「豆乳って健康に良いんだろうか……」
「豆乳にはどんな栄養素が含まれているのかな?」
豆乳は低カロリーで健康的と聞いたことはあっても、含まれている栄養素までは詳しく知らない方も多いでしょう。
豆乳にはたんぱく質に加え、多くのビタミンやミネラルが豊富に含まれています。
また豆乳に含まれる大豆イソフラボンは女性ホルモンに似たはたらきを持ち、肌をきれいにしたり骨粗しょう症や一部のがんを予防したりといった効果があるといわれています。
この記事では豆乳がどのような飲み物で、どんな栄養素が含まれているかをご紹介します。
また牛乳との栄養素の違いも解説しますので、豆乳を食生活に取り入れる際の参考にしてくださいね。
1.豆乳の基礎知識
豆乳の栄養を解説する前に、まずは豆乳の基礎知識をご紹介します。
豆乳がどのような飲み物で、どれくらいのカロリーがあるのか見ていきましょう。
1-1.豆乳とは?
「豆乳ってどういう飲み物なんだろう?」
「無調整豆乳と調製豆乳って何が違うのかな……」
豆乳が大豆から作られていることは知っていても、どのように作られているのか、どのような種類があるか分からないという方もいらっしゃるでしょう。
豆乳は日本農林規格(JAS規格)により無調整豆乳と調製豆乳、豆乳飲料の3種類に分けられています[1]。
この規格では豆乳という場合は無調整豆乳を指し、大豆から熱水などを用いてたんぱく質などの成分を溶出させ、繊維質を除去した乳状の飲料のうち大豆固形分が8%以上のものと定義されます[1]。
この豆乳は大豆を搾ったそのままで味付けをしていないことから無調整豆乳と呼ばれます。
調製豆乳は無調整豆乳に大豆油などの植物油脂や砂糖、食塩などを加え、大豆固形分が6%以上のものと定義されます[1]。
無調整豆乳には独特の香りや風味があることから、より飲みやすくするために油脂や調味料を加えて調製豆乳としています。
豆乳飲料は調製豆乳に果汁やコーヒー、ココア、紅茶、牛乳、ナッツなどでさらにフレーバーを足したもので、大豆固形分が4%以上もしくは2%以上のものと定義されます[1]。
豆乳飲料は調製豆乳をさらに飲みやすくした飲料といえるでしょう。
1-2.豆乳に含まれるカロリー
「豆乳はヘルシーって本当なんだろうか?」
豆乳は低カロリーでヘルシーな飲料だと聞いたことのある方は多いでしょう。
豆乳の100g当たりのカロリーは以下のとおりです。
【豆乳の可食部100g当たりのカロリー】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 43kcal |
調製豆乳 | 61kcal |
豆乳飲料 | 57kcal |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
豆乳は最も低カロリーな無調整豆乳でも、コーラやオレンジジュースなどの清涼飲料水とカロリーは大差ありません。
ただしカロリー自体はあまり低くないものの、豆乳にはダイエットに効果のある栄養素や成分が入っています。
ここからは豆乳に含まれる栄養素や成分を解説していきます。
2.豆乳に豊富に含まれる栄養素
「豆乳にはどんな栄養素が含まれているのかな?」
栄養豊富で健康に良いといわれるだけに、豆乳に含まれる栄養素は気になりますよね。
豆乳は良質なたんぱく質に加え、多くのビタミンやミネラルを豊富に含んでいます。
この章では豆乳に豊富に含まれる栄養素をご紹介します。
【豆乳に豊富に含まれる主な栄養素とその含有量(100g当たり)】
栄養素 | 豆乳(無調整豆乳) | 調製豆乳 | 豆乳飲料 |
---|---|---|---|
たんぱく質 | 3.6g | 3.2g | 2.2g |
ナイアシン | 1.4mgNE | 1.0mgNE | 0.9mgNE |
ビタミンB6 | 0.06mg | 0.05mg | 0.03mg |
葉酸 | 28μg | 31μg | 15μg |
パントテン酸 | 0.28mg | 0.24mg | 0.12mg |
ビオチン | 3.8μg | 3.6μg | - |
カリウム | 190mg | 170mg | 110mg |
マグネシウム | 25mg | 19mg | 13mg |
鉄 | 1.2mg | 1.2mg | 0.3mg |
銅 | 0.12mg | 0.12mg | 0.07mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
日本人の食事摂取基準は以下よりご確認いただけます。
2-1.たんぱく質
無調整豆乳にはたんぱく質が豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのたんぱく質含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 3.6g |
