「食生活が乱れているから、健康のために食事を改善したいな」
「健康的な食事のためにはどんなことに気を付けるべきなんだろう?」
このように気になっている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
私たちヒトの体の健康は、食事から摂取する栄養素と深く関わっています。
生命を維持するためにはさまざまな栄養素が必要です。
栄養バランスが崩れていたり、食べ過ぎや極端な食事制限を続けていたりすると、健康を害してしまう恐れがあります。
食事を通じて体に必要な栄養素をしっかりと摂取し、健康の維持・増進に努めましょう。
この記事では健康的な食事とはどのようなものなのか、健康のために必要な栄養素にはどんなものがあるのかをご紹介します。
実際に健康的な食事を摂るためのポイントもご紹介するので参考にしてみてくださいね。
1.健康的な食事とは?
健康のためにより良い食生活が重要であることは漠然と理解していても、どのような食事ならば「健康的」といえるのかは難しい問題ですよね。
まずは健康的な食事とはどのようなものであるか考えてみましょう。
ヒトの体の機能を維持するためには、さまざまな栄養素を食事から摂取する必要があります。
普段の食生活が偏っていると、体に必要な栄養素を十分に摂れていない可能性があります。
また必要な栄養素を摂れていても、それだけでは「健康的」とはいえません。
WHOは健康のことを、「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義しています[1]。
この定義にのっとるならば、健康的な食事は精神的な満足感ももたらすものであるといえるでしょう。
食事において、おいしさを楽しむというのは重要なことですよね。
厚生労働省は日本人の平均寿命が世界的に長い理由の一つとして、日本の食生活を挙げています[2]。
日本の国土には四季があり、多様な気候と地形があります。
こうした環境で育った旬ならでは、地域ならではの多様な食べ物を組み合わせて食べてきたことで、食事の栄養バランスが取れていたのではないかと考えられているのです。
なお、一度バランスの取れた食事を摂ったからといって体の機能に大きな効果がもたらされることはないので、栄養バランスの取れた食事を継続的に摂ることも重要です。
必要な栄養素をきちんと含んだおいしい食事を無理なく続けることが、健康的な食生活には大事だと考えられるのですね。
ヒトの体に必要な栄養素については次の章で詳しくご紹介します。
[1] 公益社団法人 日本WHO協会 「世界保健機関(WHO)憲章とは」
[2] 厚生労働省 「健康な食事」の普及について」
2.体に必要な栄養素
「体に必要な栄養素にはどんなものがあるんだろう?」
「食事から摂取しなければならない栄養素は何種類あるの?」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ヒトの体に必要である栄養素は大きく「エネルギーになるもの」「体をつくるもの」「体の調子を整えるもの」に分けられます。
主にエネルギー源となるのは糖質(炭水化物)と脂質で、たんぱく質もエネルギー源の一種です。
これらの栄養素はまとめて「エネルギー産生栄養素」とも呼ばれます。
たんぱく質は体をつくる上でも重要なはたらきを果たし、他にもミネラルや脂質が体の材料となります。
ビタミンやミネラルは体の調子を整えるはたらきを果たします。
なお体に必要であることが分かっているビタミンは13種類[3]、ミネラルは16種類存在します[4]。
また炭水化物の一種である食物繊維はエネルギー源になったり体をつくったりするわけではありませんが、体の中で重要なはたらきを果たします。
これらの体に必要な栄養素について、ここから詳しくご説明しましょう。
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット 「ビタミン」
[4] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 「栄養に関する基礎知識」
2-1.炭水化物
炭水化物はエネルギー源となる糖質とヒトの消化酵素では消化できない「食物繊維」に分けられます。
それぞれどのような栄養素なのかご説明しましょう。
2-1-1.糖質
糖質は体内に吸収されエネルギー源となる栄養素の一つです。
1g当たり約4kcalのエネルギーを生み出します[5]。
糖質は単糖類・少糖類・多糖類に分類されます。
単糖類とはそれ以上分解されない糖類のことで、「ブドウ糖」「果糖」「ガラクトース」などが該当します。
糖質のなかでもブドウ糖は自然界に最も多く存在する単糖類で、重要な栄養素です。
特別なときを除いて脳の唯一のエネルギー源となったり、「血糖」として血液中に溶け込んで細胞のエネルギーとして利用されたりします。
糖質が不足するとエネルギー不足による集中力の減退や疲労感といった症状が見られます。
またブドウ糖が不足すると、ブドウ糖をエネルギー源とする脳や神経に影響が及び、意識障害を引き起こすこともあります。
一方で糖質を摂り過ぎ、エネルギー源として使い切れなかった場合は脂肪として体に蓄えられ、肥満や生活習慣病の原因になるので要注意です。
糖質については以下の記事で詳しくご説明しています。
糖質は1日にどれくらい摂取するべき?摂り過ぎにも不足にも注意!
