動脈硬化を予防する食事とは?調理のコツやおすすめの食材を解説!

動脈硬化を予防する食事とは?調理のコツやおすすめの食材を解説!

2023年05月17日

2023年08月08日

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「動脈硬化を予防するためにはどんな食事を摂れば良いんだろう?」

と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

動脈硬化の発症にはさまざまな因子が関わっており、生活習慣の乱れに大きな影響を受けているといわれています。

食生活も発症に関わる重要な要素であるといえるでしょう。

反対に食生活を改善することで、動脈硬化の要因となる生活習慣病の予防につながるともいえます。

しかし、食生活を改善したいと思っていてもどのような食べ物を摂れば良いのかというのは難しい問題ですよね。

この記事では、動脈硬化の予防に効果が期待できる栄養素や、摂取を控えたい栄養素、食生活において気を付けるべきポイントをご紹介するので、参考にしてみてくださいね。

1.動脈硬化とは

健康診断の結果票

動脈硬化は「動脈の血管の壁が厚く硬くなってしまった状態」のことです。

動脈は血液を心臓から全身の器官に届ける重要なはたらきをしています。

そのため健康な血管は血液が通るときにかかる圧力に耐えられるよう丈夫にできており、弾力性に富んでいます。

しかし血管が高血圧や喫煙、肥満、加齢などの影響を受けると知らず知らずのうちにダメージを負ってしまいます

ダメージを受け続けた血管は次第に本来持つ弾力性を失い、もろくなってしまうのです。

このように動脈硬化が進行すると、脆くなった血管が破れたり詰まったりしてさまざまな病気を引き起こす危険性があります。

ここでは動脈硬化の種類や原因、動脈硬化が引き起こす病気について解説します。

1-1.動脈硬化の種類

動脈硬化には「アテローム動脈硬化」、「細動脈硬化」、「メンケベルグ型硬化」の三つの種類があります。

メモ
アテローム動脈硬化は「粥状(じゅくじょう)動脈硬化」とも呼ばれます。またメンケベルグ型硬化には「中膜硬化」という別称があります。

アテローム動脈硬化は血液中のLDLコレステロールが血管壁にたまることで起こります

LDLコレステロールとは
ヒトの体内にある脂質の一種です。体内に取り込まれたコレステロールはリポタンパク質という粒子に変化して血液内を流れています。LDLコレステロールはその一種で、コレステロールを全身へ運ぶはたらきをします。増え過ぎると動脈硬化を進行させるため悪玉コレステロールとも呼ばれています。

血管の壁に蓄積したLDLコレステロールは、プラークと呼ばれるかゆ状の塊のようなものとなります。

このようにプラークができると血液の流れを悪くしたり、破れて血栓になると血管の詰まりを招いたりします。

アテローム動脈硬化は心臓や脳などの太く重要な役割を持つ動脈に起こるため、命に関わる病気を引き起こしやすく、動脈硬化のなかでも特に注意が必要です。

細動脈硬化は、脳や腎臓にある細い動脈に起こる動脈硬化の一つです。

細動脈硬化は主に加齢や高血圧が原因で起こるといわれています。

高血圧で血管に負担がかかると血管は厚く硬くなり、最悪の場合、破裂して出血することもあります。

そのため細動脈硬化を予防するには、血圧を正常に保つことが重要です。

メンケベルグ型硬化は動脈の中膜にカルシウムがたまって硬くなることで起こる動脈硬化のことをいいます。

動脈は内膜、中膜、外膜の3層で構成されています。

中膜は主に平滑筋や弾性繊維などでできており、血管が縮んだり広がったりするために重要な役割を果たしています。

しかし喫煙やストレス、高血圧などの刺激によって中膜にカルシウムがたまってしまうと、血管がもろく破れやすくなるのです。

中膜硬化は体の中で一番太い大動脈や、足の動脈に起こりやすいとされています。

1-2.動脈硬化の原因

動脈硬化の原因は、脂質異常症、肥満、高血圧、高血糖、喫煙、運動不足など多岐にわたります。

そのなかでも食生活で改善できるものには主に脂質異常症、肥満、高血圧、高血糖が挙げられます。

それぞれがどのように動脈硬化を進行させるのか解説します。

1-2-1.脂質異常症

脂質異常症とは、血液中の脂質の濃度が高過ぎたり低過ぎたりする状態を指します。

血液中の脂質にはLDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪などがあり、いずれも血中濃度が正常範囲から外れた場合は動脈硬化を進行させるといわれています。

