「メタボリックシンドロームってどんな状態のことなんだろう?」
「メタボリックシンドロームになると体にどんな悪影響があるのかな?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
メタボリックシンドロームとは内臓脂肪の蓄積に加え、高血圧や高血糖、血中の脂質の異常のうち二つ以上が当てはまる状態のことです。
またメタボリックシンドロームの診断基準である内臓脂肪の蓄積や、高血圧、高血糖、脂質異常症は動脈硬化を引き起こす危険因子でもあります。
動脈硬化は進行すると心臓病や脳卒中などの重大な病気のリスクを高めます。
命を脅かす恐れのある病気を防ぐためにも、メタボリックシンドロームを予防・改善しましょう。
この記事ではメタボリックシンドロームの定義や健康に与える悪影響、原因などについて詳しく解説していきます。
1.メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームとは内臓脂肪の蓄積に加え、高血圧、高血糖、脂質代謝異常のうち二つ以上が該当する状態のことです[1]。
ここからは、それぞれの概念についてご説明します。
内臓脂肪とは、胃や腸といった内臓の周りにつく脂肪のことです。
内臓脂肪は蓄積量が多くなると生活習慣病の発症など健康上のリスクを高めることで知られています。
特に男性や、閉経後の女性に蓄積しやすいといわれています。
高血圧とは慢性的に血圧が高い状態を指します。
血圧は心臓から全身に血液を送り出す血管である「動脈」の内壁を押す力のことで、一般的には上腕動脈にかかる圧力を意味します。
高血糖とは血糖値が高い状態のことです。
通常、血糖値は食後に上昇し、その後にインスリンというホルモンの作用により低下します。
しかし、インスリンの分泌量が減ったり効きが悪くなったりすると血糖値が正常に下がらず、高血糖に陥ってしまうのです。
高血糖が慢性的に続く状態は「糖尿病」と呼ばれます。
脂質代謝異常は血液中の脂質が基準値から外れた状態のことです。
血液に含まれる脂質にはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)と中性脂肪(トリグリセリド(トリグリセライド))などがあります。
脂質代謝異常は血液中の脂質が基準値から外れた状態のことです。
メタボリックシンドロームの診断ではHDLコレステロールとトリグリセリドが診断基準として用いられます。
内臓脂肪、高血圧、高血糖、脂質異常症についてはそれぞれ以下の記事を参考にしてください。
内臓脂肪とは?皮下脂肪との違いや健康への影響、メタボとの関係
高血圧とは?基準値や健康上のリスク、改善のポイントを徹底解説
脂質異常症とは?発症の原因や健康への影響、改善のポイントも解説!
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
2.メタボリックシンドロームが健康に与える悪影響
「メタボリックシンドロームになると体にどんな悪影響があるんだろう?」
このようにメタボリックシンドロームが健康に悪いとなんとなく分かっていても、具体的に体にどんな悪影響を及ぼすのか、よく分からないという方もいらっしゃるかもしれません。
メタボリックシンドロームは「動脈硬化」を進行させます。
動脈硬化とは動脈が硬くなり弾力性を失った状態のことです。
進行すると日本人の死因の上位である「心臓病」や「脳卒中」の発症リスクが高まります。
メタボリックシンドロームの診断基準である内臓脂肪の蓄積、高血圧、高血糖、脂質代謝異常はいずれも動脈硬化の危険因子です。
なかでも内臓脂肪の蓄積は高血圧や高血糖、脂質代謝異常のリスクも高めるといわれています。
このようにメタボリックシンドロームは動脈硬化を進行させ、命を脅かす重大な病気を引き起こす可能性がある状態なのですね。
3.メタボリックシンドロームの診断基準
「自分の体がどんな状態だったらメタボリックシンドロームと診断されるんだろう?」
このように疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
メタボリックシンドロームの診断基準は、内臓脂肪の蓄積に加え、高血圧、高血糖、脂質代謝異常のうち二つが該当することです[2]。
この章では、メタボリックシンドロームの診断基準に関わる項目についてそれぞれ詳しく解説します。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
3-1.内臓脂肪蓄積
内臓脂肪蓄積はメタボリックシンドロームの診断基準のなかでも必須項目とされています。
そのため他の項目に全て該当した場合でも、内臓脂肪の蓄積が見られない限り、メタボリックシンドロームには該当しません。
メタボリックシンドロームの診断基準において内臓脂肪の蓄積に該当するのは男女共に内臓脂肪面積が100㎠以上に相当する場合です[3]。
本来、内臓脂肪量の測定はCTスキャンを使って行うことが望ましいとされていますが、ウエスト周囲径を測定することによっておおよその推定ができるとされています。
ウエスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上であれば、内臓脂肪面積が100㎠以上に相当するといわれています[3]。
ウエスト周囲径は自宅でも簡単に測定できるので、一度測ってみると良いでしょう。
腹囲の測り方については以下の記事をお読みください。
メタボと判定される腹囲とは?正しい測り方やその他の診断基準も解説
内臓脂肪の蓄積が見られないか自分で測ってみましょう。
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
3-2.高血圧
高血圧もメタボリックシンドロームの診断基準の一つです。
メタボリックシンドロームにおける高血圧の基準は収縮期血圧が130mmHg以上かつ/または拡張期血圧が85mmHg以上とされています[4]。
なお日本高血圧学会が設ける高血圧の診断基準は病院で計測した場合、収縮期血圧が140mmHg以上かつ/または拡張期血圧が90mmHg以上です[5]。
このように高血圧の診断基準とメタボリックシンドロームにおける高血圧の基準は異なることが分かります。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
3-3.高血糖
高血糖もメタボリックシンドロームの診断基準の一つとされています。
メタボリックシンドロームの診断基準における高血糖は、空腹時に測定した数値で、110mg/dL以上です[6]。
また高血糖が慢性化すると動脈硬化や糖尿病などさまざまな病気のリスクが高まります。
[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血糖」
3-4.脂質代謝異常
脂質代謝異常もメタボリックシンドロームの診断基準の一つです。
メタボリックシンドロームの診断における脂質代謝異常には、トリグリセリドとHDLコレステロールの異常があります。
メタボリックシンドロームの診断基準では血中の中性脂肪が150mg/dL以上で高トリグリセリド血症に、HDLコレステロールが40mg/dL未満で低HDLコレステロール血症に該当します[7]。
これらのうち一つ以上に当てはまる場合、脂質代謝異常といえるでしょう。
[7] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
4.メタボリックシンドロームの原因
「メタボリックシンドロームにはどんな原因があるのかな?」
メタボリックシンドロームの原因には食べ過ぎと運動不足があるとされています。
ここからはメタボリックシンドロームの発症を招く二つの原因について詳しく解説していきます。
4-1.食べ過ぎ
メタボリックシンドロームの原因の一つに食べ過ぎが挙げられます。
食べ過ぎによって摂取カロリー(エネルギー摂取量)が消費カロリー(エネルギー消費量)を上回ると体脂肪が蓄積し、肥満を引き起こします。
ヒトは食べ物などから摂取したエネルギーを、生命を維持したり体を動かしたりすることに消費しています。
体重は摂取カロリーと消費カロリーのバランスによって増減し、摂取カロリーが消費カロリーを上回った状態が続くと、体重増加につながるのです。
肥満のなかでも内臓脂肪が蓄積する肥満である「内臓脂肪型肥満」は高血圧、高血糖、脂質代謝異常のリスクを高め、動脈硬化を進行させるメタボリックシンドロームにつながります。
摂取カロリーが消費カロリーを超えないように、普段から食べ過ぎないように注意する必要があるでしょう。
4-2.運動不足
運動不足もメタボリックシンドロームを引き起こす原因の一つとされています。
運動不足の方は運動を行わない分、エネルギー消費量が少ないため、体脂肪が蓄積しやすいといえます。
メタボリックシンドロームを予防・改善するためにも、継続的な運動を行い、運動不足を解消しましょう。
5.メタボリックシンドロームを予防するポイント
「メタボリックシンドロームを予防するには普段からどんなことに気を付ければ良いんだろう?」
心臓病や脳卒中など重大な病気を引き起こすメタボリックシンドロームを予防し、健康に過ごしたいと考えている方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからはメタボリックシンドロームを予防するために気を付けるべきポイントをご紹介します。
ポイント1 摂取カロリーを適切に抑える
メタボリックシンドロームを予防するには1日の摂取カロリーを適切に抑えることが重要です。
肥満は摂取カロリーが消費カロリーを上回ることが原因で起こります。
そのため摂取カロリーを制限し減量を目指す必要がありますが、極端な食事制限は健康への悪影響を及ぼします。
摂取カロリーを適切に抑えるためにはまず自分にとって適切な摂取カロリーを知ることが大切です。
1日の推定必要カロリー(推定エネルギー必要量)を求めるには「標準体重」と「身体活動レベル」を把握する必要があります。
