「冷え性は何が原因で起こるんだろう?」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれません。
冷え性は特別な異常が認められないにもかかわらず体が冷えている状態のことをいいます。
筋肉量の低下やホルモンバランスの乱れ、自律神経の乱れなどが原因で引き起こされます。
この記事では冷え性の原因について解説します。
また冷え性の男女による違いや改善法についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.冷え性とは
冷え性とは気温にかかわらず慢性的に体が冷え温まりにくくなる状態です。
ヒトの体には気温の変化に応じて体温を一定に保つはたらきがあります。
気温が高く体温が上がっている場合は、血管を拡張させ多くの血液を流し皮膚の表面温度を上げたり、汗をかいたりして熱を放出することで体温を上げないように調節します。
一方で気温が低く体が寒さを感じている場合は、血管を収縮させて血流を減らし、体内の熱を外に逃がさないようにします。
しかしこうした体温調節機能がうまくはたらかないと、体が冷え温まりにくくなってしまうのです。
冷え性では体の冷えだけではなく、下痢や頭痛などの症状が現れる場合もあります。
また冷え性には手足が冷えるタイプや内臓が冷えるタイプなどがあり、それぞれ原因や症状に違いがあるといわれています。
冷え性のタイプについては後の章で詳しく解説します。
2.冷え性の原因
「そもそも冷え性はどうして起こってしまうの?」
なぜ冷え性になってしまうのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
この章では冷え性の原因について詳しく解説します。
原因1 筋肉量の低下
筋肉量が少ないと体の熱がつくられにくくなり、冷え性を引き起こします。
筋肉は体を動かすはたらきに加え、熱をつくり体温を保つはたらきもあります。
筋肉が熱をつくる仕組みには、エネルギー代謝と呼ばれる、体内でエネルギーをつくり出す作用が関わっています。
ヒトの体は筋肉を伸ばしたり縮めたりすることで動いていますが、筋肉が収縮するにはエネルギーが必要です。
このエネルギーはいくつかの栄養素から生み出され、最終的には熱として体から放出されます。
しかし、筋肉量が低下するとエネルギー代謝が低下し、生み出される熱が少なくなるため、体が冷えやすくなるといわれています。
また筋肉は血液を全身に循環させることで体を温めてくれます。
筋肉が伸縮することにより、ポンプのように血液を全身の隅々にまで循環させているのです。
しかし運動不足や加齢などで筋肉量が少ない方は、筋肉による血液の循環がうまくいかず、手足などの末端が冷えやすくなります。
筋肉は熱をつくり、血液を隅々まで巡らせることで全身を温めているのですね。
なお女性は男性よりも筋肉量が少なく、冷えやすく温まりにくい脂肪が多いことから、冷え性になりやすいといわれています。
また男性は女性よりも冷え性の可能性は低いとされますが、加齢などで筋肉量が減少することで冷え性のリスクが高まります。
原因2 薄着や衣類による締め付け
薄着や衣類による締め付けも冷え性を引き起こす原因の一つと考えられます。
寒い季節に肌の露出が多い服や薄手の服を着ていると、体を冷やしてしまいます。
体が冷えると体温維持のために血管が収縮し、手足への血流を減少させて血液を体の中心に集めようとします。
そのため手先や足先などの末端まで血液が十分に行き渡らなくなり、冷え性を招いてしまうのです。
現代では寒い季節に限らず、屋外と屋内の気温差が激しい環境が少なからず存在します。
夏の冷房の効いた室内と屋外の気温差に体がついていかないという経験のある方もいらっしゃるでしょう。
薄着では体温調節が追い付かない場合も多いため、注意が必要です。
加えて、きつい衣類などで締め付けられると、血行不良から寒さを感じる皮膚感覚が鈍ることがあります。
これによって体温調節がうまくいかなくなると、冷えにつながってしまいます。
特に女性は肌の露出が多い服や締め付けの強い服を着用することが男性よりも多い傾向があるため、血行を悪くさせ冷え性になりやすいと考えられます。
普段着ている衣類が冷え性の原因となっている可能性があるのですね。