調製豆乳 | 3.2g |
豆乳飲料 | 2.2g |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
たんぱく質は炭水化物や脂質と並ぶ体のエネルギー産生栄養素の一つです。
たんぱく質は筋肉や臓器、肌や髪などの細胞を構成し、体のさまざまな機能を調整するホルモンや酵素の材料にもなります。
特に、大豆に含まれるたんぱく質は「アミノ酸スコア」が100の極めて良質なたんぱく質であることが知られています[2][3]。
また大豆のたんぱく質を構成する「β-コングリシニン」という物質には中性脂肪を減らす効果があるという研究結果が報告されています。
さらに大豆のたんぱく質は消化・吸収に時間がかかるため満腹感を得やすく腹持ちが良いことがポイントです。
食前に豆乳を摂取することで食欲を抑え、食べ過ぎを防ぐ効果が期待できるでしょう。
豆乳自体のカロリーは低くはありませんが、大豆のたんぱく質が持つ性質が肥満を予防し、ダイエットに役立つのですね。
これ以外にも、大豆のたんぱく質は小腸でのコレステロールの吸収を抑えることで、血中コレステロール濃度を下げるはたらきがあることも分かっています。
肥満自体も動脈硬化を進行させる要因となるため、豆乳を日々摂取することは動脈硬化の予防に効果的だといえるでしょう。
豆乳のたんぱく質はただ良質なたんぱく質であるだけでなく、健康に良い効果を多く兼ね備えているといえます。
たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量は、18~64歳の男性で65g、女性で50gとされています[4]。
18歳未満、65歳以上の方のたんぱく質の摂取推奨量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
たんぱく質については以下の記事で詳しく解説しています。
たんぱく質とは?体内でのはたらきや食事摂取基準、豊富な食品を紹介
2-2.ナイアシン
無調整豆乳にはナイアシンが豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのナイアシン含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 1.4mgNE |
調製豆乳 | 1.0mgNE |
豆乳飲料 | 0.9mgNE |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
ナイアシンは水溶性のビタミンB群の一種で、DNAの修復や合成に関わり皮膚や粘膜の健康維持を助けています。
またナイアシンは極めて多くの酵素の補酵素となり、糖質やたんぱく質、脂質を分解してエネルギーを産生したり、脂肪酸やステロイドホルモンを体内で合成したりするなど多くの役割を担っています。
二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解する酵素の補酵素でもあるため、お酒をよく飲む方は意識的に摂取すると良いでしょう。
ナイアシンの1日の摂取推奨量は18~64歳の男性で14~15mgNE、女性で11~12mgNEとされています[6]。
18歳未満、65歳以上の方のナイアシンの摂取目安量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
2-3.ビタミンB6
無調整豆乳にはビタミンB6が豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのビタミンB6含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 0.06mg |
調製豆乳 | 0.05mg |
豆乳飲料 | 0.03mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
ビタミンB6は水溶性のビタミンB群の一種で、糖質や脂質、たんぱく質からエネルギーをつくり出す際に欠かせない栄養素です。
ビタミンB6は補酵素として100以上の代謝に関わる酵素のはたらきに寄与しています[7]。
特にたんぱく質からエネルギーをつくる際の重要な役割を担うため、たんぱく質を多く摂取している方はビタミンB6の必要量が増加します。
ビタミンB6はそれ以外にも、正常な免疫機能の維持や赤血球のヘモグロビンの合成、神経伝達物質の合成などに関わっています。
ビタミンB6の1日の摂取推奨量は18~64歳の男性で1.4mg、女性で1.1mgとされています[8]。
18歳未満、65歳以上の方のビタミンB6の摂取推奨量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
ビタミンB6については以下の記事で詳しく解説しています。
