「ダイエットをしたいからカロリーを控えないと……」
「太りたくないからできるだけ食事のカロリーを抑えたいな」
このように考えている方もいるのではないでしょうか。
摂り過ぎが健康に良くないことはもちろんですが、カロリーを極端に制限することも体に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。理想的な体型や体重に近づくために、無理をして健康を損ねてしまっては元も子もないですよね。健康的に痩せるためには、自分にどのくらい必要なのかを知っておくことが重要です。
そこで、この記事では成人女性に必要なカロリーの計算方法や摂取・消費のバランスを整えるための工夫について解説していきます。ご自身の健康のためにぜひ参考にお読みくださいね。
1.成人女性に必要なカロリーはどれくらい?
「太りたくないから、できるだけカロリーを摂らないようにしている……」
と日頃から食事を気にしている女性は多いでしょう。
しかし、私たちが健康的に生きていくためには、必要量をきちんと摂取することが重要です。
カロリーとは本来、食べ物などから摂取し生命を維持したり体を動かしたりするために使われるエネルギーの量を表す単位です。
エネルギーそのものを分かりやすく「カロリー」と呼んでいるケースもあるため、この記事でも「カロリー」という言葉を使ってご説明します。
十分摂取しなければ、生命を維持したり体を動かしたりするためのエネルギーが不足してしまいます。
そうなると身体に悪影響がおよぶことは想像に難くありませんよね。
では、健康に生活するためにはどれくらい摂取すべきなのでしょうか。
カロリーとは?
1-1.年齢別・成人女性に必要なカロリー早見表
厚生労働省は、成人女性が1日に必要とするカロリーについて以下のような推定値を発表しています。
【女性の推定必要カロリー(kcal/日)】
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
30〜49歳 | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
50〜64歳 | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
65〜74歳 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
75歳以上 | 1,400 | 1,650 | - |
厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
上記の数値を大きく超えている場合、摂取し過ぎている可能性があるといえるでしょう。
また、成人女性の中でも妊娠中・授乳中の方については、身体活動レベルに関係なく以下をプラスした値が必要だと推定されています。
推定必要カロリー(付加量・kcal/日) | |
---|---|
妊婦 初期 | +50 |
妊婦 中期 | +250 |
妊婦 後期 | +450 |
授乳婦 | +350 |
厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
赤ちゃんに十分な栄養を届けるためにも、普段より多めに摂取する必要があるということですね。
ただし、これらの推定値はあくまで平均的な体格の方を想定して設定されたものなので、それぞれの体格などによって実際に必要な量は異なると考えられます。
そこで、次はご自分に必要なカロリーを計算する方法をご説明しましょう。
男性に必要なカロリーはこちら
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
1-2.あなたに必要な1日当たりのカロリー
「小柄だから、標準体型の人向けのカロリーを目安にしていたら太ってしまうかも……」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここではご自分の体格で1日に消費すると考えられるカロリー計算する方法をご説明しましょう。
厚生労働省や日本医師会は18歳以上の成人が1日に必要とする推定カロリーを「基礎代謝量」×「身体活動レベル」で求めています。
基礎代謝量の推定式にはいくつかの種類がありますが、ここではBMIが30程度までなら大きな誤差は生じない*2ものと考えられている国立健康・栄養研究所の推定式をご紹介しましょう。
【基礎代謝量の推定式(女性/18〜79歳)】
- (0.0481×体重(kg)+0.0234×身長(cm)-0.0138×年齢(歳)-0.9708)×1,000÷4.186
例えば身長160cm、体重50kgの25歳成人女性の場合、基礎代謝は約1,270kcal(小数点以下で四捨五入)となります。
この基礎代謝量に、以下の年齢別の身体活動レベルを掛け合わせることで1日の推定必要カロリーが求められます。
身体活動レベルは日常的に体をどれくらい動かしているかによって3段階に分けられます。
