「おなか周りが大きくなってきたんだけど、これはメタボリックシンドローム(メタボ)なのかな?」
メタボというとおなか周りが大きい状態のことをイメージする方も多いかもしれませんね。
しかし、実はそれだけではメタボリックシンドロームとはいえません。
メタボリックシンドロームは単なる肥満やおなか周りの大きさではなく、心臓病や脳卒中などのリスクが高まった状態のことです。
メタボリックシンドロームの診断には、おなか周りにつく内臓脂肪の多さの他に血圧や血糖値といった要素が関係しています。
この記事では、メタボリックシンドロームの診断基準について解説します。
予防・改善のためのポイントもご紹介するので参考にしてくださいね。
1.メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドローム(メタボ)という言葉は聞き慣れていても、実際にどのような状態を指すのか知らない方もいらっしゃるかもしれませんね。
メタボリックシンドロームの基準を解説する前に、まずはメタボリックシンドロームがどのような概念であるのかご説明しましょう。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積に加え高血圧や高血糖、脂質代謝異常(血中の脂質の異常)などが組み合わさった状態です。
メタボリックシンドロームの状態では、動脈硬化が進行しやすいことが分かっています。
メタボリックシンドロームに関わる内臓脂肪や高血圧、高血糖、脂質代謝異常はいずれも動脈硬化の危険因子です。
これらは単独でも動脈硬化を進行させますが、一つ一つは軽度でも重なれば心臓病や脳卒中のリスクをより高めるといわれています。
メタボリックシンドロームにならないように注意することが、心臓病や脳卒中の予防に重要だといえるでしょう。
【関連情報】 「メタボリックシンドロームとは?診断基準や健康への悪影響を解説」についての記事はこちら
「BMIとは?計算方法や肥満度の基準、健康的な体型を目指すポイント」についての記事はこちら
2.すぐわかる、メタボの診断基準について
「自分はメタボなのかな……」
このように気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
メタボリックシンドロームの診断基準は、必須項目であるウエスト周囲径(へそ周りのサイズ、腹囲)が男性で85cm以上、女性で90cm以上であることに加え、選択項目である脂質、血圧、血糖のうち二つ以上が基準値から外れていることです[1]。
項目 | ||
---|---|---|
必須項目 | ウエスト周囲径 | 男性85cm以上 女性90cm以上 |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 1.脂質異常 | トリグリセリド(中性脂肪)150mg/dL以上かつ/または HDLコレステロール40mg/dL未満 |
2.高血圧 | 最高血圧130mmHg以上
かつ/または 最低血圧85mmHg以上 |
|
3.高血糖 | 空腹時血糖値110mg/dL以上 |
厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」をもとに執筆者作成
基準に関わる項目についてそれぞれ詳しくみてみましょう。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
2-1.ウエスト周囲径からわかる内臓脂肪
内臓脂肪の蓄積は、メタボリックシンドロームの診断基準の必須項目です。
他の項目に全て当てはまっていたとしても、内臓脂肪の蓄積が見られない限りはメタボリックシンドロームには該当しません。
可能な限りCTスキャンなどによる内臓脂肪量の測定を行うことが望ましいとされていますが、より簡便に行うために採用されているのがウエスト周囲径です。
ウエスト周囲径が男性の場合85cm以上、女性の場合90cm以上で内臓脂肪面積が100cm2に相当するとされ、内臓脂肪の蓄積に該当します[2]。
ウエスト周囲径(腹囲)の測り方は以下の記事で解説しています。
内臓脂肪が蓄積したいわゆる「内臓脂肪型肥満」では、糖尿病や高血圧、脂質代謝異常などを起こす確率が高くなります。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
2-2.脂質代謝異常(脂質異常症)
脂質代謝異常(脂質異常症)は、メタボリックシンドロームの診断基準の項目の一つです。
メタボリックシンドロームの診断基準における脂質代謝異常には、HDLコレステロール(善玉コレステロール)とトリグリセリドの異常があります。
メタボリックシンドロームの診断基準では中性脂肪が150mg/dL以上で高トリグリセリド血症に、HDLコレステロールが40mg/dL未満で低HDLコレステロール血症に該当します[3]。
このいずれかが見られた場合、脂質代謝異常に当たります。
なお、血液中の脂質には、他にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)があります。