[5] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-1-2.食物繊維
食物繊維とは食べ物に含まれる炭水化物のうち、ヒトの消化酵素では消化されないもののことです。
消化されることがないためほとんどエネルギーにならず、腸内細菌による発酵分解によって1g当たり0〜2kcalのわずかなエネルギーが生み出されるのみです[6]。
エネルギー源としては不十分な食物繊維ですが、体にとって有用なさまざまな作用を有しています。
食物繊維は消化・吸収されずに大腸まで到達するため、便の材料となります。
また腸にすむ善玉菌(ヒトの体に有用な菌)の餌となって繁殖を助けるはたらきもしています。
このため、食物繊維には整腸作用があるといわれています。
便秘の方は意識して摂っておきたい栄養素だといえますね。
さらに食物繊維には糖質や脂質、ナトリウムを吸着し排出するはたらきがあるため、これらが原因となって生じる肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病を予防・改善する効果が期待されています。
このようにさまざまな効果のある食物繊維ですが、実は現代の日本人には不足しがちな栄養素であるといわれています。
少しでも多くの食物繊維を摂取するよう心掛けることが重要です。
食物繊維については以下の記事で詳しくご説明しています。
食物繊維にはどんな効果がある?含まれる食品や効率的な食べ方のコツ
[6] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-2.脂質
脂質は炭水化物(糖質)やたんぱく質と並ぶエネルギー産生栄養素の一つで、1g当たり約9kcalを生み出すハイカロリーな物質です[7]。
平均的な成人の体内ではたんぱく質の次に多く含まれており、水に溶けません。
食べ物に含まれる脂質は体内に吸収され効率の良いエネルギー源として使われる他、細胞膜や「生理活性物質」の材料としてもはたらきます。
肥満の原因となるイメージが強いかもしれませんが、体にとって重要な栄養素の一つなのですね。
ただし皆さんご存じのとおり、摂り過ぎは肥満や生活習慣病の原因となります。
ほど良く摂取することが重要だといえるでしょう。
また一口に脂質といってもいくつかの種類に分けられ、生活習慣病の要因となるため適度な制限が勧められるものもあれば、体内で合成ができないため食べ物から摂取しなければならないものもあります。
どんな食べ物から脂質を摂るかということも大切なのですね。
脂質については以下の記事で詳しくご説明しています。
脂質は1日にどれくらい摂取して良い?摂取目標量や過不足による影響
[7] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-3.たんぱく質
たんぱく質は炭水化物(糖質)や脂質と共にエネルギー産生栄養素の一つに数えられます。
1g当たり約4kcalと生み出すエネルギーは糖質と同じです[8]。
たんぱく質にはエネルギー源となるだけでなく体をつくる重要なはたらきがあります。
筋肉、臓器、皮膚、髪の毛などの体の組織の主な材料はたんぱく質です。
またホルモンや酵素、抗体などの体の機能を調節する物質の材料にもなっています。
ヒトの体から水分を除いた「生体乾燥重量」の約50%はたんぱく質が占めているのです[9]。
たんぱく質が不足すると体力や免疫力が低下したり、成長障害が生じたりしてしまいます。
たんぱく質は生命の維持に欠かせない栄養素の一つなのですね。
たんぱく質については以下の記事で詳しくご説明しています。
たんぱく質とは?体内でのはたらきや食事摂取基準、豊富な食品を紹介
[8] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[9] 厚生労働省 e-ヘルスネット 「たんぱく質」
2-4.ビタミン
ビタミンは体の機能を正常に保つために欠かせない物質です。
体内ではほとんど合成することができないため、食べ物などから摂取する必要があります。
ビタミンは油に溶ける「脂溶性ビタミン」と水に溶ける「水溶性ビタミン」に分けられます。
2-4-1.脂溶性ビタミン