身体活動レベルは日常生活や運動などの活動量によって3段階に分けられます。
身体活動レベル | 日常生活の内容 |
---|---|
低い(Ⅰ) | 1日のほとんどを座って過ごす、あまり動く機会がない場合 |
普通(Ⅱ) | 座っていることが多いが立ったり歩いたりする機会がある場合、通勤や買い物などで歩く場合、家事や軽いスポーツなどを行う場合 |
高い(Ⅲ) | 立ったり歩いたりすることが多い仕事に従事している場合、または活発な運動習慣がある場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
標準体重に自分の身体活動レベルに応じた体重1kg当たりの推定必要カロリーを掛け合わせることで、1日当たりの推定必要カロリーが求められます。
身体活動レベルに応じた体重1kg当たりの推定必要カロリーは以下のとおりです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
18~29歳 | ||||||
30~49歳 | ||||||
50~64歳 | ||||||
65~74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
自分に必要な摂取カロリーを把握し、適切にカロリー制限を行ってくださいね。
1日に必要なカロリーについては以下の記事で詳しく解説しています。
1日の適切な摂取カロリーは?体格や運動量に合わせた計算方法を解説
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
ポイント2 エネルギー産生栄養素をバランス良く摂る
エネルギー産生栄養素をバランス良く摂ることもメタボリックシンドロームの予防に有効です。
厚生労働省はエネルギー産生栄養素の目標量を「エネルギー産生栄養素バランス」として定めています。
エネルギー産生栄養素バランスは、各エネルギー産生栄養素から摂取するカロリー(エネルギー量)が総摂取カロリー(総エネルギー摂取量)に対して占めるべき割合の形で設定されています。
この割合は「%エネルギー」という単位で示されます。
各年代のエネルギー産生栄養素バランスは以下のとおりです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 |
18~29歳 | ||||||
30~49歳 | ||||||
50~64歳 | ||||||
65~74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
各エネルギー産生栄養素1g当たりから産生されるエネルギーは、たんぱく質と炭水化物で4kcal、脂質で9kcalです[9]。
例えば30代男性の場合、1日の推定必要カロリーが2,200kcalとすると、たんぱく質からは286~440kcal、脂質からは440~660kcal、炭水化物からは1,100~1,430kcalの摂取が必要となります。
これを重量に換算するとたんぱく質は71.5~110g、脂質は約48.9~73.3g、炭水化物は275~357.5gです。
エネルギー産生栄養素バランスを意識して1日に必要な摂取カロリー摂取してくださいね。
エネルギー産生栄養素については以下の記事を確認してください。
エネルギー産生栄養素とは?それぞれのはたらきや理想のバランス
[9] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント3 摂取する脂質の種類に注意する
摂取する脂質の種類に注意することもメタボリックシンドロームの予防につながります。
脂質にはいくつかの種類があり、それぞれ体に与える影響が異なります。
そのなかでも飽和脂肪酸やトランス脂肪酸と呼ばれる脂質は摂り過ぎないようにしましょう。
脂肪の構成要素である脂肪酸はその構造上の違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
飽和脂肪酸は肉の脂身や乳脂肪などの動物性食品の脂肪に多く含まれ、常温では固体で存在するのが特徴です。
体内で合成できるため食事から摂取する必要はありません。
一方で飽和脂肪酸を摂取し過ぎると肥満や高LDLコレステロール血症の原因となることが知られています。
このため厚生労働省は成人に対し、飽和脂肪酸から摂取するカロリーを1日の摂取カロリーの7%以下にするという目標量を設定しています[10]。
またトランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種で、液状の不飽和脂肪酸を工業的に固形に変える際、副産物として生じます。
マーガリンやショートニング、これらを使った菓子類などに多く含まれる脂質です。
トランス脂肪酸は血中のHDLコレステロールを減少させ、LDLコレステロールを増やすため、脂質異常症の要因になるといわれています。
同じ脂質でも体に与える影響が異なるため、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂り過ぎには特に注意が必要なのですね。