原因3 貧血
貧血も冷え性を招く原因と考えられます。
貧血とは血中の赤血球に含まれる血色素「ヘモグロビン」の濃度が低下した状態で、主に鉄が不足することで生じます。
ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ重要なはたらきをします。
鉄が不足するとヘモグロビンが減るため、酸素が体内に行き渡らなくなり頭痛や手足の冷えなどの症状が現れます。
特に女性は月経血によって鉄が損失するため、貧血になりやすく冷え性を招きやすいといわれています。
貧血だけではなく冷え性を予防するためにも、鉄不足には注意したいものですね。
貧血については以下の記事で詳しく解説しています。
貧血とは?症状や種類別の原因、予防のためのポイントを詳しく解説
原因4 自律神経の乱れ
自律神経が乱れることで冷え性が生じることがあります。
自律神経は血管の収縮や拡張に関わり、血流の量を増減させることで体温調節を行っています。
しかしストレスや不規則な生活などが原因で自律神経が正常にはたらかなくなると、温度調節がうまくいかなくなり冷え性を引き起こします。
また、冷暖房により屋内と屋外の気温差が大きくなっている環境も自律神経の乱れにつながります。
特に夏場の冷蔵が効き過ぎている環境は、冷え性を招くことがあるため注意が必要です。
原因5 ホルモンバランスの乱れ
女性はホルモンバランスの乱れが原因で冷え性になることがあります。
ホルモンバランスの乱れは月経、出産、更年期などのタイミングで起こります。
女性ホルモンは、脳の視床下部や下垂体から分泌されるホルモンにより、分泌が調節されています。
しかし更年期などにより卵巣から分泌される女性ホルモンが減少すると、これを補おうとして視床下部から性腺刺激ホルモンが過剰に分泌されます。
また、無理なダイエットやストレスも、女性ホルモンの分泌に異常を来す原因となります。
こうしてホルモン分泌のバランスが崩れると、自律神経のはたらきに悪影響を及ぼします。
その結果、血管の拡張や収縮させる体温調節のはたらきが抑えられ、血流が滞り冷えやすくなるのです。
女性が冷え性になりやすいのは貧血だけではなくホルモンバランスが乱れることも原因といえますね。
[1] 公益社団法人 日本産科婦人科学会「更年期障害」
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「更年期障害」
3.冷え性のタイプ
冷え性には手足が冷えるもの、下半身が冷えるもの、全身が冷えるものといったさまざまなタイプがあります。
それぞれのタイプは原因や症状が異なります。
この章では冷え性のタイプについて詳しく解説します。
タイプ1 手足が冷える
冷え性には手足が冷えるタイプがあります。
このタイプは若い女性に多いといわれています。
無理なダイエットで食事量を少なくしたり運動不足で筋肉量が減少したりすると、体を温めるエネルギーが不足するため熱が手足まで行き渡らなくなり冷えが生じると考えられています。
手足が冷えるタイプの冷え性では肌荒れ、霜焼け、月経トラブルなどの症状が現れることがあります。
また手足の冷えが生じると同時に肩こりや頭痛などに悩まされることもあります。
手足の冷えやこれらの症状を防ぐために、極端な食事制限を避け適度な運動を心掛けましょう。
タイプ2 内臓が冷える
内臓が冷えるタイプの冷え性は、手足や体の外側は温かい一方で内臓だけが冷えてしまうものです。
ストレスなどの影響で自律神経が乱れることによって、内臓に血液が行き渡らず冷えが生じます。
このタイプの冷え性は下痢や倦怠(けんたい)感などの症状が現れやすく、風邪をひきやすいことが特徴です。
また冷え性を自覚しにくいことから「隠れ冷え性」とも呼ばれます。
胃腸が弱い方、筋肉量が少ない方、冷たい飲食物をよく摂取する方、全身に汗をかきやすい方は内臓が冷えやすいため注意が必要です。
タイプ3 下半身が冷える
下半身の血流が滞ることで、お尻や足などが冷えるタイプの冷え性もあります。
このタイプの冷え性では、長時間同じ姿勢を続けていることで下半身の筋肉が硬くなり、その結果、下半身の血行が悪くなり冷えが生じます。
また姿勢の悪さ、骨盤のゆがみ、運動不足も下半身が冷える原因になると考えられています。
