酸化ビタミンの一種です。
不足すると暗い場所でものが見にくくなる夜盲症、目や皮膚の乾燥、成長障害などを引き起こす恐れがあります。
ビタミンAの1日当たりの摂取推奨量は18~29歳の男性と65~74歳の男性で850μg、30~64歳の男性で900μg、75歳以上の男性で800μg、18~29歳の女性で650μg、30~74歳の女性で700μg、75歳以上の女性で650μgです[8]。
レバーは100gで1日の摂取推奨量を上回ります。
通常の食事では過剰摂取による悪影響はほとんど見られませんが、ビタミンAは摂り過ぎると体内に蓄積されてしまいます。
サプリメントやレバーの大量摂取では健康被害が報告されているためレバーの食べ過ぎは要注意です。
ビタミンAを短期間に過剰に摂取した場合、成人では吐き気、頭痛、目まい、目のかすみなどが起こります。
長期間にわたる過剰摂取では、中枢神経系や肝臓、骨、皮膚などに影響が表れます。
また、妊婦では胎児の奇形、子どもでは頭蓋内や骨格に異常が生じる場合があります。
過剰摂取による健康障害を防ぐため、ビタミンAには「耐容上限量」が設定されています。
18歳以上の男女共に耐容上限量は2,700μgRAEです[8]。
毎日続けてレバーをたくさん食べるといった生活は避けるようにしましょう
ビタミンAについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンAにはどんな効果がある?目標摂取量とおすすめの食品を紹介
3-3.ビタミンB1(鶏)
100g当たり鶏レバーには0.38mgのビタミンB1が含まれています[9]。
ビタミンB1は米ぬかから発見された水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群に含まれます。
水溶性ビタミンは体内のさまざまな代謝に必要な酵素のはたらきを助ける補酵素としてはたらきます。
ビタミンB1は補酵素としてエネルギー産生に欠かせない栄養素なのです。
ビタミンB1の1日当たりの摂取推奨量は18~49歳の男性で1.4mg、50~74歳の男性で1.3mg、75歳以上の男性で1.2mg、18~74歳の女性で1.1mg、75歳以上の女性で0.9mgです[10]。
ビタミンB1不足は糖質を多く摂取したり、アルコールを多量に摂取したりすることで起こるため、糖質やアルコールの摂り過ぎには注意しましょう。
ビタミンB1不足によって起こる代表的なものに「脚気(かっけ)」があります。
ビタミンB1をレバーから摂取することはもちろん、糖質やアルコールの量などバランスを意識することが大切ですね。
ビタミンB1についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB1が豊富に含まれる食べ物は?効果や摂取基準も詳しく解説
3-4.ビタミンB2(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには3.0mg、豚レバーには3.6mg、鶏レバーには1.8mgのビタミンB2が含まれています[11]。
ビタミンB2は水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一種です。
エネルギー代謝に関係する酵素の補酵素としてはたらきます。
ビタミンB2の1日当たりの摂取推奨量は18~49歳の男性で1.6mg、50~74歳の男性で1.5mg、75歳以上の男性で1.3mg、18~74歳の女性で1.2mg、75歳以上の女性で1.0mgです[12]。
ビタミンB2は食事からの摂取が足りていないときの他、代謝異常や肝臓疾患、糖尿病、薬物の影響によっても不足する場合があります。
しかし、ビタミンB2だけが不足することはあまりなく、ほかのビタミン不足と同時に起こるといわれています。
ビタミンB2が不足すると口角炎、舌炎、皮膚炎、咽喉炎、成長障害などを引き起こす恐れがあります。
レバーや他の食品も併せてバランス良く摂取することで欠乏症を防ぐことができるでしょう。
ビタミンB2についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB2が手軽に摂れる食べ物は何?効果や食事摂取基準も紹介
3-5.ナイアシン(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには18.0mg、豚レバーには19.0mg、鶏レバーには9.0mgのナイアシン当量が含まれています [13]。
ナイアシンは水溶性ビタミンでビタミンB群の一種です。
動物性食品ではニコチンアミド、植物性食品ではニコチン酸として存在しています。
またナイアシンは食品から摂取する以外にも、必須アミノ酸の一種である「トリプトファン」からもつくられています。
酸化還元反応に関係するさまざまな酵素の補酵素としてはたらき、抗酸化作用、脂肪酸の生合成、ステロイドホルモンの生合成、DNAの修復や合成、細胞分化などに関与しています。
