「目まいや頭痛がすることがあるけど、これって貧血なのかな?」
「どうして貧血になるんだろう?」
貧血の詳しい症状や原因について知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
貧血とは赤血球の数が少なくなった状態のことで、めまいや頭痛などの症状が現れます。
また貧血の原因は複数あるため、それぞれに合った対策を講じる必要があります。
この記事では主に貧血の種類とその原因を解説していきます。
予防のためのポイント、症状が出た際の対処法などもご紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.貧血とは
貧血とは血液中の赤血球の数が少なくなった状態のことで、目まい、動悸(どうき)、息切れなどの症状が現れることがあります。
赤血球のなかにはヘモグロビンと呼ばれるたんぱく質があり、肺で受け取った酸素を全身に運ぶ役割を担っています。
そのため、なんらかの理由で赤血球の数が減るとヘモグロビンの数も減ってしまい、酸素供給が不十分になります。
ヒトが活動するには酸素が必要不可欠です。
そのため貧血になると酸素の不足分を補おうと心臓や肺が無理をしてしまい、動悸や息切れが起こります。
またこれらの他にも、頭痛、立ちくらみ、胸の痛み、ふらつきなどの症状が現れることがあります。
貧血の症状が起こるのは、全身に酸素が十分に行き渡らなくなるためなのですね。
次の章では貧血の種類とその原因を詳しくみていきましょう。
2.貧血の種類とその原因
「どうして貧血になってしまうんだろう?」
このように貧血になる原因が気になるという方もいらっしゃるかもしれません。
貧血にはいくつか種類があり、それぞれ原因が異なります。
この章では貧血の種類とその原因について詳しくご説明します。
2-1.鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は体内の鉄が不足することで起こる貧血です。
鉄不足は貧血の理由として最も一般的なものであるため、ご存じの方も多いかもしれませんね。
なぜ鉄が不足すると貧血になってしまうのかというと、鉄は赤血球の材料になるからです。
鉄は「必須ミネラル」の一種で、食事から摂取する必要のある栄養素です。
鉄が不足すると赤血球の数も減ってしまい、貧血の症状が現れるというわけです。
また鉄欠乏性貧血になると、爪が反り返ってスプーンのようになる「スプーン状爪」、氷などを無性に食べたくなる「異食症」などが見られることもあります。
進行が緩やかで兆候をつかみにくいことも、鉄欠乏性貧血の厄介なところです。
乳幼児や月経による血液の損失がある女性、妊産婦などは鉄不足に陥りやすいとされています。
摂取不足を回避する目的で厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で鉄の摂取推奨量を定めています。
月経のある女性の1日当たりの鉄の摂取推奨量は、10〜14歳で12.0mg、15〜49歳で10.5mg、50〜64歳で11.0mgとなっています[2]。
これに加えて妊娠初期には2.5mg、中期から後期にかけては9.5mg、授乳期には2.5mgの付加量が設定されています [2]。
実際の摂取量もみてみましょう。
厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、妊娠中の女性の平均摂取量は6.7mg、授乳中の女性の平均摂取量は6.5mgとなっています[3]。
推奨量と実際の摂取量を比べてみると、月経のある女性や妊娠中・授乳中の方の摂取量が明らかに不足していることが分かりますね。
また、ダイエットをしている女性も注意が必要です。
極端な食事制限を行って鉄が十分に摂取できないと、鉄欠乏性貧血になる恐れがあります。
男性の場合はどうでしょうか。
18〜65歳の男性の1日当たりの鉄の摂取推奨量は7.5g、75歳以上の場合は7.0gです[2]。
男性の鉄の平均摂取量は20歳以上で8.3mgとなっています[3]。
このことから男性の摂取量が不足している傾向はありません。
[1] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「 栄養に関する基礎知識」
[2] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[3] 厚生労働省「 令和元年 国民健康・栄養調査報告」
2-2.巨赤芽球性貧血
巨赤芽球性貧血はビタミンB12や葉酸が不足することで起こる貧血です。
ただし、ほとんどの場合ビタミンB12が不足して起こるといわれています。
ビタミンB12と葉酸はどちらもビタミンの仲間です。
これらは赤血球の形を維持するのに必要な栄養素であるため、不足すると新たに血液をつくることができなくなります。
巨赤芽球性貧血では通常の貧血の症状に加えて「萎縮性胃炎」、「ハンター舌炎」などの症状が現れることがあります。
それではビタミンB12と葉酸はどのような場合に不足するのでしょうか。
一般的な食生活を送っていれば、ビタミンB12が不足することはほとんどありません。
しかし、完全菜食主義はビタミンB12不足を招く危険があります。
その他の原因としては、ビタミンB12に対して自己免疫機能がはたらいてしまい、吸収できなくなることが挙げられます。
