「女性ではどれくらいの体脂肪率が適切なのかな?」
体脂肪率が高い状態では太って見えたり、健康を害したりするとなんとなく理解していても、どれくらいの値であれば健康的といえるのかは知らない方が多いのではないでしょうか。
体脂肪率を正しく理解し、意識できるようになると健康的で痩せやすい体づくりにつながるといわれています。
この記事では、女性の体脂肪率の目安や体脂肪率が健康や見た目に与える影響について解説します。
また肥満度を表す指標であるBMIについても解説し、体脂肪率との違いをお伝えします。
体脂肪を落とすためのポイントも五つご紹介しますので、ぜひ最後までお読みくださいね。
1.女性の体脂肪率の目安
「体脂肪率はどのくらいだと高いのかな?」
「自分の体脂肪率を知るにはどうしたら良いんだろう……」
とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
体脂肪率とは体重に占める脂肪の重さをパーセントで表したもののことです。
成人女性では体脂肪率が30%を超えると体脂肪が蓄積した状態であるとされます[1]。
自分の体脂肪率を知るには家庭用の体脂肪計を使うのが一般的です。
家庭用の体脂肪計は、体に微弱な電流を流して体脂肪の量を推定する「生体インピーダンス法」を用いて計測結果を出しています。
「生体インピーダンス法」は水分をほとんど含まない脂肪組織には電流が流れにくく、筋肉組織には電流が流れやすいという特性を利用したものです。
このため家庭用の体脂肪計は体内の水分量に影響を受けやすく精密な測定は難しいといわれています。
家庭用の体脂肪計でより正確に体脂肪率を測定するには、水分の影響を最小限に抑えるために測定前の飲食や入浴、運動を避け、決まった時間に測定すると良いでしょう。
また乗り方や使う場所によっても数値は変動してしまいます。
以下は正しい体脂肪計の使い方です。
他にも体脂肪の測定にはいくつかの方法がありますが、必要とされる設備が大き過ぎたり、測定する方の苦痛を伴ったりするため一般的には用いられていません。
家庭用の体脂肪計では誤差があることを理解した上で正しく使用すれば、健康的な体づくりの目安になるでしょう。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「体脂肪計」
2.体脂肪率の影響
「体脂肪率って体にどんな影響があるんだろう?」
体脂肪率が高過ぎると良くないことはなんとなく知っていても、どんな影響があるのかを知らない方は多いかもしれませんね。
体脂肪率は高過ぎても低過ぎても体に悪影響を与えてしまいます。
この章では女性の体脂肪率が高過ぎる場合と低過ぎる場合の影響について解説します。
2-1.体脂肪率が高過ぎる場合
体脂肪率が高過ぎると健康に悪いというイメージを持つ人もいるかもしれませんが、必ずしも健康上のリスクがあるわけではありません。
体脂肪率と健康に明確な相関関係を認められないのは、体脂肪率の値だけではどこに脂肪がついているかが分からないためです。
ヒトの脂肪組織には皮下脂肪と内臓脂肪があります。
皮下脂肪とは皮膚の下にある脂肪のことです。
皮下脂肪は体温維持などの重要な役割を担い、時間をかけて少しずつ蓄積されるため落ちにくい脂肪だといわれています。
一方、内臓脂肪は内臓の周辺にある脂肪のことです。
内臓脂肪が増えると血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪が増加し、脂質異常症や動脈硬化などを引き起こします。
また内臓脂肪は心臓病や脳卒中になりやすいメタボリックシンドロームの原因にもなるとされています。
内臓脂肪が多いほど健康上のリスクが高まるといえるでしょう。
一般的に女性は女性ホルモンのはたらきにより、皮下脂肪が体につきやすい傾向にあります。
もし女性の体脂肪率の高さが皮下脂肪によるものであれば、健康上のリスクが高いとは断定できません。
しかし皮下脂肪は二の腕やおなか周り、太ももの裏などにつきやすいという特徴があるため、太って見えるなど外見上への影響があります。
その他にも、脂肪の量は基礎代謝に影響を及ぼします。
脂肪は筋肉(骨格筋)と比べるとエネルギー消費量が少ないことから、脂肪が多い体はエネルギーをため込みやすくなります。
このため、体重が正常値であっても筋肉量が少なく脂肪が多い状態では基礎代謝が低く太りやすいと考えられるのです。
2-2.体脂肪率が低過ぎる場合
体脂肪率が低過ぎる状態では、健康だけでなく外見にも悪影響が出てしまいます。
体脂肪には体温の維持やエネルギーの貯蔵、ホルモンの調節などのはたらきがあります。
そのため体脂肪が低過ぎると、免疫機能が低下する他、女性ではホルモンバランスが乱れ月経異常や無月経を引き起こすこともあります。
低体重の母親から生まれた子どもは低出生体重児になるリスクが高く、その子が大きくなったときに生活習慣病になりやすいことも分かっています。