ナイアシンの1日当たりの摂取推奨量は18~49歳の男性で15mgNE、50~74歳の男性で14mgNE、75歳以上の男性で13mgNE、18~29歳および50~74歳の女性は11mgNE、30~49歳の女性で12mgNE、75歳以上の女性で10mgNEです[14]。
ナイアシンが欠乏すると皮膚炎や下痢、精神神経障害などの症状がある「ペラグラ」を引き起こす恐れがあります。
ペラグラの発症は国内では珍しいですが、アルコール依存症の方のなkにはたんぱく質や他のビタミンが不足することでナイアシンも不足することがあります。
また、過剰摂取では、ニコチン酸を多量に摂取した場合の症状は、顔が火照ったり、むずがゆくなったりするなどの「フラッシング症状」が起こることがあります。
ニコチンアミドの過剰摂取では胃腸障害や肝毒性、消化性潰瘍などの副作用が報告されており、食事摂取基準でも耐用上限量が設定されています。
ナイアシンの耐用上限量は18~64歳の男性で350mgNE、65歳以上の男性で300mgNE、18歳以上の女性で250mgNEです。
水溶性ビタミンのナイアシンですがサプリメントなどの摂り過ぎには注意しましょう。
3-6.ビタミンB6(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには0.89mg、豚レバーには0.57mg、鶏レバーには0.65mgのビタミンB6が含まれています[15]。
ビタミンB6は水溶性ビタミンの一種でビタミンB群に含まれます。
体内ではたんぱく質や脂質、炭水化物の代謝の補酵素および神経伝達物質に関連する補酵素としてはたらく他、ホルモンを調節する役割も果たしています。
ビタミンB6の1日当たりの摂取推奨量は18歳以上の男性で1.4mg、同じく女性で1.1mgです[16]。
水溶性ビタミンはたくさん摂取しても尿中に排出されますが、ビタミンB6を過剰に摂取すると体に悪影響を及ぼすことが分かっています。
具体的には神経障害や骨の痛み、筋肉が弱る、精巣萎縮、精子数の減少などが引き起こされます。
一方、欠乏症は食事から十分に摂取できない状態が続いたときの他、抗リウマチ剤などのビタミンB6阻害剤を服用したときに起こります。
ビタミンB6が不足すると湿疹、皮膚炎、口角炎、舌炎、貧血、免疫機能の低下などを引き起こす恐れがあります。
ビタミンB6が単独で不足することは少なく、同時に他のビタミンが不足したときに欠乏症が起こるといわれているため普段からバランスの良い食生活を心掛けたいですね。
ビタミンB6についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
3-7.ビタミンB12(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには53μg、豚レバーには25μg、鶏レバーには44μgのビタミンB12が含まれています[17]。
ビタミンB12は水溶性ビタミンの一種で、補酵素としてたんぱく質や脂質の代謝に関与しています。
ビタミンB12の吸収には胃壁から分泌される「内因子」と呼ばれる物質が必要となります。
このため胃酸分泌量の少ない高齢者などではビタミンB12の吸収率が低下します。
また、植物性食品にはほとんど含まれないため、厳格な菜食主義の人は注意が必要です。
ビタミンB12の1日当たりの摂取推奨量は18歳以上の男性、女性共に2.4μgです[18]。
不足すると、悪性貧血や神経障害などが起こるといわれています。
動物性食品のレバーを活用しビタミンB12を摂取すると良いでしょう。
ビタミンB12についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB12が不足する原因とよくある症状は?摂取しやすい食品も紹介
3-8.葉酸(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには1,000μg、豚レバーには810μg、鶏レバーには1,300μgの葉酸が含まれています[19]。
葉酸は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群に含まれます。
DNAやRNAの合成、アミノ酸の代謝、たんぱく質の合成などに関わり、細胞の増殖に深く関係しています。
胎児の正常な発育に重要な栄養素で、妊娠を計画している女性や妊婦は十分に摂取することが推奨されています。
妊婦の葉酸が不足すると胎児の神経管閉鎖障害という先天性の異常を引き起こす恐れがあります。
神経管閉鎖障害は脳や脊髄、脊椎などが正常に形成されない障害で、最も重度の場合には脳組織が発達しない「無脳症」があります。
また、中高年齢者においてビタミンB6やビタミンB12とともに葉酸が不足すると、動脈硬化の要因となる血中の「ホモシステイン」が増加し、心臓疾患や脳卒中のリスクが高まるといわれています。