また、すでに萎縮性胃炎になっている方や手術で胃を切除した方はビタミンB12の吸収が悪くなることが分かっています。
葉酸も一般的な食生活を送っている限り、不足することはほとんどありません。
しかし、葉酸を大量に消費する成長期の子どもは葉酸不足による巨赤芽球性貧血になりやすいことが分かっています。
また、体内での需要が高まる妊娠中・授乳中や、大量に飲酒をする習慣がある場合には不足することがあるので注意してくださいね。
2-3.過剰な出血による貧血
過剰な出血によって貧血になることもあります。
けがや手術、出産、血管の破裂など、急速に血を失う場合は心臓発作や脳卒中などの症状が現れることがあります。
短い間に大量に出血すると血圧が低下し、体内への酸素供給量が急激に減少します。
そうなると心臓発作や脳卒中など、命に関わる事態に発展しかねません。
しかし、そういった事態はむしろ例外的で、「潰瘍」や「ポリープ」などによって引き起こされる慢性的な出血が主な原因です。
こういった少量の出血は自覚できないことも多いので厄介ですよね。
女性にとって身近なところでは月経による重度の出血も貧血の原因になり得ます。
2-4.溶血性貧血
溶血性貧血は赤血球が過剰に破壊されることで起こる貧血です。
赤血球が破壊されることを「溶血」といいます。
寿命が近いものや寿命を迎えた赤血球は骨髄、脾臓(ひぞう)、肝臓に取り込まれて破壊されます。
通常は血液が産生されるペースが破壊されるペースを上回っていますが、なんらかの理由で破壊のペースが上回ってしまうと貧血になります。
赤血球自体に問題があることもありますが、多いのは赤血球を壊す病気によるものです。
溶血性貧血にもいくつか種類があるといわれていますが、代表的なものは赤血球を体内に入り込んだ異物であるかのように破壊してしまう「自己免疫性溶血性貧血」です。
その他にも「再生不良性貧血」「骨髄異形成症候群」「白血病」「多発性骨髄腫」などの血液の病気が原因で溶血性貧血になることが分かっています。
3.貧血を予防するためのポイント
「貧血を予防するためにはどうしたら良いんだろう?」
という点が気になりますよね。
栄養素の不足が原因でなってしまう貧血については、食生活を改善することで予防することができるかもしれません。
そこでこの章では鉄分、ビタミンB12、葉酸が多く含まれる食品をご紹介します。
ポイント1 鉄分の摂取を心掛ける
貧血に最も多い鉄欠乏性貧血を予防するためには、鉄分を摂取することが重要です。
鉄は肉や魚などの動物性食品、野菜や穀物などの植物性食品どちらからも摂取することができます。
動物性食品では、牛・豚・鶏のレバーやしじみなどの貝類などに鉄が多く含まれています。
【鉄を多く含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
煮干し(かたくちいわし) | - | 18.0mg |
豚レバー | 生 | 13.0mg |
鶏レバー | 生 | 9.0mg |
しじみ | 生 | 8.3mg |
ビーフジャーキー | - | 6.4mg |
赤貝 | 生 | 5.0mg |
ほっき貝 | 生 | 4.4mg |
牛レバー | 生 | 4.0mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
植物性食品ではアーモンドや納豆、小松菜などに鉄が多く含まれます。
【鉄を多く含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
アーモンド | - | 3.6mg |
納豆 | - | 3.3mg |
小松菜 | 生 | 2.8mg |
枝豆 | 生 | 2.7mg |
サラダ菜 | 生 | 2.4mg |
水菜 | 生 | 2.1mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
また、食事から十分に摂取することが難しい場合は、サプリメントを活用するという方法もあります。
鉄は動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」と植物性食品に多い「非ヘム鉄」に分けられます。
ヘム鉄の方が非ヘム鉄よりも吸収効率が良いので、効率性を重視するなら動物性食品をおすすめします。
また動物性たんぱく質やビタミンCには非ヘム鉄の吸収を促すはたらきがあります。
そのためヘム鉄ほどではないにせよ、たんぱく質やビタミンCを一緒に摂取すれば、非ヘム鉄からも鉄を効率良く摂取できますよ。
たんぱく質についてについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
たんぱく質とは?体内でのはたらきや食事摂取基準、豊富な食品を紹介
ビタミンCについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンCはどんな食べ物に含まれるの?健康維持に必要な摂取量を解説
逆にポリフェノールやフィチン酸を含む食品、繊維質の食品などは非ヘム鉄の吸収を阻害することが分かっています。
ポリフェノールはほとんどの植物に含まれる苦みや色素の成分、フィチン酸は米や小麦などに含まれている成分です。
ポリフェノールについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ポリフェノールとは?体への効果と摂取できる食品・飲み物を解説!