2-4.葉酸
無調整豆乳、調製豆乳、豆乳飲料のいずれにも葉酸が豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりの葉酸含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 28μg |
調製豆乳 | 31μg |
豆乳飲料 | 15μg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
葉酸には赤血球の生産を助ける重要なはたらきがあり、またDNAやRNA、たんぱく質の合成といった多くのはたらきに関わっています。
さらに葉酸は細胞の分裂や増殖にも深く関与しており、胎児の正常な発達においても重要な役割を担います。
葉酸の1日の摂取推奨量は18~64歳の男女で240μgとされています[9]。
18歳未満、65歳以上の方の葉酸の摂取推奨量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
葉酸については以下の記事で詳しく解説しています。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
2-5.パントテン酸
無調整豆乳にはパントテン酸が豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのパントテン酸含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 0.28mg |
調製豆乳 | 0.24mg |
豆乳飲料 | 0.12mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
パントテン酸は水溶性のビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質によるエネルギー代謝に関わっています。
また脂質の代謝を促す善玉コレステロールや免疫抗体の生成を助けるなど、さまざまなはたらきを持ちます。
これに加えてストレスを緩和する副腎皮質ホルモンの生成にも関わることから、「抗ストレスビタミン」と呼ばれることもあります。
パントテン酸の1日の摂取目安量は18~64歳の男性で5~6mg、女性で5mgとされています[10]。
18歳未満、65歳以上の方のパントテン酸の摂取目安量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
2-6.ビオチン
無調整豆乳にはビオチンが豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのビオチン含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 3.8μg |
調製豆乳 | 3.6μg |
豆乳飲料 | - |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
ビオチンは水溶性のビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質によるエネルギー代謝に関わっています。
また抗炎症物質を生成することでアレルギー症状などを和らげます。
さらに皮膚や粘膜、髪の毛などの健康を維持するはたらきもあります。
ビオチンの1日の摂取目安量は18~64歳の男女で50μgとされています[11]。
18歳未満、65歳以上の方のビオチンの摂取目安量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
ビオチンについては以下の記事で詳しく解説しています。
ビオチンとは?はたらきや摂取の目安量、摂取源となる食品を解説
2-7.カリウム
無調整豆乳にはカリウムが豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのカリウム含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 190mg |
調製豆乳 | 170mg |
豆乳飲料 | 110mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
カリウムには、ナトリウム(塩分)の排出を促して血圧を下げるはたらきがあります。
塩分を過剰摂取しがちな日本人にとって、カリウムをしっかり摂取することはとても重要だといえるでしょう。
またカリウムは細胞の浸透圧を調整して一定に保つ他、心臓の機能や筋肉の収縮、神経の伝達、細胞の酵素反応の調節など、生命維持に欠かせない多くの役割を担っています。
カリウムの1日の摂取目標量は18~64歳の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上とされています[12]。