動脈硬化を進行させる脂質異常症には、LDLコレステロールや中性脂肪が高い場合とHDLコレステロールが低い場合があります。

中性脂肪値は、食べ過ぎや過度な飲酒、糖質や脂質の摂り過ぎなどが原因で高くなります。

中性脂肪値が高くなるとその影響を受けてLDLコレステロール値も上昇してしまい、動脈硬化を進行させます。

特にLDLコレステロール値が高い場合は、アテローム動脈硬化を引き起こす強力な危険因子となるため注意が必要です。

また善玉コレステロールといわれるHDLコレステロールは、血中濃度が低下することで動脈硬化を進行させます。

HDLコレステロールは、LDLコレステロールとは反対に不要なコレステロールを回収するはたらきをしています。

そのため、HDLコレステロール値が低いと余分なコレステロールが取り除かれず、血中にとどまって動脈硬化を引き起こしやすくなってしまうのです。

このように脂質異常症は動脈硬化の危険因子の一つであるため、脂質の値を正常に保つための食生活を心掛けていきたいですね。

1-2-2.肥満

メタボ気味なお腹に手をあてる男性

肥満は摂取カロリーが消費カロリーを上回ることで、体脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。

肥満には、皮下組織に脂肪が蓄積する「皮下脂肪型肥満」と腸の周りに脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」があります。

特に内臓脂肪型肥満はあらゆる生活習慣病の原因とされており、動脈硬化の危険因子です。

内臓脂肪が蓄積すると糖や脂質の「代謝」に異常を来してしまうとされています。

代謝とは
体内で行われる化学反応のことをいいます。生命維持に必要な酸素や栄養素を外から取り込んでエネルギーとして利用したり、老廃物として排出したりする一連の流れを指します。

つまり、内臓脂肪の蓄積によって代謝が悪くなると、脂質異常症や高血圧、高血糖がさらに進行し動脈硬化を生じる危険性が高くなってしまうのです。

内臓脂肪の蓄積に加え、脂質や血圧、血糖の三つの項目のうち二つ以上が基準値から外れた状態のことを「メタボリックシンドローム」といいます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

メタボリックシンドロームとは?診断基準や原因、改善のポイント

このように肥満は動脈硬化を含む生活習慣病の原因にもなるので、食生活を整えて摂取カロリーをコントロールし、適正体重を維持することが大切です。

1-2-3.高血圧

血圧計

高血圧の状態が続くと血管に大きな負担がかかり動脈硬化が進行します。

高血圧とは病院で測定した収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合か、家庭で測定した収縮期血圧が135mmHg以上、拡張期血圧が85mmHg以上の状態です[1]。

高血圧の基準や定義については、詳しくは以下の記事でご説明しています。

高血圧とは?基準値や健康上のリスク、改善のポイントを徹底解説

血圧が高い状態が続くことによって血管は常に張り詰めた状態となり、次第に弾力性が失われ厚く硬くなってしまいます。

なお、日本人の高血圧の一番の原因は塩分の過剰摂取だといわれています。

体内に塩分が多く取り込まれると、体は塩分濃度を薄めようとし、水分をため込みます。

すると体内を循環する血液量自体が多くなってしまい、血管内にかかる圧が高まって高血圧の状態となります。

「健康的な食事だといわれる日本食も、塩分過多の心配があるの?」

と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

実は、日本人の食生活には塩分が多く使われる傾向にあります。

そのため高血圧やそれに伴う動脈硬化を予防していくためには、減塩を意識して食生活を改善することが重要だとされています。

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」

1-2-4.高血糖

高血糖の状態も動脈硬化を進行させます。

高血糖とは血液中のブドウ糖が高い状態のことです。

食事に含まれる糖質は体内でブドウ糖などの小さな糖に分解され、小腸から吸収されます。

吸収されたブドウ糖は血液中では血糖として存在し、インスリンというホルモンによって細胞内に取り込まれ、生命活動に必要なエネルギーとして利用されます。

またインスリンはエネルギーとして使い切れなかった血糖を脂肪などにつくり替え体内に蓄えるはたらきを促進する作用も持っており、これにより血糖値をコントロールしています。