これらの血中脂質が基準値から外れた状態は「脂質異常症」と呼ばれます。
LDLコレステロールはメタボリックシンドロームの診断基準ではないものの、単独でも動脈硬化を強力に進行させます。
動脈硬化にならないために、脂質異常症を予防することも重要ですね。
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
2-3.高血圧もメタボ診断基準の一つ
高血圧は、メタボリックシンドロームの診断基準の項目の一つです。
メタボリックシンドロームの診断基準では、収縮期血圧が130mmHg以上かつ/または拡張期血圧が85mmHg以上で高血圧の項目に該当します[4]。
高血圧は、日本人の生活習慣病による死亡に大きく関わる要因の一つとされています[5]。
日本人の高血圧の多くは本態性高血圧といわれるもので、肥満や飲酒、運動不足などの要因が重なることで発症しますが、なかでも重要な原因は食塩の過剰摂取です。
なお高血圧自体の診断基準は病院で測定した血圧(診察室血圧)の収縮期血圧が140mmHg以上かつ/または拡張期血圧が90mmHg以上で、メタボ診断でのものとは異なります[5]。
また自宅で測る血圧は家庭血圧といわれ、病院での数値よりも低い基準が用いられます。
家庭血圧で高血圧と診断されるのは、収縮期血圧が135mmHg以上かつ/または拡張期血圧が85mmHg以上の場合です[6]。
メタボリックシンドロームの基準に当てはまらなくても、高血圧は単独でも多くの病気の原因となります。
高血圧の進行により動脈硬化が起こると、狭心症や心筋梗塞、心不全などの心疾患や脳卒中を起こすことがあります。
また、認知症を招きやすくなるともいわれています。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
[6] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧の話」
2-4.血糖値が高いままになる「高血糖」
高血糖は、メタボリックシンドロームの診断基準項目の一つです。
メタボリックシンドロームの基準では、空腹時の血糖値が110mg/dL以上で高血糖(空腹時高血糖)の項目に該当します[7]。
高血糖とは、血液中のブドウ糖濃度である「血糖値」が高いままになり下がらないことです。
通常、食後に増えた血液中のブドウ糖は膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンの作用でエネルギー源として細胞に取り込まれ、血糖値が低下します。
しかしインスリンの分泌量が減ったり、効きが悪くなったりすると血糖値が正常に下がらず、高血糖に陥ってしまうのです。
高血糖は過食や糖質の摂り過ぎ、肥満の他、運動不足、ストレス、遺伝、加齢などにより起こります。
高血糖が続いて糖尿病を発症すると、失明に至る危険もある網膜症や、人工透析が必要となる場合もある腎症などの合併症を引き起こすこともあります。
また、高血糖とがんや認知症と高血糖との間には関連があるともいわれているため、注意が必要です。
[7] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
3.メタボを予防・改善するためのポイント
「メタボにならないためには何に気を付けたら良いのかな?」
「メタボといわれたけど、改善するにはどうしたら良いんだろう……」
このように、メタボリックシンドロームの予防や改善について知りたいという方もいらっしゃいますよね。
この章では、メタボリックシンドロームを予防、改善するために日常で気を付けたいポイントをご紹介します。
ポイント1 エネルギー摂取量を適切に抑える
メタボリックシンドロームを予防、改善するためにはエネルギー摂取量を適切に抑えることが重要です。
ヒトは食べ物から摂取したエネルギーを、生命を維持したり体を動かしたりするのに消費しています。
しかし、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回っていると、内臓脂肪などの体脂肪や体重の増加が起こります。
内臓脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は、高血圧や糖尿病、脂質代謝異常を引き起こしやすく動脈硬化を進行させる原因となるため注意が必要です。
内臓脂肪量を減少させるためにはエネルギー摂取量を適切に抑えましょう。
適切なエネルギー摂取量は、推定エネルギー必要量で確認することができます。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
18〜29歳 | ||||||
30〜49歳 | ||||||
50〜64歳 | ||||||
65〜74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
身体活動レベルは次のように定義されています。
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
---|---|---|---|