18歳未満、65歳以上の方のカリウムの摂取目標量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
カリウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
2-8.マグネシウム
無調整豆乳にはマグネシウムが豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのマグネシウム含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 25mg |
調製豆乳 | 19mg |
豆乳飲料 | 13mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
マグネシウムは多くの酵素やエネルギーの代謝に関わる重要な栄養素です。
マグネシウムの関わるはたらきはたんぱく質の合成や筋肉・神経の機能、血糖や血圧の調整などを制御など多岐にわたります 。
またマグネシウムはカルシウムやリンと共に骨を形成 し、血液の循環を維持するはたらきもあります 。
マグネシウムの1日の摂取推奨量は18~64歳の男性で340~370mg、女性で270~290mgとされています [13]。
18歳未満、65歳以上の方のマグネシウムの摂取推奨量については「日本人の食事摂取基準(2020年版) 」をご覧ください。
マグネシウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説
2-9.鉄
無調整豆乳、調製豆乳には鉄が豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりの鉄含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 1.2mg |
調製豆乳 | 1.2mg |
豆乳飲料 | 0.3mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
鉄は赤血球に含まれるたんぱく質「ヘモグロビン」の成分として、全身の細胞に酸素を運ぶ役割を担う極めて重要な栄養素です。
また筋肉中のたんぱく質「ミオグロビン」の成分として、筋肉での代謝や組織の維持にも深く関わっています。
これ以外にも鉄は体の成長や神経発達、細胞機能、一部のホルモン合成なども担っています。
鉄の1日の摂取推奨量は18~64歳の男性で7.5mg、女性で6.5mg、月経のある女性で10.5~11.0mgとされています[14]。
18歳未満、65歳以上の方の鉄摂取推奨量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
鉄については以下の記事で詳しく解説しています。
鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!
2-10.銅
無調整豆乳、調製豆乳、豆乳飲料のいずれにも銅が豊富に含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりの銅含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 0.12mg |
調製豆乳 | 0.12mg |
豆乳飲料 | 0.07mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
銅は赤血球のヘモグロビンをつくる際に重要な役割を果たす、造血機能に欠かせない栄養素です。
鉄を十分に摂取していても、銅がなければ血液をつくれないため注意が必要です。
また銅はたんぱく質と結合することで多くの酵素の成分となり、幅広い体内の化学反応に関わります。
さらに銅には骨の形成を助けるはたらきもあります。
銅の1日の摂取推奨量は18~64歳の男性で0.9mg、女性で0.7mgとされています[15]。
18歳未満、65歳以上の方の銅の摂取推奨量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
3.豆乳に含まれる栄養素
豆乳には豊富とは呼べないものの、まだ他にもさまざまな栄養素が含まれています。
この章では豆乳に含まれる栄養素をご紹介します。
【豆乳に含まれる主な栄養素とその含有量(100g当たり)】
栄養素 | 豆乳(無調整豆乳) | 調製豆乳 | 豆乳飲料 |
---|---|---|---|
ビタミンK | 4μg | 6μg | 3μg |
ビタミンB1 | 0.03mg | 0.07mg | 0.02mg |
カルシウム | 15mg | 31mg | 20mg |