下半身が冷えると、手は温かいときでも足が冷たいと感じたり、上半身のみに汗をかきやすくなったりします。
特にデスクワークをしている方は下半身の血行が悪くなりやすいため、対策しておきたいですね。
タイプ4 全身が冷える
全身が冷えるタイプの冷え性の方は常に体温が低く、気温に関係なく冷えを感じます。
常に冷えているため、冷え性になっていることを自覚にしくいのが特徴です。
このタイプの冷え性は主に筋肉量の低下によって起こります。
また生活習慣の乱れや体質、薬の服用、甲状腺機能の低下などが原因となる場合もあります。
全身が冷えると、体がだるくなったり、風邪をひきやすくなったり、下痢をしやすくなったりします。
このタイプの冷え性は筋肉量が低下しやすい高齢者や不規則な生活をしている若者に多い傾向があるとされています。
4.冷え性を改善するためのポイント
「冷え性を改善するためにはどうしたら良いんだろう?」
冷え性だと気付いたら早めに改善したいものですよね。
冷え性を改善するには、ご自身の冷えのタイプや原因を把握しそれに合った対策をすることが重要です。
この章では冷え性を改善するためのポイントをご紹介します。
ポイント1 運動する習慣を付ける
適度な運動は冷え性の改善に有効だと考えられます。
筋肉量の低下は冷え性の大きな原因です。
まずは筋トレを行い、筋肉量を増やすことを目指しましょう。
筋肉のなかでもふくらはぎは体の末端の血液を心臓に戻すポンプとして重要な役割を持っています。
手足など体の末端が冷えるタイプの方は意識して鍛えると良いでしょう。
冷え性の改善におすすめのトレーニングは「スクワット」です。
スクワットはふくらはぎに加えて体のなかで一番大きい筋肉である太ももを鍛えられるため、筋肉量の増加に効果的です。
スクワットのやり方について詳しく知りたい方は以下でご紹介しています。
スクワットは痩せる?効果や消費カロリー、ダイエットのコツも解説
またウォーキングなどの有酸素運動にも体を温める効果が期待できます。
ウォーキングのように全身を動かす有酸素運動を行うと、血行が良くなり冷えの改善につながります。
運動習慣のない若い女性を対象とした小規模試験の結果、2週間のウォーキングで冷え性が改善し深い眠りも増加することが報告されました[3]。
そうはいっても、家事や仕事で忙しく運動する時間がとれない場合もありますよね。
その場合はエレベーターではなく階段を使う、腕を大きく振り大股で歩くといったように、日常生活のなかで意識的に体を動かすこともおすすめです。
ご自身の生活習慣に合わせて、体を動かす習慣を身に付けるように心掛けてくださいね。
[3] Yamazaki F, et al.「A two-week exercise intervention improves cold symptoms and sleep condition in cold-sensitive women」(J Physiol Anthropol. 2023 Sep 29;42(1):22.)
ポイント2 湯船につかる
お風呂はシャワーだけで済まさず、湯船につかることが重要です。
ぬるめのお湯に少し長めにつかることで、血行が良くなり体が温まります。
半身浴では上半身が冷えるため、冷え性改善には肩までしっかりつかるようにしましょう。
湯船につかる時間のない場合は、足湯をするだけでも体を温められるといわれています。
できるだけ毎日湯船につかり体を温めることを意識してくださいね。
ポイント3 栄養バランスの良い食事を摂る
栄養バランスの良い食事を摂ることも冷え性の改善に有効といわれています。
食事で摂った栄養素は体内に吸収・分解され、その一部は熱となって消費されます。
このように食後に一部の栄養素が分解されて熱が生まれることを「食事誘発性熱産生」といいます。
ご飯を食べた後に体が温かくなるのは食事誘発性熱産生が起こるからなのですね。
なお、食事誘発性熱産生で生み出されるエネルギー量は栄養素によって異なります。
たんぱく質のみを摂取した場合はエネルギー摂取量の約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%が熱になります[3]。
通常の食事ではこれらの栄養素が混ざっているため、熱になるのはエネルギー摂取量の約10%程度です[4]。
