「50代の血圧の正常値ってどれくらいなのかな?」
このように気になっている方も多いでしょう。
実は血圧の正常値はどの年代でも同じです。
高過ぎたり低過ぎたりする血圧は健康に悪影響を及ぼすため、正常な範囲内に保つことが重要です。
しかし、50代の方の血圧は正常値よりも高い傾向にあることが分かっています。
ご自身の血圧が高めの場合、どのように対処すれば良いのか気になるところですよね。
そこでこの記事では、血圧の正常値や50代の平均値、高血圧を予防・改善するコツをご紹介します。
1.血圧の基礎知識
「そもそも血圧ってどういうものなんだろう?」
血圧という言葉を見聞きする機会はよくありますが、実際には血圧がどういうものなのか、正常値を外れているとどのような問題があるのか詳しく知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
血圧とは心臓から出た血液が動脈という血管の内側にかける圧力のことです。
血圧には2種類の数値があります。
血圧を測定した際に、二つの数値が記録されているのを見たことがあるという方もいらっしゃるでしょう。
血圧は心臓が収縮し血液を送り出したときに最も高くなり、このときの血圧を「収縮期血圧(最高血圧)」といいます。
これがいわゆる「上の血圧」です。
一方、心臓が広がったときには血圧は最も低くなり、このときの血圧を「拡張期血圧(最低血圧)」といいます。
「下の血圧」という呼び方にはなじみがあるかもしれませんね。
血圧を測定する際には、収縮期血圧と拡張期血圧の両方の数値をもって正常かどうかを判断することになります。
この章では血圧の正常値はどれくらいなのか、正常値から外れるとどうなるのかについて解説します。
1-1.血圧の正常値
「50代の場合、血圧がどれくらいなら健康といえるんだろう?」
血圧の正常値はどれくらいなのか気になりますよね。
実は血圧の正常値はどの年代でも同じです。
病院で測定した場合の血圧の正常値は、収縮期血圧が120mmHg未満かつ拡張期血圧が80mmHg未満です[1]。
血圧にはいくつかの基準値が設けられているので、病院で測定した場合の血圧(診察室血圧)の基準値をまとめてご紹介しましょう。
【病院での測定した場合の血圧の基準値】
分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | 120mmHg未満 | かつ | 80mmHg未満 |
正常高値血圧 | 120~129mmHg | かつ | 80mmHg未満 |
高値血圧 | 130~139mmHg | かつ/または | 80~89mmHg |
I度高血圧 | 140~159mmHg | かつ/または | 90~99mmHg |
II度高血圧 | 160~179mmHg | かつ/または | 100~109mmHg |
Ⅲ度高血圧 | 180mmHg以上 | かつ/または | 110mmHg以上 |
かつては血圧診察室血圧の収縮期血圧が140mmHg未満かつ拡張期血圧が90mmHgであれば正常な血圧と考えられていましたが、近年では「正常高値血圧」や「高値血圧」の場合も注意が必要とされています[2]。
正常血圧の数値を超えると病気の発症率が高まることが、国内外の研究から分かっているのです。
ただし血圧は緊張していると一時的に上昇する傾向にあるため、病院での測定値は緊張から普段よりも少し高くなっている可能性があります。
そのため、家庭で測定した血圧も重要です。
家庭で測定する場合、基準値は診察室血圧より5mmHg低く設定されています[1]。
家庭で血圧を測定する場合の正常値は、収縮期血圧115mmHg未満かつ拡張期血圧75mmHg未満です[1]。
【家庭で測定した場合の血圧の基準値】
分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | 115mmHg未満 | かつ | 75mmHg未満 |
正常高値血圧 | 115~124mmHg | かつ | 75mmHg未満 |
高値血圧 | 125~134mmHg | かつ/または | 75~84mmHg |
I度高血圧 | 135~144mmHg | かつ/または | 85~89mmHg |
II度高血圧 | 145~159mmHg | かつ/または | 90~99mmHg |
Ⅲ度高血圧 | 160mmHg以上 | かつ/または | 100mmHg以上 |