亜鉛 | 0.3mg | 0.4mg | 0.2mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
日本人の食事摂取基準は以下よりご確認いただけます。
3-1.ビタミンK
無調整豆乳、調製豆乳にはビタミンKが含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのビタミンK含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 4μg |
調製豆乳 | 6μg |
豆乳飲料 | 3μg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
ビタミンKは血液の凝固作用を促進する重要な役割を担っています。
ビタミンKは、血液を凝固させるはたらきを持つ「プロトロンビン」が肝臓で生成される際に補酵素としてはたらきます。
そのため、ビタミンKが不足するとプロトロンビンが減少して出血が止まりにくくなります。
またビタミンKにはカルシウムを骨に吸着させて骨の形成を促したり、動脈の石灰化を防止することで動脈硬化を防いだりといったはたらきがあります。
ビタミンKの1日の摂取目安量は18~64歳の男女で150μgとされています[16]。
18歳未満、65歳以上の方のビタミンKの摂取目安量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
ビタミンKについては以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンKにはどんな効果がある?摂取目安量とおすすめの食材を紹介
3-2.ビタミンB1
無調整豆乳、調製豆乳にはビタミンB1が含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのビタミンB1含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 0.03mg |
調製豆乳 | 0.07mg |
豆乳飲料 | 0.02mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
ビタミンB1は水溶性のビタミンB群の一種で、糖質や脂質、たんぱく質からエネルギーをつくり出す際に重要な役割を担っています。
特にビタミンB1はブドウ糖をエネルギーに変えるという極めて重要なはたらきに関わっています。
このためビタミンB1が欠乏すると糖質を十分にエネルギーに変えられず、疲労やだるさを覚えるようになります。
特に脳や神経はブドウ糖のみをエネルギー源としており、深刻な障害につながる危険があるため注意が必要です。
またビタミンB1には皮膚や粘膜の健康維持を助けるはたらきもあります。
ビタミンB1の1日の摂取推奨量は18~64歳の男性で1.3~1.4mg、女性で1.1mgとされています[17]。
18歳未満、65歳以上の方のビタミンB1の摂取推奨量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
ビタミンB1については以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンB1が豊富に含まれる食べ物は?効果や摂取基準も詳しく解説
3-3.カルシウム
無調整豆乳、調製豆乳、豆乳飲料のいずれにもカルシウムが含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりのカルシウム含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 15mg |
調製豆乳 | 31mg |
豆乳飲料 | 20mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
人間の体内のカルシウムのほとんどは骨や歯の形で存在し、体を支えたり内臓を守ったりといった役割を果たしています。
残りは筋肉や神経、血液中にあり、筋肉の収縮や血液の凝固作用などの重要な役割を担っています。
心臓の筋肉を正常に動かすためにもカルシウムは必須なため、生命維持の根幹に関わる栄養素だといえるでしょう。
カルシウムの1日の摂取推奨量は18~64歳の男性で750~800mg、女性で650mgとされています[18]。
18歳未満、65歳以上の方のカルシウムの摂取推奨量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
カルシウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
カルシウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を解説