若い女性の「痩せ」の問題が改善しない背景には、誤ったダイエット法や痩せている方が良いという価値観が広まっていることが影響しています。
誤ったダイエット法などで体脂肪率が低くなり過ぎると、髪や皮膚のつやがなくなってしまいます。
その他にも、体脂肪には外部からの衝撃を和らげるクッションのような役割があります。
そのため体脂肪率が低過ぎると、衝撃を受けた際のダメージが大きくなってしまいます。
体脂肪率が低過ぎても、さまざまなリスクがあることを理解しておいてくださいね。
3.体脂肪率とBMIの違い
「BMIって聞いたことはあるけど、どんなものなんだろう?」
「体脂肪率とBMIの違いを知りたい!」
BMIは肥満度を表す指標として、国際的に用いられている指標のことです。
体脂肪率は体重に占める体脂肪の割合であるのに対し、BMIは体重と身長から肥満度を判定します。
BMIは[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で求めることができます[2]。
肥満のBMI判定基準は国によって異なりますが、日本では25以上が肥満とされています[2]。
ただしBMIは体重と身長から単純に求められる値のため、筋肉が多い人も数値が大きくなリます。
このため肥満は「BMIが25以上であるということに加え、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」と定義されています[3]。
ただし若い女性においては、BMIは標準でも筋肉が少なく脂肪が多い、つまり体脂肪率が高い「隠れ肥満」と呼ばれる状態の人が増えています。
体脂肪率には誤差があることを理解した上で、家庭用体脂肪計の測定値を参考に体脂肪を減らし筋肉量を増やすことを意識しましょう。
BMIが22の状態は肥満との関連が強い糖尿病や高血圧、脂質異常症といった病気に最もかかりにくい状態であるとされており、「標準体重」と呼ばれています[3]。
体脂肪が多く、BMIが25以上の場合は標準体重を目安にダイエットしてみてくださいね[3]。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「BMI」
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
4.体脂肪を落とすためのポイント
「体脂肪を落としたいけどどうしたら良いのかな?」
健康のために体脂肪を落としたいけど、やり方が分からないという方は多いのではないでしょうか。
体脂肪を落とすためには以下のポイントを押さえておきましょう。
【体脂肪を落とすためのポイント】
- 適切にカロリー制限を行う
- エネルギー産生栄養素バランスに留意する
- 有酸素運動を行う
- 筋トレを行う
- 体に必要な栄養素を十分に摂取する
この章では女性が体脂肪を落とすためのポイント五つを詳しく説明します。
ポイント1 適切にカロリー制限を行う
体脂肪を減らすためには、摂取したカロリーと消費カロリーの調節がポイントとなります。
例えば、腹囲を1cm減らしたい場合、約1kg分の内臓脂肪を減少させる必要があります[4]。
内臓脂肪1kgを減らすためには、食事改善によるエネルギー摂取量の制限と、運動によるエネルギーの消費を合わせて約7,000kcalの削減が必要です[4]。
1日に必要なカロリーは、目標体重に体重1kg当たりの推定エネルギー必要量を掛け合わせると求めることができます[5]。
目標体重を決めたら、以下の表を参考にカロリーを計算してみましょう。
厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で体重1kg当たりの推定エネルギー必要量を定めています。
性別 | 女性 | 脂質 | たんぱく質 |
---|---|---|---|
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
18〜29歳 | |||
30〜49歳 | |||
50〜64歳 | |||
65〜74歳 | |||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
身体活動レベルは日常的に体をどれくらい動かしているかの基準であり、Ⅰ(低い)、Ⅱ(普通)、Ⅲ(高い)の3段階に分けられます[5]。
生活の大部分が座ったままの方はⅠ、座った姿勢が多いものの買い物や通勤で歩く習慣のある方はⅡ、立った姿勢が多い、もしくは積極的に運動している方はⅢになります。
1日に必要なカロリーについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
1日に必要なカロリーって?計算方法と健康を保つポイントを解説!