日常生活の内容 | 生活の大部分を座って過ごし、あまり動かない場合 | 座って過ごすことが多いが、仕事などで立ったり歩いたりすることがある場合、通勤や買い物、家事などをする場合、軽いスポーツをする場合 | 歩いたり立ったりすることが多い仕事に就いている場合、スポーツなど余暇に活発に体を動かす習慣がある場合 |
厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」をもとに執筆者作成
例えば通勤の発生するデスクワークに従事し、家事なども行う40歳の男性は身体活動レベルⅡに該当するため、1日当たりの推定エネルギー必要量は2,700kcalです[8]。
ご自分のエネルギー摂取量を適正に抑えるために、参考にしてくださいね。
[8] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント2 糖質の摂り過ぎに注意する
糖質の摂り過ぎは、メタボリックシンドロームの原因になることがあります。
エネルギー源である糖質は、摂り過ぎると体脂肪として蓄積され、肥満を招きます。
ブドウ糖をエネルギー源として細胞に取り込ませるインスリンには、余ったブドウ糖を脂肪に変えて蓄積するはたらきを促進する作用もあります。
このため糖質を摂り過ぎると肥満を招きます。
また、糖質は血糖値の上昇を招く点にも注意が必要です。
血糖値が上昇すると、膵臓はそれに反応してインスリンを分泌しようとしますが、高血糖が続くと膵臓のインスリン分泌能力が低下し、さらなる高血糖を招いてしまいます。
加えて糖質は血中の中性脂肪値の上昇の原因にもなります。
特に甘いものや砂糖の入ったソフトドリンクを習慣的に摂取している方は要注意です。
ただし糖質は脳や神経の主要なエネルギー源でもあるため、過度な制限も禁物です。
糖質を過不足なく摂取するよう心掛けましょう。
厚生労働省は糖質から摂取するエネルギーを1日のエネルギー摂取量の50〜65%にするという目標量を設定しています[9]。
糖質の多い食生活を送っている方は特に意識してくださいね。
[9] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント3 食物繊維を十分に摂る
メタボリックシンドロームの予防や改善のために、食物繊維を十分に摂取するようにしましょう。
食物繊維には体内の脂質や糖質、ナトリウム(食塩)などを吸着し、体外へ排出するはたらきがあることが分かっています。
そのため、これらの過剰摂取が原因で起こる肥満や脂質異常症、糖尿病、高血圧といった生活習慣病を予防、改善する効果があるといわれています。
しかし多くの日本人は食物繊維が不足しがちな生活を送っているといわれています。
成人の理想的な食物繊維摂取量は1日当たり24g以上だといわれていますが、実際の日本人の摂取量はこの量に遠く及びません[10]。
このため厚生労働省は実現可能性を考慮し、以下のような目標量を設定しています。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢 | 目標量 | 目標量 |
18~29歳 | ||
30~49歳 | ||
50~64歳 | ||
65~74歳 | ||
75歳以上 | ||
妊婦 | ||
授乳婦 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
食物繊維は肉や魚などの動物性食品にはほとんど含まれておらず、野菜や海藻類、きのこ類、穀類などの植物性食品に多く含まれています。
これらの食品を積極的に食べるよう心掛けましょう。
食物繊維についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食物繊維は整腸作用の他にも効果アリ?含有量の多いおすすめ食品11選
[10] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント4 GI値の低い食べ物を選ぶ
GI値の低い食品は、メタボリックシンドロームの予防や改善に役立つと注目されています。
GIとは「グリセミックインデックス(Glycemic Index)」のことで、その食べ物を食べた後の血糖値の上昇度合いを表す指標です。
食後の血糖値は、GI値の高い食品を摂ると急激に、GI値の低い食品を摂ると緩やかに上昇します。
血糖値の上昇に反応して分泌されるインスリンには、血糖値を下げる作用だけでなく、糖を脂肪に変え蓄えるはたらきを促進したり、脂肪の分解を抑制したりする作用があります。
GI値の高い食品により血糖値の急激な上昇を繰り返すと、インスリンの分泌量が増え、そのはたらきにより肥満を招きやすくなります。
またインスリンが多く必要とされる状態を繰り返していると、膵臓のインスリンを分泌する能力が低下し、高血糖や糖尿病になるリスクが高まってしまうともいわれています。
GI値の低い食品は、肉・魚・乳製品などのたんぱく質や葉物野菜、きのこなどです。
一方、GI値が高いのはご飯や麺類、パンなどの炭水化物、いも類などです。