脂溶性ビタミンは水に溶けず、油に溶けるビタミンです。
ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類があります。
脂溶性ビタミンの主な作用は以下のとおりです。
【脂溶性ビタミンの主な作用】
ビタミンA | ・目の正常な機能の維持に関わる ・皮膚や粘膜の正常維持に関わる ・成長および分化に関わる |
ビタミンD | ・カルシウムやリンなどのミネラルの代謝に関わる ・骨の形成を助ける |
ビタミンE | ・体内の脂質を酸化から守る ・活性酸素のはたらきを抑える |
ビタミンK | ・血液凝固に関わる ・骨の形成に関わる |
脂溶性ビタミンは主に脂肪組織や肝臓に蓄えられます。
体の機能を正常に保つために欠かせませんが、摂り過ぎると健康に悪影響を及ぼす恐れがあるので要注意です。
2-4-2.水溶性ビタミン
水溶性ビタミンにはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ビタミンCの9種類があります。
このうちビタミンCを除いたものを「ビタミンB群」といいます。
水溶性ビタミンは主に体内のさまざまな代謝に必要な酵素のはたらきを補っています。
水溶性ビタミンの主な作用は以下のとおりです。
【水溶性ビタミンの主な作用】
ビタミンB1 | ・糖質の代謝に関わる ・皮膚や粘膜の健康維持を助ける |
ビタミンB2 | ・エネルギー代謝に関わる ・成長を促進したり皮膚や粘膜を保護したりする |
ビタミンB6 | ・糖質 ・脂質・たんぱく質の代謝に関わる ・皮膚や粘膜の健康維持を助ける |
ビタミンB12 | ・アミノ酸(たんぱく質の構成要素)や 脂質の代謝に関わる ・赤血球の形成を助ける |
ナイアシン | ・さまざまな代謝に補酵素として関わる ・皮膚や粘膜の健康維持を助ける |
パントテン酸 | ・糖質や脂肪酸(脂肪の構成要素)の代謝に関わる ・皮膚や粘膜の健康維持を助ける |
葉酸 | ・DNAやRNAの合成、アミノ酸の代謝、 たんぱく質の合成などに関わる ・赤血球の形成を助ける ・胎児の正常な発育に寄与する |
ビオチン | ・エネルギー代謝になどに関わる ・皮膚や粘膜の健康維持を助ける |
ビタミンC | ・皮膚や腱(けん)、軟骨などを 構成するコラーゲン(たんぱく 質の一種)の合成に関わる ・皮膚や粘膜の健康維持を助ける ・活性酸素のはたらきを抑える |
水溶性ビタミンは血液などの体液に溶け込んでおり、摂り過ぎた分は尿に溶けた状態で排出されます。
このため過剰摂取しても体に悪影響が生じにくいと考えられています。
2-5.ミネラル
ミネラルとは生体を構成する酸素・炭素・水素・窒素の主要な4元素を除いた元素のことで、無機質とも呼ばれます。
ミネラルのなかでも特に栄養素として必要なことが分かっているものは「必須ミネラル」といい、16種類あります[10]。
カルシウムや鉄、ナトリウム、カリウムなどは必須ミネラルの代表例です。
必須ミネラルは筋肉や骨、歯、血液などの成分となったり、体内のさまざまな機能に関わったりしています。
必須ミネラルの種類と主な作用は以下のとおりです。
【必須ミネラルの主な作用】
ナトリウム | ・浸透圧を維持する ・pHを調節する ・胆汁、膵(すい)液、腸液などの 材料となる |
塩素 | ・浸透圧を維持する ・pHを調節する ・胃液の塩酸の材料となる |
カリウム | ・浸透圧を維持する ・pHを調節する ・神経の興奮性や筋肉の収縮に関わる ・ナトリウムを排出する |
カルシウム | ・骨や歯の主な材料となる ・血液の凝固、筋肉の収縮、神経の 興奮抑制などに関わる |
マグネシウム | ・エネルギー代謝に関わる ・筋肉の収縮、ホルモン分泌、体温調節、 神経の機能などに関わる |
リン | ・骨や歯、細胞の材料になる ・エネルギー代謝に関わる ・浸透圧を維持する ・pHを調節する |
イオウ | ・含硫アミノ酸(髪の毛や爪のたんぱく質の 構成要素)の材料になる |
鉄 | ・赤血球などに存在し酸素を供給する ・酵素の構成成分となる |
亜鉛 | ・味覚を正常に保つ ・核酸代謝、細胞の分裂に関わる ・酵素の材料になる |
銅 | ・鉄の吸収や貯蔵を促進する ・成長を促進する ・酵素の材料になる ・免疫機能に関わる |