ヒトには体温の維持や最低限の臓器の活動を維持する基礎代謝があります。
基礎代謝に必要なカロリーまで損なわないよう、適切なカロリー制限を行ってくださいね。
基礎代謝については以下の記事で詳しく解説しています。
[4] 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」」
[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント2 エネルギー産生栄養素バランスに留意する
体脂肪を落とすためにエネルギー産生栄養素のバランスを適切に保つことも重要です。
特に炭水化物や脂質の摂り過ぎは体脂肪蓄積の原因となるため、適切に控えることが勧められます。
以下は厚生労働省が示すエネルギー産生栄養素の理想的なバランスです。
年齢 | 炭水化物 | 脂質 | たんぱく質 |
---|---|---|---|
18〜49歳 | |||
50〜64歳 | |||
65歳以上 | |||
妊婦 初期・中期 | |||
妊婦 後期 | |||
授乳婦 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
主食・主菜・副菜を組み合わせることで、これらの栄養素のバランスが整いやすくなりますよ。
上の表を参考に、エネルギー産生栄養素のバランスを意識して食事の内容を工夫してみてくださいね。
ポイント3 有酸素運動を行う
体脂肪を減らすには有酸素運動が有効です。
有酸素運動は血糖や脂肪をエネルギー源として消費するため脂肪を減らす効果があります。
有酸素運動には、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、エアロビクスダンス、水泳などがあります。
また、有酸素運動は継続して20分が経過したころにエネルギー源が体脂肪に切り替わるといわれています[6]。
体脂肪の減少を目的とするなら、ご自身が長い時間続けやすい運動を選ぶと良いでしょう。
[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「エアロビクス / 有酸素性運動」
ポイント4 筋トレを行う
筋トレも体脂肪の減少に効果的です。
筋肉は脂肪組織よりもエネルギーを使うため、筋トレで筋肉を増やすことで基礎代謝が上がります。
基礎代謝が上がることで安静時のエネルギー消費量が増え、脂肪がたまりにくい体になります。
体脂肪を減らすことを目的とする場合、筋トレをした後に有酸素運動を行うようにしましょう。
筋トレで脂肪の分解が促された状態で有酸素運動を行うことで、より効率的に脂肪を減少できるといわれていますよ。
体脂肪を減らすために筋トレと有酸素運動の両方を日々の生活に取り入れてくださいね。
ポイント5 体に必要な栄養素を十分に摂取する
体脂肪を落とすためにはたんぱく質を摂りましょう。
たんぱく質は基礎代謝の維持に重要な栄養素です。
たんぱく質が不足すると、筋肉量が減ったり体の機能が低下したりするため基礎代謝が下がってしまうのです。
また、たんぱく質はエネルギーを燃焼するための酵素やホルモンなどの材料にもなります。
無理なダイエットによる女性の低栄養は問題となっています。
バランスの取れた食生活を送り、体に必要な栄養素をしっかりと摂取することが重要です。
不足しがちな栄養素として代表的なものには、たんぱく質の他に、炭水化物が挙げられます。
またビタミンではビタミンA、ビタミンD、ビタミンB1、ミネラルではカルシウムや鉄、亜鉛なども不足しやすいといわれています。
鉄に関しては月経のある20〜40歳代の女性で1日に10.5mg摂ると不足のリスクが少ないとされますが、多くの女性がこの量を満たしていません[7]。
食事量を極端に減らしたり、一部の食品しか食べなかったりなどのダイエットは健康に悪影響を与えます。
「食べない」ダイエットなどはむしろ体脂肪を蓄えやすい体となるためやめましょう。
体に必要な栄養素を摂取するために健康的な食事について知りたい方は以下の記事もご覧ください。
健康的な食事とは?栄養バランスの取れた食事のためのポイントを解説
必要な栄養素をしっかりと摂り、健康的な体づくりを目指してくださいね。
[7] 厚生労働省 e-ヘルスネット「若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題」
5.女性の体脂肪率についてのまとめ
体脂肪率とは体重に占める脂肪の重さをパーセントで表したものです。
成人女性では体脂肪率が30%を超えると体脂肪が蓄積した状態であるとされます[8]。
体脂肪率だけでは皮下脂肪と内臓脂肪の割合を区別することはできないため、体脂肪率が高いからといって一概に健康上のリスクが高いとはいえません。
体脂肪率は高過ぎても低過ぎても、健康や見た目に影響を及ぼします。
若い女性においては、体重が多くなくても体脂肪が蓄積している隠れ肥満が増えています。
一方で無理なダイエットによる低栄養も深刻な問題です。
適切なカロリー制限をしてエネルギー産生栄養バランスを保ち、体に必要な栄養素を十分に摂取することが大切です。
また筋トレや有酸素運動なども生活に取り入れましょう。
体脂肪を適切に減らすためにぜひこの記事をお役立てくださいね。
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「体脂肪計」