ただし、炭水化物を食べないような食生活では栄養のバランスを崩してしまうため、同じ主食でも低GIのそばにするなど、抜くのではなく選ぶことを意識しましょう。
GI値についてさらに詳しく知りたい方は山梨県厚生連健康管理センター「「食品のGI値」を活用し、健康な体をつくりましょう!」をご確認ください。
ポイント5 脂質の摂り過ぎや種類に注意する
メタボリックシンドロームの診断基準である脂質代謝異常の予防や改善のためには、脂質の種類や摂り過ぎに注意する必要があります。
脂質は1g当たり9kcalの高エネルギー物質です[11]。
このため摂り過ぎは肥満の原因となります。
厚生労働省は1日のエネルギー摂取量に対し、脂質から摂取するエネルギー量が占める割合を20〜30%に抑えるという目標量を設定しています[12]。
脂質の多い食生活を送っている方は揚げ物を食べる頻度を減らすなどの工夫を行い、脂質の摂取量を減らしましょう。
また、脂質の種類にも注意が必要です。
脂質にはいくつかの種類があり、それぞれ体に与える影響が異なります。
なかでも摂取を減らしたいのが、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸と呼ばれる脂質です。
脂肪を構成する脂肪酸は構造上の違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
飽和脂肪酸は脂身や乳脂肪などの動物性食品に多く含まれ、常温では固体で存在するという特徴があります。
体内で合成できるため食事から摂取する必要はないとされ、一方で肥満や高LDLコレステロール血症の要因だとされます。
このため厚生労働省は成人に対し、飽和脂肪酸から摂取するエネルギー量を1日のエネルギー摂取量の7%以下にするという目標量を設定しています[12]。
飽和脂肪酸は肉の脂身やラード、バターなどに含まれ、血中コレステロール値を上昇させます。
肉は脂身の少ないもの、乳製品は低脂肪のものを選ぶなどの工夫をして、飽和脂肪酸の摂取を減らしましょう。
また、トランス脂肪酸は液状の不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に変えるときに副産物として生まれる不飽和脂肪酸の一種です。
血中のHDLコレステロールを減少させ、LDLコレステロールを増やすため脂質異常症の要因であるといわれています。
トランス脂肪酸はマーガリンやショートニング、またこれらを使って作られたスナック菓子やクッキーなどに含まれるため注意しましょう。
逆に、積極的に摂りたいのがEPAやDHAといったn-3系脂肪酸といわれる脂質です。
n-3系脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種で、体内で合成できないため食べ物からの摂取が欠かせない脂質(必須脂肪酸)です。
厚生労働省は1日当たり成人男性に対し2.0〜2.2g、成人女性に対し1.6〜2.0gの目安量を設定しています[12]。
n-3系脂肪酸について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
n-3系多価不飽和脂肪酸は青魚に多く含まれ、中性脂肪を下げるはたらきを持ちます。
肉中心の食生活を送っている方は魚も取り入れましょう。
脂質は量だけでなくその種類も重要なので、何を食べるか決める際の参考にしてくださいね。
[11] 公益社団法人 日本栄養士会全国病院栄養士協議会「脂質異常症の食事療法」
[12] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント6 早食いせず、よく噛んで食べる
メタボリックシンドロームの予防や改善のためには、よく噛んで食べることを意識しましょう。
メタボリックシンドロームと診断された人には早食いが多いといわれています。
早食いの人は食べ物をあまりよく噛まない傾向にあります。
よく噛むと、脳が満腹感を感じやすくなり少量の食事でも満足します。
そのため、食べ過ぎを防ぎ肥満を予防することができるのです。
最近は、軟らかい食品が好まれたり食事にかける時間が短くなったりすることにより、以前と比べて噛む回数が減少したといわれています。
食事をするときはよく噛んで食べることを意識しましょう。
ポイント7 アルコールを控える
メタボリックシンドロームの予防や改善のためにはアルコールを控えましょう。
アルコールの摂取が過剰になると、中性脂肪が増加し脂質異常症の発症につながります。
中性脂肪は飲酒量が多くなるにつれて増加するといわれます。
その他、アルコールは肥満や高血圧の原因でもあるため、適度にとどめるようにしましょう。
ポイント8 ナトリウムを控える
メタボリックシンドロームの予防や改善のためにはナトリウムを控えることも重要です。
ナトリウムは必須ミネラルの一種で、主に食塩(塩化ナトリウム)の形で体に取り込まれます。
ナトリウムの摂り過ぎは血圧を上昇させ高血圧を招きます。
日本人は塩味を好むことからナトリウムを摂り過ぎる傾向にあり、このことが日本人に高血圧が多い最大の原因といわれています。