3-4.亜鉛
無調整豆乳、調製豆乳には亜鉛が含まれています。
【豆乳の可食部100g当たりの亜鉛含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳(無調整豆乳) | 0.3mg |
調製豆乳 | 0.4mg |
豆乳飲料 | 0.2mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
亜鉛は極めて多くの酵素の必須成分で、酵素の構造を安定させたり反応を活性化させたりするはたらきを持つ栄養素です。
またたんぱく質の合成や遺伝子の発現にも深く関わっており、細胞の成長や分化において中心的な役割を担っています。
このため亜鉛は胎児や乳幼児の成長には特に欠かせない栄養素といえるでしょう。
加えて亜鉛には免疫機能や生殖機能、皮膚や味覚を健康に保つはたらきもあります。
亜鉛の1日の摂取推奨量は18~64歳の男性で11mg、女性で8mgとされています[19]。
亜鉛の18歳未満、65歳以上の方の摂取推奨量については「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご覧ください。
亜鉛については以下の記事で詳しく解説しています。
亜鉛のはたらきと1日の適切な摂取量とは?亜鉛を多く含む食品も紹介
4.豆乳に含まれる成分
「豆乳に含まれる大豆イソフラボンにはどんな効果があるんだろう?」
豆乳には大豆イソフラボンをはじめ、栄養素以外にも健康に良い成分が含まれています。
この章では豆乳に含まれる、健康に寄与する成分をご紹介します。
4-1.大豆イソフラボン
豆乳には大豆イソフラボンが含まれています。
大豆イソフラボンはヒトの体内でエストロゲンの受容体と結合し、エストロゲンと似たはたらきをすることが知られています。
大豆イソフラボンは更年期障害の軽減や2型糖尿病の改善、骨粗しょう症や乳がん、前立腺がんなどに対して予防効果があるとの報告があります。
また抗酸化作用を持つことから、活性酸素が増え過ぎた場合に起こる老化や動脈硬化の進行、免疫機能の低下、がんの発症など多くの悪影響を減らすことが期待できます。
活性酸素はシミやシワ、たるみなどの原因となる場合もあるといわれているため、大豆イソフラボンの積極的な摂取は美肌を維持することにもつながりますよ。
なお、食品安全委員会はかつて大豆イソフラボンについて乳がんの発症や再発のリスクを高める可能性があると指摘しました。
しかしこの指摘は特定保健用食品や大豆イソフラボンを濃縮したサプリメント類のみを対象にしたもので、大豆や豆乳を含む大豆由来食品を対象としたものではありません。
豆乳から大豆イソフラボンを摂取している分には、適量の摂取であればリスクの心配をする必要はないのですね。
大豆イソフラボンについては以下の記事で詳しく解説しています。
大豆イソフラボンとは?はたらきや過剰摂取の影響、摂取目安量を解説
4-2.オリゴ糖
豆乳にはオリゴ糖が含まれています。
オリゴ糖は少糖類とも呼ばれる糖質の一種で、単糖類が2個から10個程度結び付いたものを指します[20]。
オリゴ糖は胃や十二指腸では消化・吸収されにくく、腸内細菌のすむ大腸まで到達して善玉菌の餌となります。
善玉菌は腸内細菌のうち整腸作用などのヒトに有益なはたらきのある菌の総称で、「乳酸菌」や「ビフィズス菌」などが該当します。
善玉菌は乳酸や酢酸などをつくり、腸内を悪玉菌が嫌う酸性の状態に保ちます。
これによって病気や食中毒などでヒトに悪影響をもたらす悪玉菌の繁殖を抑え、食中毒菌や病原菌による感染を予防し、悪玉菌による毒性物質や発がん性物質の産出を抑制します。
また腸内が酸性に保たれている状態ではカルシウムや鉄などのミネラルや一部のビタミンの吸収が促されるというメリットもあります。
さらに善玉菌は腸内でビタミンB群やビタミンKなどの栄養素を産出する他、免疫機能を高めたり血液中のコレステロール濃度を低下させたりする効果もあると報告されています。
豆乳に含まれるオリゴ糖は善玉菌の餌となることで、ヒトの健康を促進してくれるのですね。
[20] 厚生労働省 e-ヘルスネット「オリゴ糖」
4-3.レシチン
豆乳にはレシチンが含まれています。
レシチンはリン脂質の一種で、細胞膜の主成分となるなど体内で多くのはたらきを担っています。
レシチンは血液中の悪玉コレステロールを溶かして血管に沈着するのを防ぐことで、動脈硬化を予防します。
またレシチンには善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを減らすはたらきもあるため、動脈硬化が気になる方には重要な成分といえるでしょう。
悪玉コレステロールが血管にへばりついている状態では血行が悪くなるため、全身の細胞に酸素や栄養が行き渡りにくくなります。