脂質の種類について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
[10] 農林水産省「脂質のとりすぎに注意」
ポイント4 食物繊維を十分に摂る
食物繊維を十分に摂取することもメタボリックシンドロームの予防につながります。
食物繊維はヒトの消化酵素では消化できない食品成分で、炭水化物の一種です。
食物繊維には整腸作用を有することで知られています。
また、これに加えて、ナトリウムや糖、脂質を吸着し体外に排出するはたらきがあります。
食物繊維には脂質や糖、ナトリウムが原因となる肥満や高血圧や高血糖、脂質異常症などを予防する効果が期待されているのです。
それでは食物繊維はどれくらいの量を摂取すべきなのでしょうか。
1日の理想的な食物繊維の摂取量は24g以上と考えられています[11]。
しかし日本人の食物繊維摂取量はこの目標に遠く及びません。
そのため、現在の日本人の食物繊維の摂取実態を考慮して、1日当たり24g以上より低く目標量が設定されています。
1日当たりの食物繊維の摂取目標量は次のとおりです。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18~29歳 | ||
30~49歳 | ||
50~64歳 | ||
65~74歳 | ||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
食物繊維は野菜類や豆類、きのこ類、海藻類、果実類などの植物性食品に多く含まれています。
また主食を玄米や麦ご飯、胚芽米ご飯、全粒粉パンなどに置き換えることで食物繊維を効率良く摂取することができますよ。
食物繊維の摂取源となる食べ物は以下の記事でご紹介しています。
食物繊維を含む食べ物は?摂取目標量と摂取量を増やすコツも解説
[11] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント5 よく噛んで食べる
メタボリックシンドロームの予防のために、よく噛んで食べるようにしましょう。
よく噛んで食べると少量でも満腹感が得られ食欲が抑えられるため、食べ過ぎ防止につながります。
これには食べ物を咀嚼(そしゃく)したときに咀嚼中枢に興奮が伝わって分泌される「神経ヒスタミン」という物質が大きく関係しています。
神経ヒスタミンには満腹中枢を興奮させるはたらきがあり、食べ過ぎを防ぐことができるのです。
また咀嚼により分泌された神経ヒスタミンには、交感神経の中枢を刺激し脂肪を燃焼するようはたらきかける作用があります。
これによって内臓脂肪の分解が促されます。
自律神経について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
自律神経とは何?乱れる原因、症状とバランスを整えるポイントを解説
普段の食事から噛む回数を増やすためにも、噛み応えのある食材や料理を選ぶと良いでしょう。
その他にもテレビを見ながら、パソコンやスマホを操作しながらの食事は避け、家族や友人とゆっくりと食事を摂ることもよく噛んで食べるためのポイントの一つといえます。
ポイント6 ナトリウムを摂り過ぎない
メタボリックシンドロームを防ぐにはナトリウムの摂り過ぎにも注意しましょう。
私たちは普段多くのナトリウムを塩化ナトリウムの形で摂取しています。
ナトリウムの摂り過ぎは日本人の高血圧の最大の原因とされています。
摂り過ぎを防ぐためにもナトリウム摂取量を1日どれくらいまで抑える必要があるのか気になりますよね。
高血圧の予防・治療のためには、食塩摂取量を1日6g未満に抑えることが望ましいと考えられています[12]。
塩分の少ない調味料を使ったり、汁物は具沢山にしたりして、ナトリウムを摂り過ぎないようにしてくださいね。
普段の食事で減塩食を続けるためのポイントについて知りたい方は以下を参考にしてください。
減塩食を続けるポイントとは?健康への効果や食塩の摂取目標量も紹介
[12] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント7 カリウムを十分に摂る
カリウムを十分に摂ることもメタボリックシンドロームの予防に役立ちます。
カリウムにはナトリウムの体外への排出を促す作用があります。
そのため、カリウムを摂取することで高血圧の予防・改善につながるのです。
カリウムの理想的な摂取量は1日当たり3,510mgだといわれています[13]。
しかし日本人の摂取量はこの値に遠く及ばないため、厚生労働省は成人に対し、男性で1日当たり3,000mg以上、女性で2,600mg以上の目標量を定めています[13]。
カリウムは海藻類や果実類、いも類、でんぷん類、豆類、肉類、魚介類、野菜類などに多く含まれます。
普段の食事でカリウムを十分に摂るためにこれらの食品を食べるようにしましょう。
カリウムの摂取源となる食べ物について知りたい方は以下をチェックしてくださいね。