なお、血圧は常に一定ではなくストレスや温度などによって変動するため、高血圧は繰り返し測定しても血圧が正常値より高い場合にのみ診断されます。
慢性的に血圧が正常値よりも高い高血圧の状態は、深刻な病気のリスクを高めます。
普段から血圧を測る習慣を付け、慢性的に正常値から外れている場合は医師に相談すると良いでしょう。
1-2.血圧が正常値を外れている場合のリスク
「血圧が正常値から外れるとどうなるのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは高血圧が健康に及ぼすリスクについてご説明しましょう。
血圧が高い状態が続くと血管に負担がかかり動脈硬化につながります。
動脈硬化とは動脈という血管が厚く硬くなった状態で、進行すると脳出血や脳梗塞、大動脈瘤(りゅう)、心筋梗塞などのさまざまな重篤な病気の原因となります。
日本人の高血圧の患者数は数十年前に比べると減少していますが、令和元年の時点でも20歳以上の約半数は高血圧です[3]。
高血圧にはほとんど自覚症状がなく、気付かないまま放置していると命に関わる危険を招いてしまうので注意が必要です。
また、血圧が正常値よりも低い状態を「低血圧」といいます。
低血圧は一般的に収縮期血圧が100mmHg未満の状態のことです[4]。
低血圧になると各臓器へ送られる血液量が減少するため、立ちくらみや目まい、頭痛などといった症状が起こり、日常生活に支障を来すこともあります。
低血圧は高血圧に比べ心臓病などの命に関わる病気を引き起こすことはありませんが、さまざまな症状が現れるためつらい場合には医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
低血圧について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
血圧が低いとどんな症状が出る?低血圧の原因と自分でできる対処法
2.50代の血圧の平均値
「50代の血圧の平均値はどれくらいなんだろう?」
と気になる方もいらっしゃるかもしれません。
厚生労働省が実施した「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、50代の男女の診察室血圧の平均値は以下のとおりです。
【診察室で測定した場合の50代の男女の収縮期・拡張期血圧の平均値】
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
血圧を下げる薬の服用ありの方を含む | 131.7mmHg | 82.0mmHg | 123.7mmHg | 75.4mmHg |
薬の服用なし | 129.7mmHg | 81.0mmHg | 121.8mmHg | 74.5mmHg |
上記のとおり50代の血圧の平均値は、男性では収縮期血圧・拡張期血圧のどちらも正常値よりも高く、女性では収縮期血圧のみ正常値よりも高いことが分かります。
また50代の高血圧の割合は男性で38.9%、女性で19.7%となっており、それより若い年代と比較して高くなっています[5]。
年代が上がるにつれて高血圧の方の割合は増える傾向があるので、50代の方は日頃から高血圧を予防・改善することが重要といえます。
3.高血圧の原因
「そもそもなぜ高血圧になってしまうんだろう?」
と疑問に思った方もいらっしゃるでしょう。
高血圧は他の病気によって引き起こされる「二次性高血圧」と、生活習慣や遺伝によって引き起こされる原因のはっきりしない「本態性高血圧」に分けられます。
日本人の高血圧の多くは本態性高血圧です[6]。
本態性高血圧は塩分の摂り過ぎや飲酒、ストレス、遺伝などの原因が組み合わさって起こると考えられています。
また二次性高血圧は甲状腺や腎臓などの病気や、睡眠中に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群によって生じます。
この章では高血圧の原因について詳しく解説していきます。
原因1 塩分の摂り過ぎ
高血圧の原因として塩分の摂り過ぎが挙げられます。
日本人の食生活は塩分の摂取が多くなりやすい特徴があります。
塩分を摂り過ぎると血圧が上昇するのは、「ナトリウム」というミネラルのはたらきによるものです。
ナトリウムはヒトの体に必要なミネラルの一種で、主に食塩(塩化ナトリウム)の形で摂取されます。
