洋菓子や料理に欠かせないバターですが、気になるのはそのカロリーですよね。
バターは100g当たり700kcalを超えており、一般的な食品に比べればカロリーが高いといえます。
「他のものに置き換えてカロリーを抑えられないかな?」
このように思う方もいらっしゃるかもしれませんが、バターは「油脂類」といって油の仲間に当たり、他の油脂類と比較するとむしろカロリーが低いといえるのです。
またバターとマーガリンの違いが知りたいという方もいらっしゃるでしょう。
この記事ではバターのカロリーやカロリーが高い理由、マーガリンをはじめとした他の油脂類との違いなどについてご説明します。
1.バターのカロリーは?
太りやすいというイメージのあるバターですが、実際のカロリーはどれくらいなのか気になりますよね。
種類によってやや異なりますが、バターの100g当たりのカロリーは約750kcalです。
【バター100g当たりのカロリー】
食品名 | カロリー |
---|---|
食塩不使用バター | 720kcal |
発酵バター | 713kcal |
有塩バター | 700kcal |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
あまり体を動かさない成人男性の1日当たりの必要カロリーが2,200kcal前後であることを考えると、バターは非常にカロリーが高い食品であるといえます[1]。
消費カロリーを摂取カロリーが上回ると体重が増加し肥満などの要因になってしまうため、バターは摂り過ぎを避けたい食品の一つだといえるでしょう。
[1] 農林水産省 実践食育ナビ「食事バランスガイド早分かり」
【関連情報】 「1日の摂取カロリー」についてもっと知りたい方はこちら
2.バターのカロリーが高いのはなぜ?
バターがミルクから作られていることは皆さんご存じですよね。
「ミルクからできているのにどうしてそんなにカロリーが高いの?」
と疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その理由は、バターがミルクの脂肪分を取り出して作られているものだからです。
ここでは例として一般的な有塩バターの作り方を簡単にご説明しましょう。
まず、生乳からクリームを分離するため、比重の異なる液体が混ざった状態のものを回転させ遠心力によって分離させる「遠心分離」を行います。
分離したクリームを加熱殺菌・冷却して熟成させたものを激しくかき混ぜると、「バター粒」と呼ばれる脂肪の粒ができます。
バター粒以外の「バターミルク」と呼ばれる部分を取り除き、バター粒に食塩を加えて練り合わせ滑らかにしたものがバターです。
ご家庭で生クリームを振ってバターを作る実験に挑戦したことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
3.バターは体に悪いって本当?
「カロリーが高いし、バターは控えた方が良いのかな?」
「マーガリンは植物性だって聞いたけど、置き換えたら健康的なのかな?」
このような疑問を抱いている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは他の油脂類と比較してカロリーやバターに含まれる脂質が体に与える影響を考えてみましょう。
3-1.他の油脂類とのカロリー比較
実は、バターのカロリーは他の油脂類と比較すると低い傾向にあります。
バターとその他の油脂類のカロリーを比較してみましょう。
【油脂類の100g当たりのカロリー】
食品名 | カロリー |
---|---|
有塩バター | 700kcal |
オリーブオイル | 894kcal |
ごま油 | 890kcal |
なたね油 | 887kcal |
食塩不使用バター | 720kcal |
マーガリン(家庭用) | 715kcal |
発酵バター | 713kcal |
有塩バター | 700kcal |
ファットスプレッド | 579kcal |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
[2] 日本マーガリン工業会「マーガリンの基礎知識」
3-2.バターとマーガリンに含まれる脂質の違い
パンに塗ったりお菓子の材料に使ったりと、バターとマーガリンは用途も見た目もよく似ていますよね。
「バターとマーガリンって一体何が違うんだろう?」
と疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
バターがミルクの脂肪分からできているのに対し、マーガリンは植物性の脂質を主な原料としています。