葉酸の1日当たりの摂取推奨量は18歳以上の男性、女性共に240μgです[20]。
健康のために葉酸を含むレバーなどの食品をしっかり摂取しておきましょう。
葉酸についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
3-9.パントテン酸(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには6.4mg、豚レバーには7.19mg、鶏レバーには10.0mgのパントテン酸が含まれています[21]。
ビタミンB群の一種で、特に糖や脂質の代謝において補酵素の構成成分として重要なはたらきをします。
パントテン酸の1日当たりの摂取推奨量は18~49歳の男性で5mg、50歳以上の男性で6mg、18歳以上の女性で5mgです [22]。
パントテン酸が不足した場合、手足のしびれや頭痛、疲労、不眠、食欲不振などの症状の他、成長の停止や副腎の障害といった影響が表れる場合があります。
ただし、パントテン酸はさまざまな食品に含まれているため欠乏症の心配はないといわれています。
通常の食生活を送っているのであれば、パントテン酸の過不足はまず起こらないでしょう。
3-10.ビオチン(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには76μg、豚レバーには80μg、鶏レバーには230μgのビオチンが含まれています[23]。
ビオチンはビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質の代謝に関係する補酵素としてエネルギーを作るはたらきをサポートします。
また、皮膚や粘膜、爪や髪の健康維持に重要なビタミンです。
ビオチンの1日当たりの摂取目安量は18歳以上の男性、女性共に50μgです[24]。
ビオチンはさまざまな食品に含まれているため、通常の食事をしていれば欠乏の心配はありません。
3-11.ビタミンC(牛)
100g当たり牛レバーには30mgのビタミンCが含まれています[25]。
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で皮膚や腱(けん)、軟骨などを構成するたんぱく質「コラーゲン」をつくるために必須の栄養素です。
コラーゲンには肌の健康だけでなく骨や血管など全身の細胞と細胞をつなぐ役割があります。
多くの動物はぶどう糖からビタミンCを合成できますがヒトは合成することができないため、食べ物などから摂取する必要があります。
また、ビタミンCには抗酸化作用があるため狭心症や心筋梗塞などの心臓血管系の疾病予防効果が期待できます。
ビタミンCの1日当たりの摂取推奨量は18歳以上の男性、女性共に100mgです[26]。
ビタミンCが不足すると血管が脆くなり出血しやすくなる「壊血病」を引き起こす恐れがあります。
症状として、疲労感、いらいら、血色不良、皮下や歯ぐき(歯茎)の出血、貧血、筋肉の減少、心臓障害、呼吸困難などがあります。
レバーだけでなく野菜や果物なども併せてバランスの良い食事でビタミンCを摂取すると良いでしょう。
ビタミンCについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンCの美容・健康効果は?目標摂取量と豊富に含まれている食品
3-12.鉄(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには4mg、豚レバーには13mg、鶏レバーには9mgの鉄が含まれています[27]。
鉄は血液中の赤血球の構成要素「ヘモグロビン」として酸素の運搬や細胞の呼吸に関わっています。
また酵素の材料としてもはたらきます。
鉄が不足すると赤血球が小さくなり数も減少するため、体全体に酸素を十分に行き渡らせることができなくなります。
代表的な欠乏症は頭痛や疲労感、動機、息切れなどがみられる鉄欠乏性貧血です。
体内で鉄を合成することはできないため食物から補給することが必要です。
食品中の鉄にはたんぱく質と結合した「ヘム鉄」とたんぱく質と結合していない「非ヘム鉄」があります。
動物性食品にはヘム鉄、植物性食品には非ヘム鉄が多く含まれ、ヘム鉄は非ヘム鉄よりも吸収率が高いといわれています。
レバーは吸収率の良いヘム鉄を豊富に含んでいるため、手軽に鉄補給できる優れた食品といえるでしょう。
鉄の1日当たりの摂取推奨量は18~74歳の男性で7.5mg、75歳以上の男性で7.0mg、18~64歳の女性で6.5mg、65歳以上の女性で6.0mg、月経ありの女性の場合、10~14歳は12mg、15~49歳は10.5mg、50~64歳は11.0mgです[28]。
鉄不足による不調を予防するために、食べ物からしっかり摂取しておきたいですね。
鉄についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!