細胞外液の浸透圧を調節するはたらきを持ちますが、摂り過ぎると高血圧を引き起こすとされます。
通常、ナトリウム濃度は体内で一定に保たれていますが、塩分を過剰に摂取すると体内のナトリウム濃度が高くなりそれを下げるために体内に水分をため込みます。
それにより血液量が増加し血管の壁を押す力が高まり、血圧が上昇するのです。
厚生労働省は目標とすべき1日の食塩摂取量を18歳以上の男性で7.5g未満、女性で6.5g未満としています[7]。
また、日本高血圧学会では高血圧の方に対して食塩摂取量を6.0g未満に減塩するように推奨しています[8]。
ご自身の食生活で塩分を摂り過ぎていないか見直し、できるだけ摂取量を減らしていきたいですね。
原因2 肥満
肥満も高血圧を引き起こす原因であると考えられています。
近年では特に若い世代や中年男性を中心に肥満に伴う高血圧の割合が増えています。
肥満の方は適正体重である方と比べて、高血圧のリスクが数倍になるといわれています[9]。
肥満の方が高血圧になりやすい理由として、食事量が多い傾向にあるため塩分過多になりやすいことが考えられています。
また肥満のなかでも「内臓脂肪型肥満」の場合は、ホルモンの作用により高血圧を引き起こしやすいことが分かっています。
内臓脂肪の影響について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
内臓脂肪とは?健康への影響や皮下脂肪との違い、落とし方を徹底解説
高血圧の予防・改善には食べ過ぎに注意し、体重をコントロールすることも重要なのです。
原因3 過度な飲酒
「過度な飲酒」も高血圧を引き起こす原因になります。
少量のアルコールには血圧を一時的に低下させる作用があるといわれていますが、長期にわたる過度の飲酒は血圧を上昇させ高血圧になるリスクを高めることが分かっています。
そのため日頃からお酒を飲み過ぎている場合は、飲酒量を減らしたり休肝日を設けたりすることが必要です。
原因4 喫煙
「喫煙」も高血圧の原因の一つです。
たばこの煙にはニコチンや一酸化炭素、活性酸素などの有害化学物質が含まれています。
ニコチンは、「交感神経」を刺激して血圧を上昇させる作用があります。
また、一酸化炭素や活性酸素は血管に悪影響を与え、動脈硬化を引き起こすとされます。
このようにたばこに含まれる有害化学物質は血圧を上昇させたり動脈硬化を進行させたりして血管の健康を損ねるのです。
さらに喫煙は動脈硬化を進行させ心臓病や脳卒中などのリスクを高めることが分かっており、日本人の死因にも大きく関わっているといわれています。
喫煙による高血圧のリスクは、喫煙期間が長いほど、または喫煙本数が多いほど高くなりやすいとされます。
しかし禁煙をすれば高血圧による病気のリスクは減っていくことが分かっています。
そのため喫煙している方は早めに禁煙に取り組むことが重要です。
また、たばこは喫煙している方だけではなく周りの方にも影響があるとされます。
たばこの煙には、喫煙者本人が吸う「主流煙」、吐き出す「呼出煙」、たばこの先から出ている「副流煙」があります。
そのなかでも有害物質が多く含まれているのが副流煙とされ、吸っていない方でも受動喫煙の影響を受ける可能性があります。
実際に家庭における受動喫煙は高血圧のリスクを高めるといわれています。
家族や周りの健康を守るためにも、禁煙に取り組みたいものですね。
原因5 ストレス
ストレスも血圧に悪影響を与えるとされています。
ストレスは外部から刺激を受けたときに陥る緊張状態のことを指します。
ストレスは日常生活と密接な関係にあり、適度なストレスは乗り越えたときに達成感をもたらすこともあります。
しかし過度なストレスはさまざまな不調をもたらし血圧にも大きく影響を与えます。
ストレスを受けると脳から副腎ホルモンが分泌され、それを受けてアドレナリンやノルアドレナリンというホルモンが分泌されます。
アドレナリンは心拍数を高め、ノルアドレナリンは血管を収縮させる作用があり、これらの作用により血圧が上昇することが分かっています。
ストレス社会といわれる現代では、自覚がなくても過剰なストレスを抱えている場合があります。
そのためストレスと上手に付き合うことも必要なのです。
ストレスの仕組みや対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
原因6 遺伝
高血圧は遺伝的要因も関係しているといわれています。