【身体活動レベルの基準】
レベル | 定義 |
---|---|
レベルⅠ(低い) | 生活の大部分を座って過ごし、あまり体を動かすことがない場合 |
レベルⅡ(普通) | 座っていることが多いが、職場内での移動や立っての作業、通勤・買い物・家事・軽いスポーツなどのいずれかを行う場合 |
レベルⅢ(高い) | 移動や立っての作業が多い仕事に従事している、または頻繁に運動を行う習慣がある場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
【年齢別の身体活動レベルの群分け(男女共通)】
年齢 | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
30〜49歳 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
50〜64歳 | 1.50 | 1.75 | 2.00 |
65〜74歳 | 1.45 | 1.70 | 1.95 |
70歳以上 | 1.40 | 1.65 | - |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
例えば在宅ワークで1日中座って過ごし、運動の習慣がない場合には、1.5を掛けることになりますね。
計算すると約1,905kcal(小数点以下で四捨五入)が1日当たりの推定必要カロリーだと分かります。
ただし、この式で求められるのはあくまで現在の体格で必要となる推定値です。
現在のご自分の体格が消費する量を摂取していると、体重は変わらないものと考えられます。
*2 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
カロリー計算に関しては下記も参考にしてください
1-3.健康的な体重を目指すためのカロリー
健康的な体重を目指したい、という方はご自分の身長に対する「標準体重」であった場合に必要なカロリーを摂取量の参考にするのが良いと考えられるでしょう。
標準体重とは「BMI」が22となる場合の体重のことで、統計上最も病気になりにくいとされています。
自分の身長に対する標準体重は[身長(m)の二乗]×22で求められます。
標準体重を目指すためにどれくらい摂取すれば良いのかは、生活習慣病の食事指導において用いられる体重1㎏当たりに必要な推定カロリー表から計算すると良いでしょう。
【体重1kg当たりの推定必要カロリー】
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 33.2kcal | 38.7kcal | 44.2kcal |
30〜49歳 | 32.9kcal | 38.4kcal | 43.9kcal |
50〜64歳 | 31.1kcal | 36.2kcal | 41.4kcal |
65〜74歳 | 30.0kcal | 35.2kcal | 40.4kcal |
75歳以上 | 29.0kcal | 34.2kcal | ‐ |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
例えば身長が160cmの女性の場合、標準体重は56.32kgです。
在宅ワークをしており体を動かす習慣のない25歳の方の場合、身体活動レベルⅠの体重1kg当たりの推定必要カロリーを掛け合わせると、1日の必要推定カロリーは約1,870kcal(小数点以下で四捨五入)となります。
健康のためにはこの数値を参考に摂取量を調節すると良いでしょう。
2.カロリーは摂り過ぎも減らし過ぎもNG
カロリーは私たちが生きていく上で必要なものです。
「我慢できなくてつい食べ過ぎてしまうんだよなあ」
「ダイエット中だからできるだけ減らしたい……」
という方も多くいらっしゃると思いますが、摂り過ぎても減らし過ぎても健康に良くない影響を及ぼしてしまう恐れがあります。
カロリーは減らせばいいものではありません
2-1.カロリー過多は肥満や生活習慣病の原因に
まず、カロリーの摂り過ぎが肥満につながることは皆さんご存知でしょう。
カロリーと体重の関係は蛇口から出てくる水と水槽、水槽から出ていく水でたとえることができます。
上の蛇口から出て水槽に入る水が摂取カロリー、水槽の下から出ていく水が消費カロリー、水かさが体重です。
肥満になる主な原因は、消費しきれなかった分が脂肪として体内に蓄えられてしまうことにあります。
肥満は高血圧や糖尿病、脂質異常症、心臓の病気など生活習慣病のもととなるため、日頃から高カロリーな食事をしている方は十分気を付けてくださいね。
自分が肥満の状態にあるかどうかは、BMIを基準に判断してみましょう。
日本では、BMIの値に応じて以下のように肥満度が分類されています。
【肥満度分類】
BMI(kg/m2) | 判定 |
---|---|
18.5未満 | 低体重 |
18.5 以上 25.0未満 | 普通体重 |
25.0 以上 35.0未満 | 肥満 |