冷え性を改善するには、栄養バランスの良い食事を基本とし毎食たんぱく質を十分に摂ることが重要です。
たんぱく質を多く含む食品については以下の記事でご紹介しています。
たんぱく質を多く含む食べ物は?摂取量の目安やおすすめの食材を解説
また食事ではよく噛んで食べることもポイントです。
よく噛んで食べると、噛まずに飲み込む場合よりも食事誘発性熱産生が高くなるといわれています。
さらに朝食は夕食よりも食事誘発性熱産生が高いとされているため、朝食をしっかり食べるようにしましょう。
また女性で貧血が原因で冷えを感じている場合は、鉄を多く含む食品を意識的に摂取してくださいね。
鉄を多く含む食品については以下の記事でご紹介しています。
鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「食事誘発性熱産生/DIT」
ポイント4 規則正しい生活をする
生活リズムを整えることも冷え性の改善には有効です。
不規則な生活をしていると、自律神経が乱れて体温調節がうまくできなくなり冷え性を招きます。
そのため、冷え性の改善には規則正しい生活をすることが重要なのです。
毎食決まった時間に食べる、就寝や起床時間をいつも同じにするといったように生活リズムを一定にすることで、自律神経が整いやすくなります。
ポイント5 気候に合わせた衣類を着る
冷え性を改善するためには、気候に合わせた服装にすることもポイントです。
気温が低いときは肌の表面から熱が逃げ、冷えを感じやすくなります。
そのため寒さを感じやすい時期は肌の露出の多い衣類の着用を控え、気温に合わせた服装にしましょう。
特に屋外と屋内の気温差が激しい環境では、体温調節が追い付かなくなりやすいため注意が必要です。
夏でも薄手のカーディガンなどの上着を持ち歩き、屋外と屋内の気温差に対応できるようにしましょう。
勤務先などの室温が低過ぎる場合は、膝掛けやレッグウォーマーを用意しておくことがおすすめです。
また体を締め付けない衣類を着用することもポイントとして挙げられます。
ストッキングやきつい下着などは体を締め付けるため、血行が悪くなり冷えを感じやすくなります。
またきつい靴も血行を悪くします。
きついと感じる衣類や靴は避けるように心掛けてくださいね。
ポイント6 ストレスをためない
冷え性の改善には、ストレスをためないことも重要です。
ストレスは体温調節をする自律神経に影響を及ぼします。
そのため、十分な睡眠をとったり規則正しい生活をしたりして、ストレスをためないように意識しましょう。
また運動をする、ゆっくり過ごす、好きな音楽を聴くなど、自分に合ったストレス解消法を見つけておくこともおすすめです。
ポイント7 ストレッチをする
ストレッチも冷え性の改善に有効です。
冷え性になると筋肉がこわばり、血流が滞りやすくなります。
ストレッチを行いこわばった筋肉をほぐすことで、血流が促進され冷え性の改善が見込まれます。
特に手足や下半身が冷えるタイプの方はストレッチを行うと良いでしょう。
冷え性を改善するストレッチとしては、かかとを上げ下げする「爪先立ち」、爪先を上げ下げする「かかと立ち」などが挙げられます。
これらのストレッチは座ったままでも行えるため、仕事中や電車などの移動中でも実践できますよ。
またマッサージをするのもおすすめです。
手や足をもみほぐすことで、血流が良くなり冷え性の改善が期待できます。
5.冷え性の原因についてのまとめ
冷え性とは体が冷え温まりにくくなった状態のことです。
冷え性は下痢や頭痛などさまざまな不調を招きます。
冷え性の主な原因は、筋肉量の低下、薄着や衣類による締め付け、貧血、自律神経の乱れ、ホルモンバランスの乱れです。
特に女性は男性よりも筋肉量が少なく、ホルモンバランスの乱れや貧血を引き起こしやすいため、冷え性になりやすいことが知られています。
また冷え性は手足や内臓など冷える部位によってさまざまなタイプがあり、それぞれ原因や症状が異なります。
冷え性を改善するためには、運動をする、湯船につかる、ストレッチを行うといったことで血流を良くすることが重要です。
また規則正しい生活をしてストレスをためないようにすることも有効といわれています。
この記事を冷え性の改善に役立ててくださいね。