多くの日本人は、塩分を摂取すると血圧が上がりやすいタイプの遺伝子を持っているとされます。
親族に高血圧の方がいる場合は自分も高血圧になる可能性が高いため、日頃から予防・改善に取り組むことが必要です。
まずは親族に高血圧の方がいないか確認しておくと良いでしょう。
原因7 その他の病気
二次性高血圧のように、他の病気が高血圧の原因になることがあります。
二次性高血圧の原因となる病気としては、主に甲状腺や腎臓の病気、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。
甲状腺は喉仏のすぐ下、首の真んなかにある小さな臓器で、自律神経や脈拍数、体温などを調節する「甲状腺ホルモン」をつくるはたらきがありますが、病気によってホルモンの分泌に異常を来すと、高血圧が症状として現れる場合があります。
腎臓の病気では、腎動脈が狭まったり腎臓の機能が低下したりすることにより高血圧を引き起こします。
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に呼吸が止まってしまう病気で、呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、心臓のはたらきが活発になり高血圧が引き起こされます。
また近年では「原発性アルドステロン」による高血圧の割合が増えており、高血圧患者の5%程度が該当すると考えられています[10]。
二次性高血圧は本態性高血圧と異なり一般的な高血圧の治療では改善が難しく、原因となる病気の治療が必要になります。
病気を見逃していると高血圧の他の症状も悪化する可能性があるので、適宜検査を受けて病気を見つけ、適切な治療を受けることが重要です。
4.高血圧を予防・改善するための生活習慣のポイント
高血圧の予防・改善のためには、生活習慣を見直し、改善することが重要です。
「生活習慣ではどのようなことに気を付けたら良いんだろう?」
と気になりますよね。
そこで、この章では高血圧を予防・改善するための生活習慣のポイントを解説します。
これからお伝えするポイントを参考に、ご自身の生活を見直しましょう。
ポイント1 食事内容を見直す
高血圧を予防・改善するためには、食事内容を見直すことが重要です。
WHOは成人の1日のナトリウム摂取量を食塩相当量で5g未満に抑えることを強く推奨しています[11]。
また国内でも高血圧の予防や治療のためには食塩摂取量を1日当たり6g未満にすることが推奨されています[11]。
しかし日本人の食塩摂取量は多い傾向にあり、厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」によれば、20歳以上の1日当たりのナトリウム平均摂取量は食塩相当量で男性の場合10.9g、女性の場合9.3gと目標量を大きく上回っています[12]。
まずは塩分を摂り過ぎていないかチェックしてみましょう。
【塩分の摂り過ぎになりやすい食習慣】
- 漬物を多く食べる
- ハムや練り物などの加工食品を多く食べる
- 汁物を1日に2杯以上飲んでいる
- ラーメンなどの麺類の汁を全部飲むことが多い
- ソースやしょうゆをよくかける
上記に当てはまる方は、塩分を摂り過ぎていると考えられます。
以下のようなポイントを押さえて減塩を行いましょう。
また、野菜や果物などを積極的に摂ることもポイントです。
野菜や果物にはナトリウムの排せつを促し血圧を下げる作用のある「カリウム」というミネラルが多く含まれています。
そのため、野菜料理を毎食1品以上取り入れ、カリウムを十分に摂るように心掛けましょう。
カリウムを豊富に含む食べ物については以下の記事でご紹介しています。
また、食べ過ぎに注意して体重をコントロールすることも重要です。
摂取カロリーが消費カロリーを上回った状態が続くと肥満になります。
まずはご自身が肥満かどうかをチェックしましょう。
肥満かどうかを判断するには「BMI」が適しています。
肥満に該当する場合は、摂取カロリーを抑え標準体重になるように減量することが必要です。
ただし極端に食事量を制限すると集中力が低下したり疲れやすくなったりすることもあるため、自分に必要な摂取カロリーを把握した上で調節するようにしましょう。
厚生労働省では1日に必要なカロリー(推定エネルギー必要量)を性別、年齢、身体活動レベルに分けて以下のように定めています。
【1日当たりの推定エネルギー必要量(kcal/日)】