マンガン | ・骨を形成する ・酵素の材料になる |
コバルト | ・ビタミンB12の成分となる ・補酵素としてはたらく |
クロム | ・糖質や脂質の代謝に関わる |
ヨウ素 | ・甲状腺ホルモンの材料になる |
モリブデン | ・補酵素になる |
セレン | ・酵素の材料になる ・活性酸素のはたらきを抑える |
16種類のそれぞれが体内で重要なはたらきを担っているのですね。
ミネラルは体内で合成できないため食べ物などからの摂取が必要で、不足すると体にさまざまな問題が生じます。
ただし摂り過ぎても体に不調を来す場合があるので要注意です。
またミネラルには吸収や作用の過程で互いに影響を与え合うものもあるため、バランス良く摂ることが重要です。
[10] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 「栄養に関する基礎知識 」
3.健康的な食事のメリット
「健康的な食事が体に良いイメージはあるけど、実際食生活を改善したらどんなメリットが得られるんだろう?」
このように疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
食事を改善すれば心身にさまざまな良い効果が表れると考えられます。
ここでは、健康的な食事のメリットをお伝えしましょう。
3-1.適正体重の維持
健康的な食事を続ければ、適正な体重を維持できるものと考えられます。
体重は摂取カロリーと消費カロリーのバランスによって変動します。
摂取カロリーが消費カロリーを上回っているときには体重は増加し、摂取カロリーと消費カロリーが同等であるときには体重は変動しません。
また摂取カロリーが消費カロリーを下回ったときには体重は減少します。
このため食べ過ぎていたり、カロリーが高いものをよく食べていたりすると、体重が増加する原因となるのですね。
健康的な食事を続け、カロリーを適正に摂取できていれば体重も適正に保たれるものと考えられます。
3-2.腸内環境の改善
健康的な食事には、腸内環境の改善効果も期待できます。
ヒトの腸内にはおよそ1,000種類、100兆個もの細菌が生息しているといわれます[11]。
細菌というと感染症の原因となるイメージが強い方もいらっしゃるかもしれませんが、腸内細菌はヒトの体に有用な「善玉菌」と有毒物質をつくったり腸内を腐敗させたりする「悪玉菌」、そのどちらでもない「日和見(ひよりみ)菌」に分けられます。
善玉菌には腸内を酸性にすることで悪玉菌の増殖を抑え、腸の動きを活発にさせる他、食中毒菌や病原菌による感染を予防したり、発がん性のある「腐敗産物」の産生を抑えたりするはたらきがあります。
日和見菌は善玉菌と悪玉菌の優勢な方に味方してはたらくといわれており、善玉菌を悪玉菌よりも多く保つことが重要です。
腸内細菌は食べ物の影響を受け、食物繊維や善玉菌の一種である「ビフィズス菌」や「乳酸菌」を摂取することで善玉菌の数を増やすことができます。
不摂生な食事を続けていて便秘や下痢を繰り返しているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
健康的な食事を摂り、腸内環境を改善しましょう。
[11] 厚生労働省 e-ヘルスネット 「腸内細菌と健康」
3-3.肌荒れの予防・改善
健康的な食事には、肌荒れの予防・改善効果も期待できるでしょう。
食事は肌の調子にも大きな影響を与えます。
例えば脂質が多過ぎる食事を摂り続けていると、皮脂の分泌が過剰になってしまい、毛穴の開きや黒ずみなどの肌荒れにつながる恐れがあります。
またビタミンのなかには皮膚の健康に関わるものが多くあるため、これらが不足していると肌荒れを招いてしまいます。
食事を改善し、必要な栄養素を過不足なく摂取することは美容にもメリットがあるのですね。
3-4.生活習慣病の予防
健康的な食事は生活習慣病の予防にも有効だと考えられます。
脂質異常症は血液中の脂質の値が基準値から外れた状態のことです。
代表的なものにいわゆる「悪玉コレステロール」の値が高くなる「高LDLコレステロール血症」、「善玉コレステロール」の値が低くなる「低HDLコレステロール血症」、「中性脂肪」の値が高くなる「高トリグリセリド血症」があります。