3-13.亜鉛(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには3.8mg、豚レバーには6.9mg、鶏レバーには3.3mgの亜鉛が含まれています[29]。
亜鉛は数百種の酵素の構成、酵素反応の活性化、ホルモンやたんぱく質合成、DNA合成、免疫機能調節などのはたらきをしています。
体内では歯、骨、肝臓、腎臓、筋肉に多く存在しています。
亜鉛が不足すると味覚障害や皮膚炎、食欲不振などの症状が現れます。
また小児では成長障害や性腺発育障害も見られます。
亜鉛不足は食事からの摂取が足りない場合の他、排せつ量が増加した場合、必要量が増えた場合などに起こります。
亜鉛の1日当たりの摂取推奨量は18歳以上の男性で11mg、同じく女性で8mgなので[30]、しっかり摂取するよう心掛けましょう。
日本人は高齢者を中心に亜鉛不足の状態にあるとされています。
実際に複数の疫学調査の論文において、日本人の 20-30%が亜鉛欠乏の状況にあると報告されています[31]。
亜鉛が含まれる食品を、意識して食事に取り入れることで、亜鉛不足にならないようにしましょう。
また玄米や豆類などに含まれる「フィチン酸」や乳製品などに含まれるカルシウム、アルコールなどは亜鉛の吸収を妨げるので注意してください。
亜鉛についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
亜鉛に期待できる効果とは?摂取目安量やおすすめの食品を紹介!
[31]神戸 大朋「亜鉛トランスポーターの解析から亜鉛の生理機能を探る」(日本栄養・食糧学会誌 第 76 巻 第 4 号 207‒216(2023))
3-14.銅(牛・豚・鶏)
100g当たり牛レバーには5.3mg、豚レバーには0.99mg、鶏レバーには0.32mgの銅が含まれています[32]。
銅はたんぱく質と結合し、さまざまな生体内反応の触媒作用の役割を担ったり、鉄とともに造血機能に関わったりしています。
なかでも、鉄の代謝や運搬、活性酸素の除去、神経伝達物質の代謝において重要なはたらきをしています。
銅の1日当たりの摂取推奨量は18~74歳の男性で0.9mg、75歳以上の男性で0.8mg、18歳以上の女性で0.7mgです[33]。
銅が不足すると貧血や白血球の減少、骨の異常などを引き起こす恐れがあります。
ただし通常の食生活を送っていればこのような問題は生じないといわれています。
銅の不足は遺伝的に銅を吸収しづらい体質である場合や、たんぱく質を十分に取れていない場合、治りにくい下痢が続いている場合、銅が添加されていない輸液で栄養を摂っている場合などに起こります。
また銅不足は銅が少ないミルクを栄養源としている乳児や低出生体重児でも見られます。
こうした特殊な状況下にない場合は、銅不足による悪影響の心配はしなくても良いといえるでしょう。
4.レバーに含まれるその他の栄養素
「レバーに含まれている他の栄養素にはどのようなものがあるんだろう?」
このようにお思いの方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここまで紹介してきた栄養素の他には、豚レバーにビタミンDが含まれています。
4-1.ビタミンD(豚)
100g当たり豚レバーには1.3μgのビタミンDが含まれています[34]。
ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種で、ビタミンD2とビタミンD3があります。
ビタミンDはカルシウムやリンなどのミネラル代謝、骨の代謝に関係しています。
ビタミンD1の1日当たりの摂取目安量は18歳以上の男性、女性共に8.5μgです[35]。
2023年に発表された調査結果では、日本における調査対象者の98%が日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱するビタミンD不足(<30 ng/mL)に該当すると報告されました[36]。
食事から十分な量を摂取できない、消化管からの吸収が不十分、腎臓で活性型のビタミンDに変換されない、日光に当たる時間が不十分などの場合は不足する可能性があります。
不足すると骨軟化症、骨粗しょう症、小児では骨の成長障害のくる病の原因となる恐れがあります。
ビタミンDは野菜や穀物、豆類やいも類などにはほとんど含まれていないため、レバーなどから摂取できると良いでしょう。
ビタミンDについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンDってどんな栄養素?効果と摂取方法について徹底解説!