35.0 以上 | 高度肥満 |
日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2016」をもとに執筆者作成
もしBMIが25を超えていた場合は肥満に当てはまります。
自分の健康のためにも、食事や生活習慣の見直しをしましょう。
BMIに関しては下記も参考にしてください
2-2.過度なカロリー制限は摂食障害など病気を招くことも
摂り過ぎだけでなく、過剰なカロリー制限も健康に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。
食事を我慢することに伴いストレスがたまるのはもちろんですが、身体に必要な栄養が体に不足し、便秘や貧血、月経不順などになってしまうリスクも存在しています。
さらに深刻になると、拒食症や過食症などの摂食障害になってしまう場合もあります。
摂食障害が長く続くと低血圧や不整脈などの多くの症状を併発することもあるため、「痩せたい」と思っても無理なダイエットはしないように注意しましょう。
3.健康的に痩せるための工夫
「摂り過ぎも減らし過ぎも良くないなら、どうやって体型をコントロールしたらいいんだろう?」
どうやってカロリーと上手に付き合っていけばいいのか、そこが一番気になるポイントですよね。
ここからは、摂取と消費のバランスを整えて健康的に理想の体型を目指す方法を詳しく解説していきます。
【健康的に痩せるための3つの工夫】
- 摂り過ぎを避ける
- 体を動かして消費を増やす
- カロリー源になる栄養素のバランスに気を付ける
健康的に痩せるには下記も参考にしてください
工夫1 カロリーの摂り過ぎを避ける
痩せるためにまず思い浮かぶのが摂り過ぎを避けることですよね。
普段の食生活で摂り過ぎている方は食事の量・内容を適切にすることを心掛けましょう。
食事の際には食物繊維を積極的に摂取するのがおすすめです。
食物繊維はカロリーが低く、 余分な脂質や糖質を吸着し体外への排出を促すはたらきがあります。
また食物繊維を多く含む食べ物は噛み応えがあるため満腹感を得やすいと考えられますよ。
食事の際にはよく噛むことも食べ過ぎを避けるための一つのコツだといえるでしょう。
工夫2 体を動かして消費カロリーを増やす
理想の体型を目指すためには、摂取を減らすことだけではなく消費することにも目を向ける必要があります。
適度に体を動かす習慣をつけて、日々の消費カロリーを増やしていきましょう。
生活に取り入れやすく、継続しやすい運動としておすすめなのがウォーキングです。
ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪を燃料とするため、体脂肪の減少が期待できますよ。
通勤時に一駅手前で降りてみたり、いつもの道を遠回りしたりして、歩く距離を増やしてみると良いでしょう。
運動によるダイエットは下記も参考にしてください
工夫3 カロリー源になる栄養素のバランスに気を付ける
摂取と消費のバランスを考えるだけでなく、エネルギー源となる炭水化物、たんぱく質、脂質をバランス良く摂ることも大事です。
厚生労働省では、1日に摂取するカロリーのうち、それぞれの栄養素が占めるべき割合の目安を示しています。
【エネルギー産生栄養素の摂取バランス(単位:%)】
年齢 | 炭水化物 | 脂質(かっこ内は飽和脂肪酸) | たんぱく質 |
---|---|---|---|
18〜49歳 | 50〜65% | 20〜30(7以下)% | 13〜20% |
50〜64歳 | 50〜65% | 20〜30(7以下)% | 14〜20% |
65歳以上 | 50〜65% | 20〜30(7以下)% | 15〜20% |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
「栄養素のバランスっていわれても、どれくらいの量がちょうど良いのかわからない……」
と思ってしまいますよね。
そんな方には、農林水産省と厚生労働省が共同で作成した「食事バランスガイド」がおすすめです。
炭水化物を含む主食や、たんぱく質をしっかり摂取できる主菜など、それぞれの目安となる量が提示されているので、食事を摂るときの参考になりますよ。
農林水産省 厚生労働省「食事バランスガイド」
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4.理想の体型のためのカロリー摂取について まとめ
カロリーといえば「悪者」のイメージがあるかもしれませんが、やみくもに摂取量を減らせばいいというものではありません。
摂り過ぎは肥満の原因になりますが、極端に減らすと健康に悪影響を及ぼすリスクもあるのです。
健康的に理想の体型を手に入れるためには、自分が1日に必要とする量をきちんと把握する必要があります。
その上で、食事や運動などの日々の生活習慣を見直して、摂取と消費のバランスを整える工夫をしてみましょう。
この記事をきっかけに、ぜひ今日から理想の体型を目指してみてくださいね。