特に高LDLコレステロール血症や高トリグリセリド血症は食生活が原因で引き起こされるといわれています。
脂質異常症には自覚症状がありませんが、命に関わる心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす「動脈硬化」の原因となるので要注意です。
また糖尿病は高血糖が慢性的に続く病気で、網膜や腎臓、神経などに合併症を伴うことが多くあります。
自己免疫疾患などが原因となる1型糖尿病と遺伝的要因に生活習慣が重なって発症する2型糖尿病に分けられます。
2型糖尿病では発症の要因として、食べ過ぎや脂質の摂り過ぎなどが挙げられています。
高血圧は慢性的に血圧が高い状態で、放置していると動脈硬化の原因となります。
高血圧は日本人のうち約4,000万人が該当するといわれる身近な病気で[12]、日本人の高血圧の最大の原因は食塩に含まれるナトリウムの摂り過ぎだといわれています。
このように悪い食習慣はさまざまな生活習慣病を招いてしまう恐れがあるのですね。
食生活を改善し、生活習慣病の予防に努めましょう。
[12] 厚生労働省 e-ヘルスネット 「高血圧」
4.栄養バランスの取れた健康的な食事のポイント
「健康のためにはどんな食事を摂れば良いんだろう?」
「体に必要な栄養素はたくさんあるけど、どうやってこれらを摂れば良いの?」
このようにお悩みの方も多くいらっしゃることでしょう。
ここでは、栄養バランスの取れた健康的な食事を続けるために心掛けたいポイントをご紹介します。
ポイント1 主食・主菜・副菜をそろえる
健康的な食事を実現するためには、主食・主菜・副菜を組み合わせて食べることが推奨されています。
主食とはご飯やパン、麺類など、穀類でつくられ、食事の中心となる料理のことです。
主には糖質や食物繊維の摂取源となります。
主菜は魚や肉、卵、大豆製品などを使ったメインのおかずとなる料理のことで、主にたんぱく質や脂質を含んでいます。
副菜は野菜、海藻、きのこなどを使った料理で、ビタミンやミネラル、食物繊維などの摂取源となります。
昔ながらの日本の食事は、「一汁三菜」といい、ご飯に汁物と3種類のおかずが組み合わされたものでした。
3種類のおかずは主菜と2品の副菜に当たり、一汁三菜は栄養バランスの取れた食事であるといえます。
伝統的な日本の食文化に基づいた食事は健康にも有用だといえますね。
また厚生労働省と農林水産省が共同で作成した「食事バランスガイド」では、主食や副菜、主菜に加え、牛乳や乳製品および果物を合わせて食べることが推奨されています。
「食事バランスガイド」ではどのようなものをどれだけ食べるべきであるかも確認できるので、チェックしてみてくださいね。
ポイント2 規則正しく食事を摂る
健康のためには1日3食規則正しく食事を摂ることも重要だと考えられています。
食事と食事の間隔が空くと、おなかが空き過ぎて一度の食事量が多くなってしまいます。
また食事の回数が少ないと、エネルギーや栄養素を十分に摂取できず健康を損ねてしまう恐れもあります。
人間の体には体内時計が備わっており、この体内時計を司るリズムは体温や血圧などの生命活動のコントロールに関わっています。
しかしこの体内時計は24時間よりも少し長いリズムではたらいているため[13]、普段の活動に合わせて調節することが必要なのです。
体内時計のリセットには朝日を浴びることに加えて、朝食を食べることが有効だといわれています。
忙しく、つい朝ご飯を抜いてしまいがちだという方もいらっしゃるかもしれませんが、朝ご飯を含め、1日3食をしっかり摂ることが大切なのですね。
なお、1日に摂取するエネルギーは朝食3:昼食4:夕食3(または朝食3:昼食3:夕食4)の割合が理想的だといわれているので参考にしてくださいね[14]。
つい夕食にガッツリしたものを食べがちな方もいらっしゃるかもしれませんが、夕食の量が多いと肥満を招いてしまうので要注意です。
また夜遅い時間の食事はエネルギーが消費されにくく、体脂肪として蓄積されやすいといわれています。
生活リズムを乱す原因にもなるので避けるようにしましょう。
[13] 厚生労働省 e-ヘルスネット 「体内時計」