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
18〜29歳 | 2,300 | 2,650 | 3,050 | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
30〜49歳 | 2,300 | 2,700 | 3,050 | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
50〜64歳 | 2,200 | 2,600 | 2,950 | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
65〜74歳 | 2,050 | 2,400 | 2,750 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
75歳以上 | 1,800 | 2,100 | - | 1,400 | 1,650 | - |
自分の年齢と活動量に合ったカロリーを目安にして、できるだけその目安を超えないように食事量を調節することがポイントです。
厚生労働省の推定エネルギー必要量は標準体型の方に対して定められているため、自分の体格に合った1日の必要カロリーについて詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
また間食やお酒のおつまみを摂る習慣のある方はその分のカロリーも考慮に入れつつ、1日の摂取カロリーを全体で調節するようにしましょう。
[13] 厚生労働省 e-ヘルスネット「BMI」
ポイント2 飲酒を控える
アルコールを控えることは高血圧の予防・改善において重要です。
実際に飲酒習慣のある高血圧患者が飲酒量を減らすと、血圧が低下することがさまざまな研究で分かっています[14]。
そのため、飲酒習慣のある方は飲酒量を減らすことを意識しましょう。
また適切な飲酒量を把握しておくこともポイントです。
厚生労働省では適度な飲酒量として1日平均純アルコール20g程度と定めています[15]。
純アルコール20g程度とはビールでは中瓶1本、日本酒では1合に相当します[16]。
また最低でも週1日以上の休肝日を設けて肝臓を休ませることも必要です[17]。
適切なお酒の量と頻度を意識して飲み過ぎないようにしましょう。
2023年に発表された研究結果では、ノンアルコール飲料は飲酒量の減少に有⽤であり、減酒のきっかけにもなる可能性が明らかになりました[18]。
ストレスなく飲酒量を控えるために、ノンアルコール飲料を活用してみても良いですね。
[15] 厚生労働省「アルコール」
[18] H. Yoshimoto et al. 「Effect of provision of non-alcoholic beverages on alcohol consumption: a randomized controlled study」(BMC Medicine, volume 21, Article number: 379 (2023) )
ポイント3 運動習慣を身に付ける
運動習慣を身に付けることもポイントです。
運動は血管を広げて血行を良くし血圧を下げるといわれています。
また肥満の解消やストレス発散にも役立つため高血圧の予防・改善に欠かせません。
「でも、どんな運動をどのくらい行えば良いんだろう……」
このように具体的な運動方法を知りたいものですよね。
高血圧改善のための運動は有酸素運動を中心として「ややきつい」と感じられる程度の強度で行うのが望ましいとされています。
有酸素運動について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
有酸素運動とは?効果や無酸素運動との違い、おすすめの運動を紹介
有酸素運動は1日30分以上をできるだけ毎日、定期的に行いましょう[19]。
しかし、まとまった運動時間が取れない場合もあるかもしれません。
その場合は、1回当たり10分以上の有酸素運動を数回に分けて行い、1日の合計が40分以上となるように行っても良いとされます[19]。
ただし運動習慣のない方は、急に運動すると体に負担がかかる可能性があります。
まずは掃除や買い物に行くなどといった日常生活の活動量を増やすことから始めても良いでしょう。
ポイント4 禁煙をする