日本人の食事摂取基準における成人の1日当たりのナトリウム摂取目標量(食塩相当量)は、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満です[14]。
ただし、高血圧の重症化予防のための食塩相当量は、男女ともに6.0g未満とされています[14]。
普段から、調味料を減らす、麺類の汁を残すといった工夫で減塩を心掛け、高血圧の予防に努めましょう。
食塩摂取量を減らすためのポイントは以下の記事でご紹介しています。
減塩食を続けるポイントとは?健康への効果や食塩の摂取目標量も紹介
[13] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識」
[14] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント9 カリウムを十分に摂る
メタボリックシンドロームの予防や改善のために、カリウムを十分に摂ることもおすすめです。
カリウムは必須ミネラルの一種で、ナトリウムの体外への排出を促す作用があります。
このため血圧を下げる性質があるといわれています。
生活習慣病の予防のために理想的なカリウム摂取量は1日当たり3,510mgとされています[15]。
しかし日本人の摂取量はこれに遠く及ばないため、厚生労働省は1日当たり成人男性に対し3,000mg以上、成人女性に対し2,600mg以上の目標量を設定しています[15]。
カリウムは野菜や果物、大豆製品などに多く含まれている傾向にあります。
これらの食品を積極的に取り入れましょう。
カリウムの摂取源は以下の記事で詳しくご紹介しています。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
ただし、腎臓に病気がある場合はカリウムの摂取が制限されることがあるため、主治医への相談が必要です。
[15] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント10 有酸素運動を行う
メタボリックシンドロームの予防や改善のためには、有酸素運動を行うことが効果的です。
有酸素運動は体内の糖質や脂質を燃料として消費するため、内臓脂肪の蓄積や脂質異常症、高血糖の予防・改善に効果が認められています。
また有酸素運動には、高血圧の改善効果もあるといわれています。
運動で内臓脂肪を減らすためには、1週間で10メッツ・時以上の有酸素運動が必要です[16]。
「メッツ・時」は運動のメッツと実施時間を掛け合わせたものです。
例えば3メッツの運動を30分(0.5時間)行った場合は1.5メッツ・時となります。
代表的な運動のメッツは以下のとおりです。
メッツ | 運動種目 |
---|---|
2.5メッツ | |
3.5メッツ | |
4.5メッツ | |
5メッツ | |
6.5メッツ | |
7メッツ | |
8メッツ | |
12.3メッツ |
スポーツ庁「身体活動のメッツ(METs)表」をもとに執筆者作成
まずは、ストレッチやウォーキングなど手軽な運動から始めてみるのも良いことですね。
有酸素運動についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
有酸素運動とは?効果や無酸素運動との違い、おすすめの運動を紹介
[16] 厚生労働省 e-ヘルスネット「内臓脂肪減少のための運動」
4.メタボの診断基準についてのまとめ
メタボリックシンドロームの診断基準は、必須項目のウエスト周囲径が基準値以上であることに加え、選択項目の脂質、血圧、血糖のうち二つ以上が基準値から外れていることです。
メタボリックシンドロームの考え方の基盤には、内臓脂肪の蓄積に高血圧や糖尿病、脂質代謝異常などが重なることで、心臓病や脳卒中の原因となる動脈硬化のリスクが高まるという事実があります。
内臓脂肪の蓄積はメタボリックシンドロームの診断基準の必須項目で、診断には一般的にウエスト周囲径が用いられます。
男性で85cm以上、女性で90cm以上が内臓脂肪の蓄積がある状態に該当します[17]。
メタボリックシンドロームの診断基準における高血圧の基準は、収縮期血圧が130mmHg以上かつ/または拡張期血圧が85mmHg以上です[17]。
また高血糖の基準は、空腹時の血糖値が110mg/dL以上です[17]。
脂質異常症の基準は中性脂肪が150mg/dL以上かつ/またはHDLコレステロールが40mg/dL未満です[17]。
メタボリックシンドロームの予防、改善のためにはエネルギー摂取量を抑えて内臓脂肪を増やさないことが重要です。
また糖質や脂質を摂り過ぎないようにしたり、食物繊維やカリウムを十分に摂取したりすることも大切です。
その他、GI値の低い食品を選ぶこと、ナトリウムやアルコールを控えること、よく噛んで食べること、有酸素運動を行うことなども意識するようにしましょう。
メタボリックシンドロームを防ぐために、日々の生活習慣の見直して健康的な毎日を過ごしてくださいね。
[17] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」