[14] 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット 「健康に良い規則正しい食生活とは」
ポイント3 果物や野菜を意識的に摂る
健康のためには果物や野菜を積極的に摂るよう心掛けましょう。
厚生労働省は「健康日本21(第三次)」のなかで野菜と果物の摂取量を増加させ、1日当たりの野菜の平均摂取量を350gに、果物の平均摂取量を200gにする、という目標を掲げています[15]。
しかし厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」の結果によれば、野菜の平均摂取量は269.8g、果物の平均摂取量は96.4gと目標には遠く及びません[16]。
野菜や果物には積極的な摂取が推奨されているカリウムや食物繊維などの栄養素が含まれています。
野菜や果物の摂取量が少ないことは死亡の要因にもなり得るといわれています[17]。
5年間に渡って日本人の野菜の摂取量と体重について調査した研究では、野菜の摂取量が増えると体重が減少するとの報告があります[18]。
1日1皿でも野菜や果物を多く食べることを心掛けましょう。
[15] 厚生労働省 「健康日本21(第三次)」
[16] 厚生労働省 「令和元年 国民健康・栄養調査」
[17] 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 「~科学的根拠に基づく「健康に良い食事」について~」
[18] Wilunda, C., Sawada, N., Goto, A. et al.「Associations between changes in fruit and vegetable consumption and weight change in Japanese adults(European Journal of Nutrition,Volume 60, (2021))
(日本語のサイトはこちら)
ポイント4 乳製品を意識的に摂る
健康のためには乳製品を積極的に摂ることも心掛けましょう。
厚生労働省と農林水産省が共同で作成した「食事バランスガイド」においても、主食や主菜、副菜に加えて乳製品と果物を摂ることが推奨されています。
牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品はミネラルの一種であるカルシウムの主な摂取源となります。
カルシウムは成人の体内に約1kgと人体に最も多く含まれているミネラルです[19]。
歯や骨の材料となるため、不足すると骨の強度が低下し骨折しやすくなる病気「骨粗しょう症」の原因にもなります。
またカルシウムは血液の凝固や心筋の収縮などにも関わっています。
このように重要なカルシウムですが、平均摂取量は厚生労働省の定める摂取推奨量に達していません[20][21]。
牛乳やその他の乳製品を食生活に取り入れてみましょう。
[19] 厚生労働省 e-ヘルスネット 「カルシウム 」
[20] 厚生労働省 「令和元年 国民健康・栄養調査 」
[21] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント5 魚や大豆などを意識的に摂る
普段あまり魚を食べる機会がなく、ついお肉ばかり食べてしまっているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
肉や魚、卵、豆などの食品はたんぱく質の摂取源となります。
肉だけでなく魚や「植物性たんぱく質源」を積極的に取り入れることも健康のためになると考えられます。
植物性たんぱく質源とはたんぱく質を多く含む植物性食品のことで、日本では豆腐や納豆などがよく食べられています。
反対に牛や豚などの肉や加工肉の摂り過ぎは死亡リスクを高めると考えられているため注意しましょう。
脂質を構成する「脂肪酸」にはいくつかの種類がありますが、食事から摂取する必要があるn-3系脂肪酸およびn-6系脂肪酸は肉の脂には少なく、魚や植物の油に多く含まれている傾向にあります。
一方、肉などの脂に多く含まれる「飽和脂肪酸」は肥満や高LDLコレステロール血症などの危険因子として知られています。
普段肉を食べがちだという方は魚や豆腐などを食べる機会を増やしてみましょう。