5.レバーをおいしく食べるポイント
たくさんの栄養素を含んでいるレバーをせっかくならおいしく食べたいですよね。
ここではレバーをおいしく食べる際のポイントをご紹介しましょう。
ポイント1 鮮度が良いものを選ぶ
レバーをおいしく食べるためには鮮度が良いものを選ぶことが重要です。
光沢や艶があり、切り口の角が尖っているものが新鮮といえます。
傷みが早いため、購入しても食べ切らない場合はその日のうちに下処理をして冷凍すると良いでしょう。
ラップの上にレバーを薄く広げて包み、トレイやバットの上に置いて冷凍し、凍った後は冷凍保存袋に入れて保存すると鮮度が長持ちするでしょう。
ポイント2 水にさらして下処理をする
レバーは水にさらし、きちんと下処理を行うことが重要です。
まずは肉の種類や形状に合わせて切り分けましょう。
鶏レバーは塊が二つつながった形をしています。
つながっている部分で切り、大きい方はさらに縦半分にすると良いでしょう。
また鶏レバーはハツ(心臓)と一緒に売られている場合もあります。
ハツがつながっている場合、まずはハツとレバーを切り離します。
ハツは縦半分に切り、血を包丁の刃先でかき出すようにしましょう。
牛・豚のレバーは1cm程度のそぎ切りにします。
表面に脂肪が付いている場合はそぎ切りにする前に脂肪を包丁で切り落としましょう。
いずれのレバーも、切り終えたらボウルに入れ、水が透明になるまで流水にさらしてください。
ポイント3 臭みをとる
レバーには独特な臭みがあります。
下処理の際、臭みを取っておくことでよりおいしく感じられるでしょう。
独特な臭いを消すため、牛乳、たまねぎのすりおろし、緑茶、ウーロン茶、海水と同程度の塩分濃度の塩水など、調理前にさまざまな液体にひたす方法が考えられています
ご家庭にあるもので試してみると良いでしょう。
ポイント4 中まで十分加熱する
レバーには食中毒の原因となる菌やウイルスが付いている場合があるため、生食には適していません。
飲食店には中心温度が63度の状態では30分以上、75度の状態では1分以上、あるいはそれらと同等の条件で加熱することが求められています[37]。
レバーは鮮度には関係なく中までしっかり加熱して食べることが鉄則です。
ポイント5 食べ過ぎない
レバーを食べ過ぎるとビタミンAの摂り過ぎを招きます。
レバーに含まれるレチノールは吸収率が高く肝臓に貯蔵されます。
このためレバーを摂り過ぎると吐き気、頭痛、目まい、目のかすみなどの症状が現れる恐れがあります。
また長期的に過剰摂取すると中枢神経や肝臓、骨、皮膚などに異常を来し、妊婦では胎児の奇形を生じます。
食べ過ぎには十分注意しましょう。
6.レバーに含まれる栄養素についてのまとめ
食肉レバーは肝臓のことで、主に牛、豚、鶏のものが流通しています。
肉類のなかでは比較的低脂肪・低カロリーな食材だといえるでしょう。
レバーは、たんぱく質やさまざまなビタミン、ミネラルを豊富に含みます。
特に、脂溶性ビタミン、ビタミンB群、鉄などが多く含まれます。
傷みやすいため、鮮度の良いものを選ぶこと、その日のうちに下処理をして冷凍保存することが勧められます。
レバーを食べる際には、食中毒を避けるために十分に加熱することが鉄則です。
また、食べ過ぎるとビタミンAの摂り過ぎとなり、吐き気や頭痛、目まい、目のかすみなどを引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
新鮮なものを選び、十分加熱して、適量を摂取することで、レバーは健康維持に役立つ優れた食品といえるでしょう。
豊富な栄養素を含むレバーを食卓に取り入れてみてくださいね。