つまり、バターとマーガリンでは主に使われている脂質の種類が異なるといえるのですね。
ひと口に脂質といってもさまざまな種類があり、体に与える影響も種類によって違います。
例えば乳製品や肉などの動物性食品に多く含まれている「飽和脂肪酸」は「高LDLコレステロール血症」の主なリスク要因とされています。
飽和脂肪酸は体内での合成が可能なため、食事からの摂取も必須ではありません。
バターは乳脂肪分の塊であるためバターに含まれている脂質の6割程度は飽和脂肪酸です[3]。
一方同じ脂質でも「不飽和脂肪酸」と呼ばれる種類のなかには、体に必須のものや、血液中のLDLコレステロールを減らすはたらきを持つものもあります。
「バターの脂質は体に悪いんだ。じゃあマーガリンの方が体に良いのかな?」
と考えている方も少なくないでしょう。
しかし、バターとマーガリンのどちらがより健康に良いか、一概に判断することは難しいといえるでしょう。
実は多くのマーガリンに含まれている「トランス脂肪酸」は摂り過ぎると健康を損ねるリスクがあります。 トランス脂肪酸も飽和脂肪酸と同様に食品から摂る必要はないとされており、工業的に生じたものはヒトの身体への有用性が明らかになっていません。
トランス脂肪酸は狭心症や急性心筋梗塞などの「冠動脈疾患」の危険因子の一つとされており、摂り過ぎると発症するリスクが高まります。
ただし摂取量が同じであれば、トランス脂肪酸よりも飽和脂肪酸の方が影響は大きいといわれています。
また日本人のトランス脂肪酸の摂取量はWHOが定めている目標量を大きく下回っており、健康への影響は小さいと考えられています。
一般的な食生活を送っている方であれば大きな心配をする必要はないといえそうですね。 日本人におけるトランス脂肪酸の平均摂取量は少ないものの、理想的な状態というわけではなく、摂取量はできるだけ少なくすることが望ましいといわれています。
摂取する脂質全体の量が多いとトランス脂肪酸の摂取量も多くなることから、脂質そのものの摂取量が増え過ぎないように注意することが重要です。
しかし脂質は体のエネルギー源の一つであり、過度な食事制限はストレスにもなってしまいます。
バターにもマーガリンにも過度に摂取すると体に悪影響を及ぼす脂質が含まれているのは確かですが、摂り過ぎないよう注意しつつ風味を楽しみたいですね。
[3] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂肪/脂質」
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症」
[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[7] 農林水産省「トランス脂肪酸に関する調査研究」
3-3.バターで摂取できるその他の栄養素
食べ物を選ぶ際にはカロリーだけでなくどのような栄養素が含まれているかも重要ですよね。
「バターがミルクからできているってことは、栄養価が高いってこと?」
と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
牛乳といえばカルシウムが摂取できるイメージが強いかもしれませんが、残念ながらバターのカルシウム含有量は多いとはいえません。
バターに豊富に含まれている栄養素として挙げられるのはビタミンAです。
ビタミンAは目の正常な機能や皮膚・粘膜の健康を保つのに欠かせない栄養素です。
日本人のビタミンAの平均摂取量は、厚生労働省が定める摂取推奨量に達していないことが分かっています。
バターという馴染み深い食材からビタミンAを摂取できるのはうれしいですよね。
【関連情報】 「脂質」についてもっと知りたい方はこちら
4.バターのカロリーについて まとめ
バターはカロリーが高く、摂り過ぎると体に悪影響を及ぼす可能性があるのは事実です。
しかし他の油脂類と比べると群を抜いてカロリーが高いわけではなく、ビタミンAが豊富に含まれているというメリットもあります。
「マーガリンに置き換えれば良いんじゃないの?」
と疑問に思っていた方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうともいいきれません。
マーガリンには過剰に摂取すると健康にリスクがあるトランス脂肪酸が多く含まれているものもあります。
バターもマーガリンも、摂り過ぎに注意する必要がある点では同じなのです。
バターにはマーガリンなど他のものには替えられない独特の風味があります。
使う量に気を付けながら、さまざまな料理でバターならではの風味を楽しんでくださいね。