そのため通常であれば血糖値は食後に高くなり、インスリンが分泌されると低下します。

しかし、食べ過ぎたり甘いものを過剰摂取したりすることを続けているとインスリンの効きが悪くなったり、インスリンの分泌量が低下したりするために血中に糖がとどまり、血糖値が正常に下がらなくなってしまいます。

血糖値が高い状態が続くと血管は傷つき、動脈硬化を進行させます

このように高血糖も動脈硬化を招く要因となるため、過食や甘いものの食べ過ぎには注意していきたいですね。

1-3.動脈硬化が招く主な病気

胸元をおさえる高齢女性

動脈硬化には自覚できる症状はほとんどありません。

しかし、放置していると血管が詰まったり破れたりする重篤な病気を引き起こす可能性が高まります。

動脈硬化が招く病気には主に、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などがあります。

狭心症とは、心筋と呼ばれる心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭まってしまう病気です。

心臓は心筋のはたらきによって常にポンプのように動いており、全身に血液を送っています。

しかし冠状動脈の血流が悪くなると心筋に十分な酸素や栄養が送られず、狭心症を発症してしまいます。

そして狭心症が進行し、血管が完全に詰まってしまうと心筋梗塞を引き起こします。

狭心症や心筋梗塞を発症すると、締め付けられるような胸の痛みや動悸、息切れなどの症状が出現するといわれています。

また心筋梗塞では心筋に酸素や栄養素が供給されなくなるため心筋の壊死(えし)が起こり、全身に血液を送ることができなくなってしまいます。

心筋梗塞は突然死の大きな原因としても知られています。

同様に脳の血管が詰まると脳梗塞、もろくなった血管が破れると脳出血を発症します。

これらはいずれも、意識がなくなってしまったり半身まひなどが出現したり、死亡したりすることのある病気です。

このように、動脈硬化を放置していると生命を脅かす危険があるのですね。

動脈硬化を予防するためには、日々の食事の内容に気を付けましょう。

2.動脈硬化を予防するために食事で気を付けたいポイント

「動脈硬化を予防するためには、どんな食事を摂れば良いんだろう?」

日頃の食生活に気を付けることで動脈硬化を予防できたらうれしいですよね。

動脈硬化を予防するためには暴飲暴食を避け、自分に合った適正カロリーの範囲内で食事を摂ることが重要です。

また積極的に摂りたい栄養素、反対に摂取量を抑えたい栄養素もあります。

ここでは以下のポイントに沿ってカロリーの計算方法や注意点、調理の工夫も詳しく解説していきますね。

動脈硬化予防のための食事のポイント

ポイント1 適正カロリーを守る

食事をしているところ

消費されるカロリー以上のカロリーを暴飲暴食などにより摂取すると、肥満の原因になります。

「自分が摂るべきカロリーってどのぐらいなの?」

と疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

自分に合った適正カロリーは、「標準体重」や「身体活動レベル」に基づいて計算します。

標準体重とはBMIが22になる体重のことをいい、[身長(m)の2乗]×22で求められます[2]。

BMIとは
肥満度を判定する基準のことです。[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で求められます。肥満度の判定基準は国によって異なりますが、国内では25以上の場合に肥満とされます[3]。

標準体重は統計上、肥満との関連が強い糖尿病や高血圧、脂質異常症などの病気に最もなりにくい体重であるとされています。

例えば身長170cmの男性の場合であれば、標準体重は1.7(m)×1.7(m)×22=63.58kgです。

次に、身体活動レベルは以下の表を参照し自分の生活に該当するものを選択します。

【身体活動レベルの基準】

レベルI 生活の大部分を座って過ごし、あまり体を動かす機会がない場合
レベルⅡ 座って過ごすことが多いが、職場内での移動や立った状態での作業・接客などを行う場合、あるいは通勤・買い物・家事、軽いスポーツなどのいずれかを行う場合
レベルⅢ 移動や立った状態での作業が多い仕事に従事している場合、あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣を持っている場合

