「糖質の摂り過ぎは体に良くないって聞くけど、1日にどれくらい必要なのかな?」
「ダイエットのためなら、少しくらい減らしても大丈夫だよね……?」
糖質の摂取量についてこのような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
糖質は摂り過ぎによる影響が注目されがちですが、不足しても健康に悪影響があるので注意が必要です。
この記事では、1日に必要な糖質の摂取量、摂り過ぎや不足によるリスクについて詳しく解説します。
1.糖質とは?
糖質とは「炭水化物」の一部で、ヒトの体のエネルギーになるもののことを指します。
炭水化物はご飯やパンなどの主食に多く含まれる栄養素で、体のエネルギーになる糖質と、ヒトの消化酵素では分解できない食物繊維に大別されます。
食べ物や飲み物に含まれている糖質は、消化酵素によってブドウ糖などに分解され、体内に吸収されます。
ブドウ糖は脳や神経などさまざまな組織の重要なエネルギー源となっており、糖質はその供給源として重要な役割を果たしているのです。
糖質は私たちが活動する上で欠かせないものなのですね。
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2.糖質は一日にどれくらい摂取するべき?
実は糖質をどれくらい摂取するべきかという明確な量は定められていません。
厚生労働省は、糖質を含む炭水化物から摂取するカロリーを、1日の総摂取カロリーの50〜65%を目標量としています [1]。
1日に必要なカロリーはその人の体格や活動量などによって異なりますが、比較的活動量の少ない場合、成人男性は2,000〜2,400kcal、成人女性は1,400〜2,000kcalが目安です[2]。
上記の例で炭水化物からの摂取カロリーを50%にしたい場合、女性は700〜1,000kcal、男性は1,000〜1,200kcalのカロリーを炭水化物から摂取すべきだということになりますね。
なお炭水化物の摂取量について上限量や最低限必要な量は設定されておらず、50〜65%という数値は総摂取カロリーのうちたんぱく質と脂質から摂る必要のある分を除いた残りとして設定されています。
糖質は重要なエネルギー源のため、他の栄養素とのバランスを考慮して適切な量を摂取するようにしましょう。
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[2] 農林水産省 実践食育ナビ「食事バランスガイド早分かり」
3.糖質を摂り過ぎるとどんなリスクがある?
糖質の摂り過ぎは肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めると考えられています。
糖質はエネルギー源として必要な栄養素ですが、摂り過ぎるとエネルギーとして消費されずに体に脂肪として蓄積されてしまいます。
また一度に糖質をたくさん摂ると血糖値が急上昇し、それを下げるためにインスリンが多く分泌されます。
インスリンは血糖値を下げるはたらきを持つ唯一のホルモンで、細胞が血液中のブドウ糖を取り込んでエネルギーに変えるのを促す作用があります。
加えて余分なブドウ糖を脂肪に変えるのを促す作用もあるため、多量に糖質を摂ることでインスリンの分泌量が増えると太りやすくなってしまうのです。
さらに体に脂肪が蓄積されるとインスリンのはたらきが弱まるため、肥満になるとますます多くのインスリンが必要になります。
インスリンを多量に分泌する状態が続くとインスリンを分泌する膵臓(すいぞう)に負担がかかり、やがて必要な量を分泌することもできなくなります。
インスリンの量が足りなくなると、血糖値を下げることができず高血糖と呼ばれる状態が続き、糖尿病の発症につながるのです。
また肥満は糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症、心臓・血管の病気といった生活習慣病を発症するリスクを高めるといわれているため注意が必要です。
1日の摂取量として糖質を摂り過ぎないことはもちろん、一度にたくさん食べないように気をつけた方が良さそうですね。
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4.糖質が不足するとどんなリスクがある?
「摂り過ぎると健康に良くないなら、控えめにした方が良いのかな……」
糖質の過剰摂取が体に良くないと聞くと、摂取量を減らした方が良いのではないかと不安になってしまいますよね。
しかし糖質は不足しても健康に悪い影響を与える可能性があるため注意が必要です。
糖質の不足によってどのようなリスクがあるのが、詳しくご説明しましょう。
4-1.疲労感が生じたり集中力が低下したりする
糖質の摂取量が減ると、エネルギーが不足して疲れやすくなったり集中力が低くなったりすることがあります。
脂質やたんぱく質といったエネルギー源となる他の栄養素と比べ、糖質は摂取してからすぐにエネルギーに変換できるという特徴があります。
しかし、糖質として体内に蓄積しておける量は少なくすぐに消費されてしまうので、食事から不足した分を長時間補うことはできません。
そのため、適度な頻度で食べ物から糖質を摂取することが必要です。
またブドウ糖を主なエネルギー源としている脳は時間帯や活動中であるかどうかにかかわらず常にはたらいているため、常時エネルギーを必要とします。
そのため、糖質が不足すると脳に必要なエネルギーが足りなくなって、集中力が下がったり注意力散漫になったりしてしまうのです。
4-2.死亡リスクが上昇する
ある調査の結果、低炭水化物食(糖質を制限した食事)は短期的には体重減少などに有効といわれているものの、長期的な効果はなく、かえって死亡リスクが上昇することが示唆されています[3]。
またアメリカで行われた炭水化物摂取量と総死亡率の関連についての調査では、炭水化物から摂取するカロリーが総カロリーの50〜55%だった人たちが最も総死亡率が低く、平均期待余命が最も長いという報告があります[4]。
この数値は、厚生労働省が「食事摂取基準」で目標として設定している50〜65%と近い値です。
健康のためには、適切な量の糖質を摂取することが必要であるといえるでしょう。
[3] Hiroshi Noto,Atsushi Goto,Tetsuro Tsujimoto,Mitsuhiko Noda「 Low-Carbohydrate Diets and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies 」(『PLOS ONE』January 25, 2013)
[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
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5.糖質の摂取についてのまとめ
糖質は私たちが活動するために必要なエネルギー源となる重要な栄養素です。
摂り過ぎは肥満を引き起こす原因になりますが、減らし過ぎても健康に悪影響を及ぼすリスクがあります。
1日に必要な糖質の量は明確には定められていませんが、総摂取カロリーのうち50〜65%を炭水化物から摂ることが目標とされています。
糖質の摂り過ぎや過度な制限には注意して、適切な量を摂取するよう心掛けましょう。