ポイント2 ビタミンB12と葉酸の摂取を心掛ける
巨赤芽球性貧血はビタミンB12と葉酸が不足することで起こります。
通常の食事をしていてビタミンB12が不足することはほぼありません。
また葉酸に関しても日本人の摂取量が大幅に不足している傾向は見られません。
そうはいっても、日々の食生活を考える上でこれらの栄養素がどのような食品から摂取できるのかを知っておけば安心ですよね。
まずはビタミンB12を多く含む食品をご紹介します。
ビタミンB12を多く含む動物性食品は以下のとおりです。
【ビタミンB12を多く含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
しじみ | 生 | 68μg |
あさり | 水煮 | 64μg |
赤貝 | 生 | 59μg |
牛レバー | 生 | 53μg |
いくら | 生 | 47μg |
鶏レバー | 生 | 44μg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ビタミンB12は植物性食品にはほとんど含まれておらず、しじみやあさりなどの貝類、レバーなどの動物性食品に多く含まれます。
そのため徹底した菜食主義者の方は食事からのビタミンB12の摂取が不足してしまう場合があります。
ビタミンB12についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB12を含む食べ物は?過不足の影響と食事摂取基準も解説
また、葉酸を多く含む食品は以下のとおりです。
【葉酸を多く含む食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
焼きのり | - | 1,900μg |
鶏レバー | 生 | 1,300μg |
牛レバー | 生 | 1,000μg |
青汁(ケール) | 粉末 | 820μg |
豚レバー | 生 | 810μg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
葉酸は牛・豚・鶏のレバーや焼きのり、青汁(ケール)などに多く含まれています。
大量の飲酒は葉酸の吸収および体内での処理を妨げるため、普段からたくさんお酒を飲む方は葉酸不足に陥りやすいとされています。
葉酸についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
4.貧血の症状が出た際の対処法
「貧血になってしまったら、どうすれば良いのかな?」
貧血の症状はいつ現れるか分かりません。
そのため、いざというときに備えて対処法を知っておくことが重要です。
ふらつく、目まいがする、意識が薄れていくという感覚があるときはその場にすぐしゃがみ、症状が落ち着くのを待ちましょう。
無理に立っていると症状が悪化したり、転倒したりする恐れがあります。
症状が落ち着いてもすぐには立ち上がらず、一呼吸置いてから動き始めてください。
普段から意識的に手すりのそばや歩道の奥側を歩くことで、突発的な貧血によるけがのリスクを下げることができます。
また手足のストレッチやマッサージなどを行うと、貧血によるだるさを軽減できるといわれています。
貧血の症状が現れたときは無理をせずに休むことが重要なのですね。
5.不安を感じたら医療機関を受診しよう
不安を感じたら医療機関を受診することをおすすめします。
その際、あらかじめ具体的な症状をまとめておくと便利です。
手足の痺れや知覚の鈍化、血の混じった便が出る、月経でないときや閉経後に出血がある、吐いてしまうなどの症状がある場合も貧血が疑われます。
また腎臓病や甲状腺の異常、がん、「関節リウマチ」などの病気が原因で貧血になることもあります。
貧血だと思って検査を受けてみたら思わぬ病気が見つかることもあるかもしれません。
病気の早期発見・早期治療のためにも、体調が悪いときは一人で悩まず医師に相談しましょう。
6.貧血についてのまとめ
貧血とは血液中の赤血球の数が少なくなった状態のことです。
赤血球は全身に酸素を運ぶ役割を担っているため、数が減ると酸素供給が不十分になります。
その結果、目まいや息切れ、頭痛、動悸などの症状が現れます。
貧血にはいくつか種類があり異なる原因がありますが、代表的なのは「赤血球の材料である鉄が不足することによって起こる鉄欠乏性貧血です。
その他にも葉酸とビタミンB12の不足、過剰な出血、必要以上に赤血球が破壊されることでも貧血は起こります。
栄養素の不足による貧血を予防するには赤血球のもとになる鉄やビタミンB12、葉酸を積極的に摂取すると良いでしょう。
転んだり、症状が悪化したりする危険があるので、貧血になってしまったときは無理をせず、しゃがんで休んでください。
不安ならためらわず医療機関を受診することをおすすめします。
この記事を貧血予防のために役立ててくださいね。