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

ご自身の標準体重と身体活動レベルが分かったら、以下の表から体重1kg当たりの推定エネルギー必要量を選び、標準体重と掛け合わせましょう。

【体重1kg当たりの推定エネルギー必要量】

性別 男性 女性
身体活動レベル 低い(Ⅰ) 普通(Ⅱ) 高い(Ⅲ) 低い(Ⅰ) 普通(Ⅱ) 高い(Ⅲ)
18歳〜29歳 35.5 41.5 47.4 33.2 38.7 44.2
30歳〜49歳 33.7 39.3 44.9 32.9 38.4 43.9
50歳〜64歳 32.7 38.2 43.6 31.1 36.2 41.4
65歳〜74歳 31.3 36.7 42.1 30.0 35.2 40.4
75歳以上 30.1 35.5 - 29.0 34.2 -

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

身長170cmで標準体重が63.58kgの男性が年齢30歳で身体活動レベルⅡに該当する場合、1日当たりの適正な摂取カロリーは63.58×39.3=約2,499kcalとなります。

肥満を予防・改善するためには、ご自身に必要なカロリーを意識して食事を摂る必要があります。

特に飲酒や間食はカロリーオーバーの原因になりやすいので注意しておきましょう。

[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」

[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「BMI」

ポイント2 飽和脂肪酸を控える

焼く前の肉と野菜

飽和脂肪酸を控えることも動脈硬化を予防するポイントの一つです。

飽和脂肪酸は脂質の構成要素である脂肪酸の一種で、摂り過ぎると中性脂肪やLDLコレステロールを増加させ、動脈硬化や肥満を引き起こします

メモ
脂質(脂肪)は炭水化物(糖質)やたんぱく質と並んでヒトの体のエネルギー源となる栄養素です。体内では細胞膜やホルモンなどの材料としても利用され水分の次に多く含まれている物質ですが、1g当たり約9kcalとハイカロリーであるため[4]、摂り過ぎると肥満や生活習慣病の原因となります。

飽和脂肪酸は、肉類の脂身や鶏肉の皮、バター、乳脂肪、ココナッツミルクなどに多く含まれています。

肉類を食べる際には、赤身のものを選んだり、脂身を取り除いたりするように心掛けましょう。

厚生労働省は成人に対し、脂質から摂るカロリーを1日の摂取カロリーの20〜30%に抑えるよう推奨しています[4]。

また飽和脂肪酸から摂るカロリーを1日の摂取カロリーの7%にするという目標量を設定しています[4]。

コンビニなどで食べ物を選ぶ際には、脂身の少ないサラダチキンを活用するのもおすすめです。

また牛乳や乳製品は低脂肪のものを選ぶことも効果的です。

食べ物に含まれる脂質の種類については以下の記事で詳しくご説明しています。

脂質の少ない食べ物とは?脂質の摂取や吸収を抑えるための工夫!

[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

ポイント3 多価不飽和脂肪酸を摂る

大根おろしを添えた焼き魚

不飽和脂肪酸を積極的に摂ることも動脈硬化予防のポイントだといえるでしょう。

不飽和脂肪酸は脂質の一種ですが、血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させるはたらきをします。

不飽和脂肪酸は植物性食品や魚に多く含まれ、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。

また多価不飽和脂肪酸はさらにn-3系とn-6系に分けられます。

なかでも意識的に摂取しておきたいのは、「EPA」や「DHA」といったn-3系多価不飽和脂肪酸を多く含む脂の乗った青魚です。

多価不飽和脂肪酸は体内でつくることができないため食事から摂取しなければならない「必須脂肪酸」に該当します。

しかし、魚料理は下処理など手間がかかることも多いため、調理に抵抗がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その際にはさばやさんまの缶詰などを活用することがおすすめです。