これにより肌の健康が損なわれてしまうため、レシチンの摂取で肌への効果も期待できます。
これ以外でもレシチンは肝臓での脂質の代謝に関わっており、肝臓の細胞を増加させて肝機能を強化するとの報告もあります。
肝機能が強化され、脂質をエネルギーとして燃焼させやすくなると体脂肪が減少しやすくなり、肥満の予防や改善が期待できます。
このはたらきは脂肪肝や肝硬変のリスクを減らすことにもつながります。
さらに、レシチンに含まれているコリンという成分は脳内神経伝達物質の原料となります。
このため、レシチンを摂取することで記憶力の向上やADHD(注意欠如・多動症)の症状改善、アルツハイマー病や認知症の予防といった幅広い効果が期待できるのです。
4-4.サポニン
豆乳にはサポニンが含まれています。
サポニンは植物の根、葉、茎などに広く含まれている物質で、体内でさまざまなはたらきをするといわれています。
サポニンには強い抗酸化作用があるとされ、大豆イソフラボンと同様に増え過ぎた活性酸素のもたらす老化や動脈硬化の進行、免疫機能の低下、がんの発症といった悪影響を軽減することが期待できます。
またサポニンは肝機能を低下させたり肝臓の炎症を引き起こしたりする過酸化脂質の生成を抑制することで肝機能をサポートするとされています。
さらにサポニンには免疫細胞の一つである「ナチュラルキラー細胞」を活性化する効果があるとされるため、ウイルスや細菌などの病原体から体を守る「免疫機能」の強化も期待できるでしょう。
サポニンには肥満予防の効果も報告されています。
サポニンはブドウ糖と脂肪酸の合体を抑制することによって、余分な脂肪が蓄積するのを防いでくれるといわれています。
これに加えてサポニンは脂肪の燃焼を促すインスリンやアディポネクチンを活性化させる効果もあるとされています。
5.豆乳と牛乳の栄養素の比較
「豆乳と牛乳の栄養素はどこが違うんだろう?」
「健康のためには豆乳と牛乳のどちらが良いのかな……」
いずれも健康に良いといわれる豆乳と牛乳のどちらを選ぶのか、迷ってしまいますよね。
この章では豆乳と牛乳の含むエネルギー産生栄養素と、特に違いの大きな栄養素について比べてみます。
【豆乳と牛乳の栄養素の可食部100g当たりの含有量比較】
栄養素名 | 無調整豆乳 | 調製豆乳 | 豆乳飲料 | 牛乳 |
---|---|---|---|---|
エネルギー | 43kcal | 61kcal | 57kcal | 61kcal |
たんぱく質 | 3.6g | 3.2g | 2.2g | 3.3g |
脂質 | 2.8g | 3.6g | 2.2g | 3.8g |
ビタミンA | - | - | - | 38μg |
ビタミンB2 | 0.02mg | 0.02mg | 0.02mg | 0.15mg |
ビタミンB12 | - | - | - | 0.3μg |
葉酸 | 28μg | 31μg | 15μg | 5μg |
カルシウム | 15mg | 31mg | 20mg | 110mg |
鉄 | 1.2mg | 1.2mg | 0.3mg | - |
銅 | 0.12mg | 0.12mg | 0.07mg | 0.01mg |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成
無調整豆乳のカロリーは牛乳の4分の3程度ですが、調製豆乳や豆乳飲料は牛乳と同水準のカロリーを含んでいます。
たんぱく質は無調整豆乳の方が若干多めですが、牛乳とそこまで大きな差はありません。
一方で、無調整豆乳の脂質含有量は牛乳の半分程度となっています。
このためダイエットを考えている方は豆乳を選んだ方が良さそうです。
他の栄養素も見てみましょう。
牛乳からはビタミンAやビタミンB2、ビタミンB12など豆乳では摂りにくい栄養素を摂れますが、葉酸や鉄、銅などは豆乳の方が多く含んでいます。
またカルシウムは圧倒的に牛乳の方が多く含んでいます。
どちらも重要な栄養素を豊富に含んでいるため、片方だけを選ぶのではなく牛乳と豆乳の両方を食生活に取り入れるようにしたいですね。
6.豆乳の栄養についてのまとめ
豆乳は大豆からたんぱく質などの栄養素や成分を抽出した飲料で、製法や成分の濃度などによって無調整豆乳、調製豆乳、豆乳飲料の3種類に分けられます。
豆乳は取り立てて低カロリーではありませんが、肥満を予防してくれる栄養素や成分を複数含んでいます。
豆乳はたんぱく質や多くのビタミン、ミネラルを豊富に含んでおり、さまざまな面で健康をサポートしてくれます。
また豆乳には更年期障害やがんなどを予防する大豆イソフラボンや腸内環境を整えるオリゴ糖、肥満の解消に効果が期待できるレシチン、サポニンなどの成分も含んでいます。
牛乳よりも低カロリーで鉄を多く含みますが、牛乳はカルシウムやビタミンAなどを多く含むため、両方を上手に食生活に取り入れると良いでしょう。