[13] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント8 アルコールは適量にとどめる
メタボリックシンドロームを防ぐにはアルコールの摂取を適量にとどめることも重要です。
アルコールの過剰摂取は中性脂肪を増やし、高トリグリセリド血症を招きます。
また長期間にわたる過度な飲酒は高血圧の原因となるといわれています。
このように過度な飲酒はメタボリックシンドロームの診断基準である脂質異常症や高血圧のリスクを高める恐れがあります。
厚生労働省の「健康日本21」によると、「節度ある適度な飲酒量」は純アルコール換算で1日平均約20g程度とされています[14]。
純アルコール量は酒の量(mL)×度数(%)/100×アルコールの比重(0.8)の計算式で求めることができます[15]。
一般的なお酒における純アルコール20g相当の量は以下のとおりです。
厚生労働省「健康日本21 (アルコール) 」をもとに執筆者作成
この摂取量はあくまでも目安のため、アルコール代謝能力が低い人や女性の場合はより少量に抑える必要があります。
また適度な飲酒量に抑えていれば毎日飲酒しても良いというわけではありません。
週に1日以上は休肝日を設けてくださいね[16]。
アルコールについては以下の記事をお読みください。
アルコールとは?体への影響や健康的なお酒の飲み方、注意点を解説
[14] 厚生労働省「健康日本21(アルコール) 」
[15] 厚生労働省 e-ヘルスネット「飲酒量の単位 」
[16] 厚生労働省 e-ヘルスネット「栄養・食生活と高血圧 」
ポイント9 有酸素運動を行う
メタボリックシンドロームの予防には有酸素運動を行うことも重要です。
内臓脂肪を減らすには週当たり10メッツ・時以上の有酸素運動を行う必要があることが分かっています[17]。
メッツとは身体活動の強度を表す単位のことです。
安静時を1メッツとして、該当する身体活動が安静時の何倍に相当するかで表します[17]。
メッツ・時とは身体活動の量を表す単位のことで、メッツに身体活動の実施時間を掛けて求められます。
例えば分速95〜100mでの歩行は4.0メッツの運動であるため、内臓脂肪を減らすには週当たり2.5時間以上の運動時間が必要になります[18]。
また有酸素運動には高血圧、糖尿病、脂質異常症の改善効果も期待できます。
メタボリックシンドロームの予防のために自分が続けやすいと感じる有酸素運動を選び、無理なく続けるようにしましょう。
有酸素運動については以下の記事をお読みください。
有酸素運動とは?効果や無酸素運動との違い、おすすめの運動を紹介
[17] 厚生労働省 e-ヘルスネット「内臓脂肪減少のための運動」
[18] 厚生労働省「身体活動・運動の単位」
ポイント10 禁煙する
禁煙することもメタボリックシンドロームの予防につながります。
喫煙者は非喫煙者と比べて、メタボリックシンドロームの発症リスクが高くなるといわれています。
これは喫煙がメタボリックシンドロームの診断基準である内臓脂肪蓄積や高血圧や、高血糖、脂質異常症などを引き起こすためです。
喫煙はそれだけで動脈硬化を進行させる要因になります。
メタボリックシンドロームと喫煙が重なると、さらにそのリスクが高まるといえるでしょう。
メタボリックシンドロームと喫煙が重なった場合には、動脈硬化が進行し脳卒中や虚血性心疾患といった重大な病気を引き起こします。
メタボリックシンドロームだけでなく、喫煙によって引き起こされるさまざまな生活習慣病を防ぐためにも、禁煙を心掛けましょう。
6.メタボリックシンドロームについてのまとめ
メタボリックシンドロームとは内臓脂肪の蓄積に加え、高血圧・高血糖・脂質代謝異常のうち二つ以上が重なった状態のことです[19]。
メタボリックシンドロームは動脈硬化を進行させ、心臓病や脳卒中のリスクを高める恐れがあります。
メタボリックシンドロームの原因には、食べ過ぎと運動不足が挙げられます。
これらによって内臓脂肪が蓄積し、高血圧や高血糖、脂質代謝異常のリスクを高めます。
メタボリックシンドロームを予防するには、摂取カロリーを適切に制限すること、エネルギー産生栄養素をバランス良く摂取することが重要です。
また摂取する脂質の種類にも注意し、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は摂り過ぎないようにしましょう。
その他にも普段の食事では食物繊維を十分に摂ること、よく噛んで食べること、ナトリウムを摂り過ぎないこと、カリウムを十分に摂取すること、アルコールの摂取は適量にとどめることなどもメタボリックシンドロームの予防につながります。
有酸素運動を行って、禁煙することも大切ですよ。
この記事を参考に日々の生活を見直し、メタボリックシンドロームを予防してくださいね。
[19] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
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