缶詰を選ぶ際には食塩量が抑えられている水煮などを選ぶようにし、手軽に青魚を取り入れた食事を心掛けてみてくださいね。

ポイント4 コレステロールを控える

パックの卵

動脈硬化を予防するためには食べ物に含まれるコレステロールを控えることも重要です。

食事中のコレステロールは飽和脂肪酸に比べると影響は少ないものの、摂り過ぎると動脈硬化の進行や心疾患・脳梗塞の原因となります。

コレステロールは鶏卵や魚卵などの卵類、レバーやモツなどの内臓類などに多く含まれています

LDLコレステロールが高い傾向にある方は、飽和脂肪酸と共にコレステロールを制限することでLDLコレステロール値の改善が見込めます。

卵は卵料理だけでなく、茶わん蒸しや揚げ物の衣、ハンバーグのつなぎなどさまざまな料理に含まれているので摂り過ぎに注意するようにしましょう。

コレステロール値を下げたいときの食事のポイントについては以下の記事で詳しくご紹介しています。

コレステロール値を下げるための食べ物の選び方と調理のポイント

ポイント5 塩分を控える

木のスプーンいっぱいの塩

塩分を控えることは高血圧やそれに伴う動脈硬化の予防・改善に有効です。

食塩の摂り過ぎが高血圧を招くのは、食塩の主成分であるミネラルの一種、「ナトリウム」が原因です。

メモ
食塩の主成分は塩素とナトリウムが結合した「塩化ナトリウム」です。ナトリウムは主にこの塩化ナトリウムとして摂取されます。

ナトリウムは体に必要なミネラルの一種ですが、摂り過ぎると上昇した血中濃度を下げようと体が血液中の水分を増やすため、血液量の増加を招き、血液の血管壁を押す力を強めるため血圧の上昇を招きます。

このため高血圧の予防・改善には減塩を行い、ナトリウムの摂取量を抑えることが重視されているのです。

世界保健機関(WHO)のガイドラインは、成人の1日当たりのナトリウム摂取量を食塩相当量で5g未満に抑えることを推奨しています[5]。

食塩相当量とは
食品に含まれるナトリウムの量を食塩(塩化ナトリウム)の量に換算したもので、主にグラム(g)で表されます。ナトリウム(g)×2.54で求められます[5]。ただしナトリウムは食塩以外の形でも食品に含まれるため、実際の食塩含有量と食塩相当量は必ずしもイコールではありません。

しかし日本人のナトリウムの平均摂取量(食塩相当量)は1日当たり20歳以上の男性で10.9g、同じく女性で9.3gとなっており、この目標値を大きく上回る状況となっています[6]。

そのため実現可能性を考慮し、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日に摂取するナトリウム(食塩相当量)を成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満に抑えることが推奨されています[5]。

また高血圧の予防・改善のためには1日の食塩摂取量を6g未満にすることが望ましいとされています[5]。

かなり厳しく減塩に取り組むことが必要だと考えられるのですね。

「薄味だと食事がおいしくなくなるんじゃないの?」

と不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。

減塩食をおいしく食べるためには、酢や柑橘(かんきつ)類の酸味、香辛料、香味野菜を取り入れる方法があります。

例えば魚料理にすだちやレモンを添えたり、納豆にみょうがやねぎを加えたりすることで調味料を減らすことができますよ。

また市販の顆粒(かりゅう)だしなどには塩分が多く含まれているので、汁物を作る際には昆布やかつお節でだしを取ったり、具だくさんにしたりすることで満足感を得られます。

その他にも汁物やラーメンなどを食べるときに汁を飲む量を控えめにすることも減塩のポイントといえるでしょう。

このように外食するときでも汁を残したり、家で調理する際には自分でだしを取って作ったり、できることから少しずつ減塩に取り組んでいきましょうね。

[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

[6] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」

ポイント6 糖分を控える

いろいろな砂糖

糖分を控えることも動脈硬化予防の重要なポイントだと考えられます。

糖質を摂り過ぎると中性脂肪として蓄えられて肥満となったり、インスリンのはたらきを悪くして高血糖を招いたりする恐れがあります。

糖質を多く含むものには主に主食や菓子類、甘いジュースや果物類などがあります。

ご飯の大盛りやお代わりをやめたり、甘いジュースを飲む習慣のある方は水やお茶など無糖の飲み物に変えたりするように心掛けていきましょう。

メモ
糖質はヒトの体のエネルギーとなる栄養素の一種です。

エネルギー源となる栄養素「エネルギー産生栄養素」には炭水化物・たんぱく質・脂質の3種類があり、炭水化物はエネルギー源となる糖質とヒトの消化酵素では消化できない食物繊維に分けられます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