ポイント6 塩分を控える
日本人の食生活は塩分を摂り過ぎてしまいがちだといわれています。
食塩に含まれているナトリウムは高血圧の原因となるため、摂り過ぎないことが重要です。
「そんなに塩分を摂っているつもりはないけどなあ……」
このようにお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、食塩はいわゆる「塩」として売られているものだけでなくしょうゆやみそなどの調味料にも含まれています。
食塩摂取の約7割は調味料からだといわれているのです[22]。
高血圧の予防・改善のためには1日当たりの食塩摂取量は6g未満が望ましいといわれていますが[23]、厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」の結果によれば20歳以上の日本人の食塩平均摂取量は10.1gと大幅にオーバーしています[24]。
普段から食塩摂取量を意識していない方は、塩分を摂り過ぎないよう心掛ける必要があるでしょう。
単に塩分を控えるだけでは料理が味気なく感じられ、食事を楽しめなくなってしまう心配があります。
塩分の少ない調味料を使用したり、うま味や酸味、辛味、香味など塩味以外の風味を加えてくれる調味料や食材を活用したりといった工夫をすると良いでしょう。
[22] 厚生労働省 e-ヘルスネット 「調味料の上手な使い方」
[23] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[24] 厚生労働省 「令和元年 国民健康・栄養調査」
ポイント7 間食を摂り過ぎない
甘いものが好きでお菓子やジュースについ手を伸ばしてしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
健康のためには間食を控えることも重要です。
間食とは朝食・昼食・夕食の食事以外に摂取するエネルギー源のことで、食べ物だけでなく飲み物も含みます。
お菓子の他、ジュースやお酒といった嗜好飲料、果物、菓子パン、ファストフードなどが間食にあたります。
間食には食事だけでは摂取できない栄養素を補ったり、気分転換やエネルギー補給の一助となったりする役割がありますが、摂り過ぎは肥満につながります。
また炭酸飲料やソーダ、エネルギー飲料、果物ジュースなどの砂糖入り飲料は糖尿病による死亡に影響を与えるともいわれています[25]。
間食から摂るカロリーは1日当たり200kcal程度が適当だといわれているので、食事と合わせて摂取カロリーを適切に調節しましょう[26]。
不足しがちな栄養素を補える果物やヨーグルトなどをおやつにするのもおすすめですよ。
[25] 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 「~科学的根拠に基づく「健康に良い食事」について~」
[26] 厚生労働省 e-ヘルスネット 「間食のエネルギー(カロリー)」
5.健康的な食事についてのまとめ
健康のためには体に必要な栄養素をしっかりと摂取することが必要です。
体に欠かせないことが分かっている栄養素には3種類のエネルギー産生栄養素、13種類のビタミン、16種類のミネラルがあります。
これらの栄養素は大きくエネルギー源となるもの、体をつくるもの、体の調子を整えるものに分けられます。
不足すると体に悪影響を及ぼす恐れがあるので注意が必要です。
また「健康」のためには社会的にも精神的にも満たされている必要があります。
つまり健康的な食事のためには必要な栄養素を摂取するだけでなく、食事のおいしさを楽しむことも重要なのです。
食事を健康的なものに改善すれば、適正体重の維持、腸内環境の改善、肌荒れの予防・改善、生活習慣病の予防といったメリットを得られると考えられます。
栄養バランスの取れた健康的な食事のためには主食・主菜・副菜をそろえた食事を摂ることが重要です。
日本古来の一汁三菜はこの条件にかなったものであるといえます。
具体的には果物や野菜、乳製品、魚、大豆などを意識的に摂るようにしましょう。
また規則正しく食事を摂ること、食塩を控えること、間食やジュースを摂り過ぎないこともポイントです。
この記事を参考に健康的な食事を心掛けてくださいね。