喫煙している方は早めに禁煙するようにしましょう。
喫煙の期間が長く、本数が多いほど高血圧による病気のリスクが高まることが分かっていますが、禁煙を始めるのが早ければ早いほど、そのリスクを低下させられるといわれています。
「禁煙すべきと分かっていても、続けられるか不安……」
と悩んでしまいますよね。
禁煙を始める前に、自分が禁煙したい理由を書き出したり、禁煙する旨を書いた紙を見やすい位置に貼ったりしておくことがおすすめです。
禁煙がつらくなったときに初心に戻って禁煙について考え直すことができ、モチベーションの維持に役立ちます。
また吸いたくなったときの対処法を決めておくこともおすすめです。
禁煙を始めると「離脱症状」が現れ、吸いたい気持ちが強くなってしまう場合があります。
またたばこはさまざまシーンで吸いたくなると考えられるため、場面ごとに対処法を決めておくと良いでしょう。
以下にたばこが吸いたくなったときの対処法をご紹介するので、参考にしてくださいね。
しかし、たばこには依存性のある物質も含まれるため、ご自身の意志だけを頼りに禁煙を行うのは難しい部分もあるでしょう。
最近は医師の禁煙指導が受けられる「禁煙外来」や専門家による「禁煙支援」などもあります。
禁煙外来は、禁煙したい人のために設けられた専門外来です。
カウンセリングや専門家の指導による禁煙サポートや、ニコチンガムやニコチンパッチという禁煙補助薬を使用した治療を行います。
一定の基準を満たすと保険が適用されるので、詳しい条件は厚生労働省のe-ヘルスネット「禁煙治療ってどんなもの?」を確認してください。
専門家によるサポートや治療薬の使用により禁煙の成功率が高められます。
無理せずに周りの協力を得ながら禁煙を進めていくと良いでしょう。
ポイント5 ストレスをためない
血圧を正常の範囲内に保つためにはストレスと上手に付き合うこともポイントです。
日常生活を過ごしているなかで、気付かないうちにストレスをためてしまっていることも考えられます。
ストレスをためないためには、規則正しい生活を意識するようにしましょう。
十分な睡眠や栄養バランスの良い食事、適度な運動などの習慣を維持することが重要です。
また寝る時間や起きる時間を決めて生活リズムを整えると良いでしょう。
しかし日常生活で気を付けていても、ストレスはたまってしまうと考えられます。
そのためストレスを解消することも重要です。
ゆっくりお風呂に入ったり好きな音楽を聴いたり、自分の好きなことに取り組んだりしてストレスを解消すると良いでしょう。
5.50代の正常な血圧についてのまとめ
正常血圧は年代に関係なく、診察室血圧の場合は収縮期血圧が120mmHg未満かつ拡張期血圧が80mmHg未満です[19]。
また家庭血圧ではそれより5mmHgずつ低く、収縮期血圧115mmHg未満かつ拡張期血圧75mmHg未満が正常血圧です[20]。
しかし50代の平均血圧は男女共に正常血圧から外れています。
血圧を下げる薬を服用している方を含めたデータでは、50代男性の平均血圧(診察室血圧)は収縮期血圧131.7mmHg、拡張期血圧82.0mmHg、50代女性の平均血圧は収縮期血圧123.7mmHg、拡張期血圧75.4mmHgです[20]。
また薬を服用していない方のみのデータでも50代男性の平均血圧は収縮期血圧129.7mmHg、拡張期血圧81.0mmHg、50代女性では収縮期血圧121.8mmHg、拡張期血圧74.5mmHgとなっています[20]。
高血圧の方の割合は年代が上がるにつれて上がる傾向にあり、50代で高血圧に該当する方の割合は男性で38.9%、女性で19.7%です[20]。
血圧が高い状態を放置していると動脈硬化が進行し、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、心筋梗塞などの病気を招いてしまう恐れがあります。
高血圧を予防・改善するためには、食塩摂取量を減らしカリウムを十分に摂取するといった食事内容の見直しが欠かせません。
また飲酒を控え禁煙をすること、運動習慣を身に付けること、ストレスをためないこともポイントです。
この記事を参考に血圧を正常域に保つよう意識してくださいね。
[19] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
[10] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」