糖質と炭水化物の関係は?両者の違いやはたらきを分かりやすく解説

また食後のデザートや間食には、菓子類よりもいちごや桃、グレープフルーツなどの甘みの少ない果物を選ぶことも有効です。

ただしドライフルーツや果物の缶詰は手軽に食べられる反面、糖質が多いので注意が必要です。

厚生労働省は炭水化物から摂取するカロリーを1日の摂取カロリーの50〜65%とするよう推奨しています[7]。

糖質の多い食生活を送りがちな方は意識してみてくださいね。

メモ
炭水化物(糖質)のカロリーは1g当たり約4kcalです[7]。一方、食物繊維のカロリーは1g当たり0〜2kcalであり、炭水化物に占める食物繊維の割合も少ないため、炭水化物全体に対する摂取目標量が設定されています[7]。

[7] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

ポイント7 食物繊維を積極的に摂る

緑黄色野菜

食物繊維を積極的に摂ることも動脈硬化の予防には有効だと考えられます。

食物繊維は食べ物に含まれるヒトの消化酵素では消化できない物質です。

便秘を防ぐ効果があることをご存じの方も多くいらっしゃるかもしれませんね。

食物繊維にはさらに、ナトリウムや脂質、糖質を吸着して体外に排出するはたらきがあります。

そのためこれらが原因となって起こる高血圧や肥満、脂質異常症、高血糖などの予防・改善効果が期待されています。

さまざまな効果のある食物繊維ですが、現代の日本人は食物繊維不足の傾向にあるといわれています。

理想的な食物繊維の摂取量は1日当たり24g以上といわれていますが[8]、日本人の1日当たりの平均食物繊維摂取量は20歳以上の男性で19.9g、同じく女性で18.0gです[9]。

このため厚生労働省は実現可能性を考慮し、成人男性に対し20〜21g以上、成人女性に対し17〜18g以上という目標量を設定しています[8]。

少しでも多く食物繊維を摂るよう意識することが重要なのですね。

食物繊維は野菜類、豆類、きのこ類、海藻類、果実類などに多く含まれています

また玄米ご飯や麦ご飯、胚芽米ご飯、そば、全粒粉パンといった主食からも摂取できます。

食事の際には主食を白米から玄米に、白パンから全粒粉パンに置き換えるだけでも、食物繊維を効率良く摂取することができますよ。

また、調理に時間をかけられない場合にはおかずの1品として納豆を追加したり、冷凍の野菜を使用したりするのも有効です。

サラダを食べる際には海藻や水煮の大豆を加えることで、簡単にアレンジすることもできます。

食物繊維を摂ることで動脈硬化の原因となるさまざまな生活習慣病を予防できるので、自分に合った食品で摂取量を増やしてくださいね。

[8] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

[9] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」

ポイント8 アルコールを制限する

お酒で乾杯しているところ

アルコールの過剰摂取は中性脂肪を上昇させ肥満や高血圧を引き起こします。

動脈硬化予防のためには、節酒も心掛けましょう

アルコールによる心身への影響は飲んだお酒の量ではなく、「純アルコール量」によって異なります。

純アルコール量とは
酒に含まれるアルコールの量のことで、通常はグラム(g)で表されます。酒の量(mL)×アルコール度数(%)/100×0.8(アルコールの比重)という式で求めることができます[10]。

日本動脈硬化学会は1日当たりの純アルコール摂取量を25g以下とすることを推奨しています[11]。

また厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」を1日平均純アルコールで約20g程度としています[12]。

代表的なお酒の純アルコール20gに相当する量は以下のようになります。

純アルコール20g相当のお酒の種類と量

公益社団法人 アルコール健康医学協会「お酒と健康 飲酒量の基礎知識」をもとに執筆者作成

ただしアルコールの分解能力は人によって異なり、一般的に女性は男性よりもお酒に弱い傾向にあります。

また高齢の方も20gよりも少ない量が適当であるとされています[12]。

お酒はご自分の体質や状況に合わせてほどほどに楽しみましょう

[10] 厚生労働省 e-ヘルスネット「飲酒量の単位」

[11] 一般社団法人 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」

[12] 厚生労働省「健康日本21」

3.動脈硬化を予防する食事以外のポイント

「動脈硬化を予防するために、食事以外に気を付けた方が良いことはあるのかな?」

動脈硬化は、食事だけでなく生活習慣全体を見直すことでより効果的に予防できるものと考えられます。

食生活の改善の他に取り組むべきことには日々の運動や禁煙などが挙げられます。

ここでは、運動の種類や目安、禁煙のコツもご紹介しますね。

動脈硬化を予防する食事以外のポイント

ポイント1 運動習慣を身に付ける

森林浴する女性

習慣的な運動は脂質異常症や高血圧、肥満の予防・改善に効果的です。

運動をすると、血管の健康を維持・改善して弾力性やしなやかさを保つことができるため高血圧が予防できるといわれています。

また中性脂肪値を低下させHDLコレステロール値を上昇させることから、LDLコレステロール値も改善が見込め、脂質異常症や肥満症に良い影響を与えます。

「動脈硬化を予防するためにはどんな運動をしたら良いんだろう?」

と疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

運動の種類は、体に負担がかかりにくい有酸素運動が効果的だといわれています。

有酸素運動とは
筋肉を動かすエネルギーとして血糖や脂肪と共に酸素を消費する運動のことです。ウォーキングやジョギング、サイクリング、エアロビクスダンス、水泳など筋肉への負荷が比較的小さい運動が該当します。

運動をすることによって血圧は一時的に上昇しますが、有酸素運動は筋トレなどの運動よりも血圧を緩やかに上昇させ十分な運動の効果を得ることができます。

しかし、これまで体を動かす機会がなく、急に運動を始めるのに抵抗があるという方もいらっしゃるかもしれませんね。

そのような場合は通勤の際に歩く距離を伸ばす、階段を積極的に使う、洗車や掃除などの家事を行う、子どもと遊ぶ、自転車で買い物に行くといった日常生活を通じて身体活動量を増やすことから始めても構いません。

身体活動量を増やすポイント

少しずつ運動習慣を身に付けていきましょう。

注意!
ただし、狭心症など心臓や血管に持病のある方が運動を行うと心筋梗塞などの発症につながる可能性があります。事前に運動しても問題ないことを医師に確認するようにしてください。

ポイント2 禁煙を行う

禁煙のマーク

禁煙を行うことも動脈硬化を予防する上では重要です。

たばこの煙には複数の有害物質が含まれており、動脈硬化を進行させることが分かっています。

喫煙すると総コレステロール値とLDLコレステロール値が上昇し、HDLコレステロール値が低下してしまうのです。

またたばこは血圧を上げることも知られています。

健康のためには禁煙した方が良いと分かっていても、スムーズに禁煙できない場合もあるかもしれませんね。

たばこに含まれるニコチンには依存性があり、たばこを吸いたくなったり、目の前のことに集中できなくなったりといった症状を引き起こすため禁煙は難しくなってしまいます。

ご自分の意思だけで禁煙するのが難しいという場合は、ニコチンパッチなどの禁煙グッズを活用したり、禁煙外来を受診したりすることも有効です。

禁煙グッズを利用することによって体に入るニコチンの量を一定に保てるため、離脱症状の出現を防ぐことができ、ニコチンの量を徐々に減らしていくことで禁煙を目指すことができます。

また、禁煙外来ではカウンセリングなどを通して精神面でのサポートを受けることもできます。

一定の基準を満たしていれば、保険適用で治療を受けることも可能ですよ。

4.動脈硬化予防のための食事に関するまとめ

動脈硬化は脂質異常症や肥満、高血圧、高血糖などのさまざまな要因によって引き起こされます。

動脈硬化の要因となるこれらの生活習慣病は食生活と深く関係しているため、食生活を改善することで動脈硬化の予防にもつながるといえるでしょう。

この記事では、動脈硬化予防のための食事のポイントを八つご紹介しました。

まずは肥満を防ぐため適正カロリーを守り、飽和脂肪酸を控えましょう。

多価不飽和脂肪酸を意識的に摂取することも重要です。

また塩分や糖分の摂り過ぎに注意し、食物繊維の摂取量を増やすことも重要です。

お酒の飲み過ぎも避け、適量を心掛けてくださいね。

動脈硬化予防のためには、食事の改善だけでなく、運動習慣を身に付けて禁煙に取り組むことも大切です。

また別の疾患がある方や健康診断などで動脈硬化の危険因子を指摘されたことがある方は、かかりつけ医に相談した上で生活習慣の改善に取り組んでいきましょう。

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